第77話 POPは大分攻めました。

 今冬のコ〇ケに関しては早目に準備を進めていたので慌てる事はなく当日を迎える事が出来た。


 思えば昨年の冬にコスプレ広場に行かなければ、コスプレを始めていなければ今の倖せな状況はありえなかった。

 

 半同棲のような生活など一体誰が想像出来ようか。


 真人は高校時代の嘘告の事があってから基本的に女性は信用していなかった。

 大人になってからあのような事をする人間なんてそうはいないだろうけれど、どうしても裏でバカにしてるんじゃないかとかいう色眼鏡で見るようになっていた。


 だからこそ真理恵……天草三依のように普通に接する事が出来る女性は貴重なごく一部の例外だった。

 友紀がまさかの三依と友人関係、学校の先輩後輩の関係であり、五木……天草大里とも先輩後輩の関係であった事。

 演劇部からの繋がりでコスプレ仲間だった事。

 その繋がりが巡り巡って今の真人との関係。


 世の中は本当に何が起こるかわからない。

 ほぼ告白している事ではあるけれど、次の誕生日の後真人はプロポーズをする。

 結婚を前提に男女交際を始めたのだから余程の事がなければ断る事も断られる事も互いに考えてはいない。

 約束されたプロポーズではあるけれど、だからといって胡坐をかいて良いわけではない事も互いに理解している。


 真人は友紀のために、友紀は真人のために色々してきた。

 友紀の場合は少し空回りが過ぎてラッキースケベが多く出てしまい、真人にとって美味しいシーンが増えている現状。

 友紀の男性恐怖症は明らかに改善されてきている。

 ほぼ真人限定ではあるが、ラッキースケベを加味したとしても素肌を見せたりくっついたりは1年前では考えられない事である。


 今年の冬コミは……


 「準備万全、ROMは段ボールに詰めたし、お釣りもそれなりに余裕を持った。恥ずかしいけどPOPもOK。」

 この冬はROM宣伝のために、真理恵が言い出した事とはいえ真人は全面協力をし宣伝用のPOPを作った。


 「ほ、本当にあのPOP建てるんですか?」

 モデルである友紀は恥ずかしさは倍増である。


 「いや、恥ずかしいのは俺もなんだけど……」


 出発する時間となったのでまずは実家に向かい妹である千奈を拾う。



 「おはよーおにいちゃん。」

 20歳を超えているのにおにいちゃん(はぁと)的な言い方をされると流石の真人も照れてしまう。

 

 「なんか前回イベント手伝って貰った時と比べて荷物多いな。」

 千奈の荷物は大きめのボストンバック一つだった。前回は手提げかばん一つだった事を考えれば大きくなったと思われて当然。


 「まぁその辺は気にしないで。女子はヒミツも荷物も多いものだお……だよ。」


 「なぜ言い直したし。」

 

 助手席に友紀、後部席に千奈を載せて痛車ねこねこ号(仮)は東京へと進んでいく。

 

 「せ、狭い……。」

 二人分のコスプレ専用キャリーケースにROMの入った段ボール、設営のための段ボール、大きくないとはいえ大人が入るスペースは少ない。

 

 「まぁ我慢してくれ。まさか友紀さんか千奈を俺の前に載せて運転するわけにもいかないんだし。」


 「真人さん、えっちなのはいけないと思います。」

 「おにいちゃん、えっちなのはいけないと思います。」


 二人の声が重なった。

 「そこで私達女子二人が重なるという選択肢だってあったはずなのに……」

 それはそれでありだと思ったけれど、友紀に苦しい思いをさせるという選択肢は抑存在していなかった。



☆ ☆ ☆


 高速に乗る前にコンビニで食料と飲み物を補給したものの、時間通り逆三角形に到着。

 サークル入場の時間にはなっているため、駐車場に車を止めると、台車に段ボールを載せ固定させるとガラガラと引いていく。


 3日目というだけあって、既に会場前には大勢の人が待機しているのが見えていた。

 サークル入場入り口から入ると既にある程度の人達が準備を進めていた。


 友紀のサークル【乙女の雪解け】はちょうど真ん中の島のお誕生日席と呼ばれる位置。入り口から入って来てから見える側のお誕生日席のために、位置的には良いとされる。

 流石に壁には叶わないけれど、前が通路にもなっているため色々と便利でもある。

 開始直後の大手サークルの通路にされてしまうという難点もあるけれど。


 その分ついでに目に留まり後程寄って貰える可能性も出てくる。

 

 エロを追求したレイヤーのROMにはやはり叶わないけれど。

 そうなってくると生かされるのが今回用意したPOP。

 



 「あ、このPOP……」

 先日合わせをした時に撮影した真人と友紀の絡みのシーンを切り取った写真を利用していた。

 千奈が気付いたのは三依によっていくらか見させてもらっていたためだった。


 「恥ずかしいのは俺もだってのはこう言う事だって。友紀さんだけじゃないって。」

 そのPOPはどう見ても凛々しい水銀燈と可愛い真紅が……な写真である。

 幸いにして中の人は真人が水銀燈、友紀が真紅という事だろう。逆であったら流石の真人も了承していない。

 この写真を選んだ三依は関係者ならば全員がGJとしていただろう。


 「これ、中の人事情を知ってればおにいちゃんが友紀姐さんにキスしようとしてるようにしか見えません。」

 真人の右手人差し指と親指で友紀の顎を軽く持ち上げている。

 上目遣いで見上げる友紀、少し邪な笑みで見下ろす真人。

 それはさながらこれからキスをしますよと言っているイメージだった。


―――――――――――――――――――――――――――――


 後書きです。

 そういえば友紀のサークル名なんも考えていなかったなと急遽決めました。

 他に何か浮かべば改名するかも知れません。

 最後のPOPの説明、現代で言えば所謂顎喰い……アゴクイというやつですね。そうですよね。

 

 クズ男来襲するまでは普通にイベントしてます。 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る