第5話 「 驚きの事態 」
ルチル・ハーバーグは三度目を覚ました。
一度目は、何故そうなったか分からなかったが、大きな動物の背のことであった。途轍もない空腹のさなか、朦朧とする意識で目を開ければ、白と黒の模様が珈琲に浮かぶミルクオイルのように鮮やかな配色の毛皮が視界を埋めていた。そのせいもあってか、どうしてだろう、ルチルは自分の腕が毛深くなったように思えた。
二度目は、甘く軽やかな香りに意識を引き戻されたとき。すぐにでもむしゃぶりつきたくなるその匂いは、それが何であるかをルチルに確認させる前に口を開かせていた。吸い付けば吸い付くほどに芳醇な飲み物を提供してくれるそれに夢中になったルチルは、忘我の境地とはまさにこの事というように正体不明のそれを飲み込み続けた。
三度目は目を覚ましたというより、意識がはっきりしたと言った方が正確だ。無我夢中で飲み込み続けた芳醇な何某でお腹一杯になったルチルは、ようやく自分の周囲に目を向けることや、自分自身に意識を向けることが出来るようになった。
だから。
彼女、ルチル・ハーバーグは。
意識がはっきりしたいま、視界いっぱいに広がる眼前の物体に疑問符を浮かべられる。
(……、おっぱい)
目と鼻の先にある、おっぱい。
さらに口先にある、乳頭。
(気が付いたら目の前にぽっぱい……っていうことは、さっきまで飲んでいたのは?)
もちろん、眼前の乳頭様から湧き出るミルクである。
ミルクとは哺乳類が子孫繁栄のために親が子に与えるものであり、それには豊富な栄養が含まれていて、ならばそのミルクにありつけたあたしは生き残ったという事であって、生き残ることが出来たことには感謝するべきだと思うんだけど、あれ、でも、えーっと? ――とルチルは困惑の真っただ中だった。
当然も当然、当たり前だ。
一般論として。行き倒れを見つけて、助けてやろうと思う奇特な人が仮にいたとて、どこの誰が自分の乳を与えようなどと考えるだろうか。特殊性癖の一部の人ならまだ考えられなくもないかもしれないけれど、しかし、行き倒れている人間相手の対処として授乳を選択する女性などそういるものではないはずだ。
しかもそれ以上に奇妙なことがある。
彼女、ルチル・ハーバーグは、目の前のおっぱいに見覚えがないのだ!
――いや、誤解を与えかねない言葉だったことを謝罪しよう。正確を期するにはまず、ルチル・ハーバーグはおっぱいを見ただけでどこの誰なのか分かってしまうおっぱいマイスターではないことを先に言っておくべきだった。その大きさはもちろん、乳頭の色つやに関しても、女の子であるルチルから見て羨むほど立派なものであるのは確かなのだが、現在相手の胸に鼻先を突っ込んでいる状態のルチルの狭い視界のなかに収まっている白御黒の模様、いいや、その体毛に見覚えがないという事だ。それも、抱きすくめられる今の状態から感触で知りえる中で言うなら、相手は衣服をまとってすらいない。
いろいろと疑問や奇妙な連想が頭の中をかける中、けれどルチルは、そんな問題など後回しにしてまずはやらなければならない事を知る良い子なのだった。
(そう、そうだよ。常識にとらわれて驚いてる場合じゃないよ! 助けてもらって奇妙な人なんて失礼すぎるもん。きちんとお礼を言わなくちゃ。助けてくれてありがとうございましたって! ……、でも。抱きすくめられてるこの状況はちょっと恥ずかしいな)
いくら意識が朦朧としていたとはいえ、おっぱいに吸い付く年齢ではない。そも、吸い付く程度の表現じゃ追いつかないほど自分はむしゃぶりついていたじゃあないか! と今更ながら頬っぺたが熱くなるルチルなのだった。
(でも!)
ルチルは自分の中の優先順位を定めて、ムンッと心に力を籠める。恥ずかしさを追い払って命の恩人の豊満なおっぱいから勢いよく顔を持ち上げた。
『ど、どなたかは知りませんが! 助けてくれた本当に ―― へ?』
その瞬間に、ルチルの頭は真っ白に染まっていた。
視線の先、ルチルを抱いて自らの乳を与えていた人物――いや、人物というのは間違いなのか――こめかみ辺りから角をはやした綺麗な女性と目があえば、おそらくきっと誰だって言葉を失っていたはずだ。
その、角をはやした妙齢の美女は言葉を失ったルチルを見下ろした。
『あら、目を覚ましたのね。どう、お腹はいっぱいになったかしら?』
表現を平易にすれば、牛女だった。
角をはやし、白と黒の体毛を服と着た、綺麗な胸を突き出す牛女が、助けてくれた張本人(?)だったのだ!
πππ
ルチル・ハーバーグが牛女と対面してから半刻ほどがたった、その後のこと。
「どうしたの、マルコ。昨晩飲み過ぎて夫人にどやされたジョゼットさんみたいな顔をして。困ったこと?」
そんな例えでマルコ・ストロースに声をかけるのはアニール・クッキーだった。とれたての野菜で作ったスープのほかに二品ほどの料理を拵えたアニールは、それから少し心配になるくらいの時間が経ってようやく姿を現したマルコを食卓に着かせて、先の言葉をかけていた。
「はは……困っているように見えましたか?」
「ええ、それはもう。小さい頃にブリキ缶をひっくり返してミルクを駄目にしたときみたいよ?」
言いながら、頬に絆創膏をくっつけたマルコから受け取った籐の籠から、焼き立てのパンを互いの皿に移すアニール。マルコにはクルミのパンとエンパナーダを。自分の皿にはマルコと同じエンパナーダを一つ。冬には暖炉にもなる釜にかけた鍋からスープをそれぞれによそい、食べる準備を整えてから「――それで?」と椅子に座って話を繋げた。
「私に話せることなら聞かせてほしいな。さっき見た顔と違ったら気になっちゃうもの」
「そう、ですよね……」
うーん、と。何をどう話せばいいか迷うようにマルコは唸った。朝日が差し込む食卓。琥珀色に綺麗なスープ。簡素感などどこにもない食卓から上がる美味しい湯気を吸いこんで、しばし考える間を開ける。そして「困っているわけではないのですが」と言い置いてマルコは言った。
アニールをじっと見つめて。
「子牛が、居たんです」、と。
「……、子牛?」
「そうです。子供の、牛です。人間に例えるなら僕くらいでしょうか。オーバーオールを身に着けた、雌の子牛が牧場の牛舎に居たんです」
「えっと……」
少しどきりとするくらい真っ直ぐに見つめられたアニールは、言われた言葉の意味が分からず、わずか呆けるないしきょとんとするような表情でマルコを見返していた。
「それは、うんと……え? ミイ姉さんが産んだ、ってことかな?」
言葉が詰まるのは、マルコの牧場に、牛はミイ姉さんと呼ばれる一頭しかいない事を知っているから。これは村の人間ならだれもが知る事実だ。確かに、ミイ姉さんは長命巨大で不思議な牝牛であることも周知の事実ではあるが、それでもつがいとなる相手がいなければ子供は残せないはず。まさか神の子ならぬ神の牛で処女懐妊でもしたというのか。だから人間の衣服であるオーバーオールを纏っていたというのか。
混迷極まるマルコの言葉に、しかし。
(でも、ミイ姉さんなら何でもありって気はしちゃうんだけど)
眼鏡の縁に重なるアニールの眉が困ったように動く。
そんな気持ちを知らないマルコはアニールの問いに対して、アニールが想像していた類のものとは違う言葉を返したのだった。
「今朝ミルクを絞った時にそんな兆候なかったとか不思議なミイ姉さんなら相手が居なくても子供を産めそうとかそんな話は一切合切脇にのけても、その子牛、変なんです」
「えーと、それは、服を着ていたことが、かな?」
「ヤクなんです」
「え?」
その瞬間、アニールの理解は追いつかなかった。追いつけなかった。いいや、追いつくどおりが見つけられなかった。だって、言ってる意味が分からない。
呆気に取られて頭の中がポケーとなった表情を浮かべちゃうアニールを置いて、マルコは続ける。
「本当なら、二ペソよりもう少し高い標高に生息している牛なんです。一般的には全身真っ黒な長い毛に覆われている種類なんです。なのに、牧場に居た子供のヤクは、鼻の先からしっぽの先まで真っ白で、ふわふわしていて、抱き着けばまるで心地のいい風に梳かれた草原の様な気持ちよさが全身を包んでくるんです」
自分でも何をどう表現していいやら分からないマルコは一度目を閉じて、深呼吸を一つ。仕切りなおすように口を開いた。
「そもそも、ミイ姉さんは普通の生き物では説明できないほど長命で不思議な牛ですけど、それでもやっぱりホルスタインなんです。白と黒の模様が珈琲に垂らしたミルクのようで、だからミイ姉さんなんです。もし万一にもミイ姉さんが不思議パワーで子供を産んだとしても、生まれた赤ちゃんがヤクなのはどうしたって変なんです。変としか言いようがないんですよ、アニールさん!」
がたりっ! と身を乗り出して鼻先を突き付けるマルコ。突然の行動にアニールはちょっとだけびっくりしながらも、かっと自分の顔が熱くなったことにどぎまぎしつつ。
「ええっと、つまりマルコは、今朝ミルクを売り歩いた後で牧場に戻ったら、ミイ姉さんから生まれるはずのない子牛が増えていて戸惑っている――で、いいのかな?」
「はい……その通りです。ははは……」
つい入ってしまった肩の力を抜いて、マルコは困った表情で笑う。頬に張り付けられた絆創膏のゆがみが疲れていた。
けれど、そんなマルコの表情を眼にしたアニールはしかし、胸に手を当てて小さく息を吐く。他人の困惑を知ってほっとするのもなんではあるが、朝食の準備が整ってから随分と時間が経ってのマルコの訪問に様々な理由でどぎまぎしていたのだから、食事に誘った側としては安心が先に立つ。
「なんだ、そっか。ほっぺに絆創膏までくっつけてるんだもん、私はてっきり、もっと大変なことが起きたのかなって思っちゃったよ」
「すみません。なんだか心配をかけてしまったみたいですね。帰ったら服を着てる子牛を見つけて、窮屈そうに見えたから脱がそうと思ったんですが暴れられまして。とりあえず、しっぽの穴を開けるのと、中のシャツを破り捨てることは出来たんですが、オーバーオールはどうしても脱いでくれなくって」
「もう、気を付けなくちゃ。どうにもならないような困りごとじゃなくて私もほっとしたけど……もっと大きなけがだったらって思うと心臓が縮んじゃう」
「うう、ごめんなさい。でも、ありがとうございます。心配してくれて。実際の所で考えるなら、子牛でも牛が一頭増えたってことは結構な財産になるんですから喜ぶべきなんでしょうけど、どうにも落ち着かなくて……」
そう、その通り。牛が一頭増えるという事は本来なら嬉しいサプライズだ。何のつてもない家庭であっても牛の売却でまとまった金銭を手に入れることはできるし、婚姻の際に新郎の経済力を測る指針になる場合もある。それが、マルコのように牧場経営している人間の手に、それも、年中食べても食べつくせない不思議な牧草が生える牧場の経営者の手に入ったとしたら、さらにその子牛が牝であればなおのこと、考えるだけで笑みを浮かべるのが普通の感覚だろう。
でも、マルコは落ち着かない。空腹も相まって余計に。だから、であろう。そんなマルコの様子にアニールの方が先にいつもの調子を取り戻した。
「ふふ、困ったことにはならなそうね」
「ええ、まあ。念のために次の行商さんが来た時にでも、近くで子牛の逃げ出しがなかったか尋ねようとは思いますが、他の方の大切な子牛だったらと思うと嫌ですからね」
「そういうとこ、マルコらしいと思う」
「そうですか?」
「そうだよ。この辺りの村じゃ子牛にしても一頭丸々買い付けるような大きさのお店はないし、牧場だってそう。なら『逃げてきた子牛』を考えるより、『山から下りてきた迷子』を疑った方が正解に近いと思うもの」
「ですかね? 甘いですか、ぼく」
「うーん、商売の人ではないかも。でも、私は嬉しいかな。絆創膏くっつけちゃう元気なマルコは久しぶりだし、他の人の気持ちも考えられるなんて素敵だもん。ああ、マルコはやっぱり優しいなって。マルコのそんな優しいところが大ス……す……スぅ……」
続けようとした言葉が尻窄みに消えていった。喉の奥に小人がいて、思いが声になる前にどこかへと隠してしまうような感覚。アニールは今更ながら驚いた。詰まってしまった言葉に意識を向けてみればコーンが弾けるようにポンと顔が熱くなる。現状、マルコと二人きりで食卓を囲んで、対面で見つめ合う格好になっていることに改めて気が付いて急に視線が下を向いてしまう。
(~~~っ!)
たとえ同じ言葉でも毛色の違うものでここまで焦ってしまうなんて、自分の意気地のなさが恨めしい!
「えーっと、アニールさん……?」
視線だけで窺って見れば首をかしげてこちらを見ているマルコ。
アニールは慌てた様子でパタパタと両手を小さく振って見せて「な、何でもないの、気にしないでね! あはは!」と自分の残念さに乾いた笑いを零すのだった。
(もう、何やってるんだろ……)
ため息を一つ。トホホな気分をどうにか振り払い、アニールは気持ちを切り替えてマルコに視線を戻した。
「うん、事情は分かったわ。それが家に来るのが遅くなったって理由なのね」
「ご、ごめんなさい……」
「ちがっ! 違うの、怒ってるわけじゃなくて! 私がマルコだったらもっと慌てちゃうだろうなって思ったの。けど、マルコはこうして来てくれた。それが嬉しかったの」
「そうですか? それなら、良かったです」
マルコとアニールは朝陽が差し込む食卓で向かい合って、一拍。
「それじゃあ、食べようっか」
アニールがそう切り出すと、マルコはくしゃと相好を崩してちょっと大げさにお腹を押さえて見せる。
「はい、もうお腹ペコペコです」
二人は笑顔でお祈りをする。その日の恵みに感謝して、今日一日を元気に働けるように。
それからマルコは木造りのスプーンに手を伸ばし、アニールはそれを見守るように食事が始まった。
期待と緊張。作った料理に手が伸びる。少しの時間、身動きと呼吸を忘れてマルコを見入るアニールは、マルコからの「わあ! どれもとっても美味しいです!」の言葉を聞いてようやく「良かった!」と大きな笑顔を咲かせた。ただ。そのあと料理に手を付けたアニールは味をあまり感じなかった。確かにおいしい。だけれど、どれもこれもマルコ味だったのは言うまでもないのだった。
閑話休題。
朝から二つのパンと野菜たっぷりのスープを二杯。ほかにも二つのおかずを勧められるままに食べ終えたときには、飛んだり跳ねたりすればちょっぴりまずいことになりそうなマルコだった。スープ一つとっても繊細な塩加減の本当に素晴らしい料理なのは疑う余地はないけれど、普段がパンにチーズにミルクを一杯、という食の太い生活を送っていないからとても苦しい。
けぷー、と満足よりわずか苦しさの勝った息を吐き出すマルコに、アニールは食器を片付けながら笑うのだった。
「食べたねー。無理しないでよかったのに」
「はは。無理をしていないといえば嘘になるかもですが、無理してでも食べたくなったんです」
「あら、そんなにおいしかった?」
「はい、とっても! それに、かかる手間や想いも一緒に頂くのが料理だと思うんです。アニールさんがせっかく誘ってくれた朝食。残すなんてできません」
……まあ、どうしてもの場合には持ち帰らせてもらっていましたけど、と小さく頬を掻く。
いくら何でも食べ過ぎというものはある。なにより、あまりに多くを食べたからと言ってすべてが栄養として吸収される訳でもない。限度を超えた過食はただ排泄されるだけ。マルコは食材の無駄が嫌いなのだ。
「ふふ、ありがとう」
「いいえ、こちらこそ。ご馳走になりました」
マルコは丁寧に頭を下げると、満腹感を紛らわす深呼吸を一つして立ち上がった。
「片付け、手伝わせてください。アニールさん」
「え、いいよ。マルコは座っていて」
「お客さんだからですか?」
「私から誘ったのよ?」
「でも駄目です」
「駄目なんだ」
「はい、駄目です。僕にも手伝わせてください。……というより」
「?」
「お手伝いで少し体を動かさないと、このあと祠に向かう山道が大変になりそうです」
食卓に残った皿をまとめながら恥ずかしそうに笑うマルコに、アニールは目を丸くした後でクスクスと笑う。
「そっか。なら、お願いしようかな」
「はい!」
言うが早いか、まとめた食器を炊事場に運び、勝手知ったるなんとやら。さっさと裏口から表に出ると井戸から水を汲んでくる。繊維質の樹木から取れる皮を見ずに浸し、水を吸って柔らかくなったところで食器を手際よく洗い始めた。
二人並んで朝食の片づけに炊事場に立ち、シャコシャコと。
「優しいんだ」
「優しくなんて。ありがとうございます、アニールさん」
炊事場にある小さな窓から射す陽に照らされて、二人は黙々と、けれどニコニコと皿を洗う。テキパキとこなしていくマルコの横顔にふと視線が向けば――とくん、と胸が高鳴り、時折触れる肩と肩にポッポと熱くなる。――ああ、にやける口元を隠したい。マルコより少しだけでも年上であれば、心の内を見透かされたくない。でも。
(むりむりむりっ! ……楽しいよぅ!)
ちゃぷちゃぷと桶に移した水ですすぎながら、アニールは懸命に口元を引き締める。涙さえ溢れそうなこのひと時がずっと続けばいいのにと、マルコも同じように考えていたらいいなと思ってみても、残る皿もあと一枚だ。
(もう一つくらい、料理作ればよかったかな)
マルコが聞いたらもう十分ですよ! と止められそうな事を考えながら最後の皿を洗い終え、ほんのわずか奇妙なもったいなさを感じて大きく息を吸う。マルコに向き直って礼を言った。
「ありがとう、マルコ。手伝ってくれたからすぐに終わっちゃった」
「二人だと早ですね」
「いつも二人なら助かっちゃうんだけどな」
「はは。毎朝なんて迷惑、かけられませんよ」
めいわく、か……と息を抜いて、アニールはエプロンを外す。
「さて、と。どうしようか。少しゆっくりしてから向かう?」
「そんなそんな。そんなに気を使わなくて平気ですよ。アニールさんと一緒に洗い物をして、お腹も落ち着いてきましたから」
「そ、そう? でもお茶とか……」
「大丈夫ですよ! ありがとうございます、アニールさん」
明るく朗らかな笑顔だった。何一つよこしまな気持ちが介入できない暖かな笑みだった。
そんな笑顔を向けられて続く言葉が出てこなくなったアニールは(もう、マルコめぇ~。くぅ~~~!)と胸の中の複雑な気持ちを微笑みで包み隠して、了解を伝える。
「なら、先に表で待っていてちょうだいな。すぐ準備しちゃうから」
「準備? そのままでも整っているように見えますが。綺麗ですよ?」
「~~~っ! もう、女の子には必要なの!」
「そうですか……? 分かりました」
マルコの一言で頭が爆発でもしてしまったような感覚に陥るアニールは、少年マルコの背中を押して屋外へ。「覗いたら駄目だからね?」とふざけてから扉を閉めれば、その場でうずくまるアニール・クッキーなのだった。
「もう、本当に――マルコめぇ~」
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