先輩、白百合、夢の中の月、そして彼女らの生きる空間。僕には、この物語の何から何までが純白に見えた。
白い絵の具は、お互いを彩ることはできない。けれども、混ざり合うことはできる。この物語の中で混ざりあった白い絵の具たちのいくつかは、次第に『かつて自分が自我を持っていたこと』を忘れてゆき、終いには同じく純白なこの世界へと同化してしまう。
白百合の『白』にも、彼女らが生きる世界の『白』にも、きっとそのどこかに、先輩をかたどっていた『白』が溶け込んでいる。それこそが彼の生きた証となり、例え彼が他の人びとに忘れ去られようとも、白百合がこの世界に存在する理由のひとつとして、確かにそこに有り続けるのだろう。

素敵な物語をどうもありがとうございました。