第7話 ラミネの過去
初めて魔法を使って体が疲れていた。
その日は昼から寝続けて目が覚めたのは次の日の朝だった。
「おはよう。起きてる?」
昨日のことを思い返しているとラミネが朝食を持って訪ねて来た。
俺はベッドから体を起こすと
「ラミネ、おはよう」
笑顔で応えた。
「シイバに魔法教えて貰ったんだって?」
「あぁ、うん」
なんとなく気まずそうな表情で返事をすると
「わたしのこと聞いたの?
別に直接魔法のことで落ち込んだ訳じゃないのよぅ……フゥになら話してもいいかな」
ラミネは少し昔を思い出すような表情で話し始めた。
「えぇとね。今からだいたい四年くらい前になるかな?
わたしは聖域外で冒険者をしていたのね。
その時、一緒のパーティーに新しく入ってきたエルフの男の子がいたのね。
その子はエルフなのに魔法があまり得意じゃなかったの。
だから、わたしに魔法のコツを教えてほしいって言ってきたの。
その頃のわたしは魔法と槍で一流の冒険者と認められていて他の種族の冒険者にも信頼されていたの。
その子は魔力量は多い方だったけど魔力強化が得意ではないようだったわ。
旅の途中にわたしは彼に魔力強化の仕方を教えて、だんだん魔法が強力になっていたわ。
でも、防御魔法しか練習させてなくて………。
その日は護衛依頼の途中だったのだけれどもしばらく魔物や盗賊の襲撃も無い日々が続いて明日には目的の街に到着の予定だった。
油断していたところに盗賊が現れて、わたしは一瞬、反応に遅れた。
でも、彼はその盗賊にいつものように魔法を放ったの。
彼は強力な風の魔法使いになっていたわ。
毎日の魔力強化で強化された彼の攻撃魔法はパーティーメンバーが思うより強力でわたし達の前衛を巻き込んでしまったの。
その依頼は達成されたけど前衛の二人のメンバーはしばらく仕事が出来なくなってパーティーは解散することになったの。
彼は責任を感じたのか誰にも何も言わずに、わたし達の前からいなくなってしまったわ。
しばらく彼のことを探したけど、他の国に行ってしまったみたいでね。
結局見つけられなかったの。
そして、わたしも冒険者を続いていく気持ちがなくなっちゃってね……聖域に帰って来ちゃった。
ハハハハハ」
ラミネは恥ずかしそうに小さく笑った。
「だから、今度魔法を教えるときは、キチンとした安全な場所と時間に余裕を持って制御出来る範囲の魔法を教えようと思ったわ。
今ならそれが出来るでしょ?
フゥにはこれからわたしも魔法を教えてあげられるよ!」
「うん、頼むよ。俺は他の属性の魔法も使ってみたいんだ」
「そうだね、わたしがどんどん教えちゃうよ!
シイバには水の魔法しか教えられないからね」
ハハハハハッと大声で笑うとラミネの後ろに顔を少し引きつらせたシイバが現れた。
「お前だって水魔法しか使えないだろ!」
「シイバ、ハハッ冗談だよ。
ね?フゥ、冗談だよね~」
「そうだよ。冗談だよ。ハハハ」
俺は咄嗟にラミネに合わせて引きつった笑顔を見せた。
シイバはムッとした表情で
「水魔法しか使えないけど教えられないことはない!
ただ、水龍神様に基礎しか教えるなと言われてただけだ!」
「解ってるよ。だから冗談だって。
それより、何でシイバがここにいるの?
今日のフゥの世話係はわたしだよ」
ラミネは話しを変えようとする。
シイバは睨むようにこっちを見ると
「水龍神様の所に昨日黒猫が来たって聞いたからフゥのことを相談しに行たんだ。
それならフゥとラミネも呼んで来いって言われて呼びに来た」
「そうなの?
それなら早く水龍神様の所に行かないと。
ほら、フゥ、早く行くよ。
シイバも早く!」
ラミネは俺を抱き抱えると水龍神の部屋に向かって走り出した。
「オイ。待て!走るな!」
シイバも付いてくる。
ラミネに抱えられた俺は
『アイツ、やっと帰って来たのか。
一年以上もほっときやがって。
今度こそ詳しい話しを聞かせて貰うぞ!』
この時の俺はすでに黒猫がまたいなくなっている事も知らずにいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます