第36話

カラカラカラ・・


「愁花入るで。いいか?」


「もう、おっそーい。うち、のぼせるやろ」


「ごめんな。窓開けて外の空気入れるわな」


「あ、ありがと。はあぁ~。冷たい空気が入ってきて気持ちいいなぁ」


「こんな狭い湯ぶねに、一緒に浸かるんか?」


「あたり前やんかぁ。はよ、おいでぇ」


仕方なく、反対側に入る。


「やっぱ、上乗るんやん」


「いやなん?うちのこと嫌いなんか?」


「ははは、めっちゃ好きやでぇ。ほんま、可愛いわ」


けど良かった。

愁花は、今年の夏に買った可愛いらしいビキニ姿だが、これならプールと一緒の感じだわ。緊張したり、また愁花にセクハラされるとか思ってビビり過ぎていたのかも。


狭いお風呂に、愁花と向かい合いながら浸かっている。


長い髪を束ねてにこにこしている愁花は、いつもよりも幼く見えて・・


純菜さんに初めて紹介してもらった時の事を思い出す。


ママに隠れて、恥ずかしそうに、不安そうに俺のことを見てた。


なかなか口を利いてくれなかったから、少し悩んだこともあった。


こんな俺をママとふたり家族の仲間に入れてくれありがとう。

こんな俺が、こいつらに何が出来るのか考えるも何も出てこない・・


「愁花ぁ。俺の事な、お父さんにしてくれてありがとなぁ。俺お前とママの為やったら何でもできるわ。ちゃんと働いて、立派なお父さんになろうと思うねん・・」


言いながら、涙が出た。本当の感謝の気持ちだった。


「・・・・まさるぅ。」

愁花も、いつになく真顔で俺を見つめている。


「まさるぅ。そら、あかんわ。」

「まさる働いたらうち帰っても家に誰もおらんようなるやろ・・」

「そんなんいやや~。」

「まさるは、働かんといてぇ。」

「うちのこと、一人にせんといて・・」


「・・・・・・わかった。」

「ほな、まだ当分自宅警備員やるからよろしくな」


「やったああ。あと、親友のさくらも、あんたの事がすきやからな」


「う、嘘やろ・・」


「ほんま」


それはそうと・・

亜子先生ちゃんと帰ってくれたかなあ?


「まさるぅ。体洗ったるからそこすわり」


「ありがとな。よいしょ。」


ってなに!

いつの間に水着脱いでるのぉぉぉん



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