第73話 呼ばれてないけどじゃじゃじゃじゃ~ん♪
「ぐっへっへ。イベントスチルげっとー。」
心の中で思っていたはずなのに頭上から声が聞こえている気がする二人。
「お二人さん、そういうのは二人きりの時にするべきですぜ。」
「そうですぜ、お兄ちゃん。」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「助かった。」
「助かりました。」
「ん、どういたしまして。」
「で、実際ナニをしていたんですか?二人して。」
千奈はお菓子を戴きに兄の家に向かっていたら、偶然一緒になった三依と一緒に行く事になり、千奈が持っていた合鍵で家に入るとくんずほぐれつな真人と友紀の二人を発見、以上!
絡まった二人を三依と千奈でどうにか解き、白い靄で隠さざるを得ない友紀のからだを隠し兄真人を千奈が引きはがす。
着替えてきた友紀を三依が連れてきて、全員でこたつを囲む。←今ココ
「ハロウィンのですね、衣装を着て真人さんを喜ばせようと思いましてですね。」
「それであんなハレンチな恰好をしていたんですか?大胆ですねー友紀さん。」
千奈のいう事ももっともで、夏の事があるので肌を出したりするのは遠慮するものだと思われている。
三依としては友紀が前向きに考えていると捉えているかもしれないが、あのミイラはやり過ぎだとも思っていた。
「せめて肌色シャツを着るとかしないとだめですよ友紀さん。レイヤーなんですし。」
実際全裸に包帯だったのである。
もう何を考えてるんでしょうねという恰好なので三依も千奈も少し思考が止まっていた。
もちろん、真人も思考停止している。
「しかしミイラというよりは志々雄真〇でしたね。まこと繋がりで……」
「それはさっき俺も言いましたよ。そしたらまこと繋がりで木星のセーラー服美少女戦士をやるべきだと言われました。」
「お兄ちゃん、女装ばっかだね。実際それなりに似合ってるけど。」
「ちょっとマテ、なぜお前が知っている。」
真人は千奈にコスプレ写真は見せていない。コスプレをしている事は知っているけど。
「あ、私が見せちゃった、てへっ」
三依が悪びれもせず白状した。舌を出してかわい子ぶってはいるけれど来年3……
「むっ」
三依が何かを察知したようなので説明は避ける。
「あ、私も少し見せちゃいました。」
三依と同じように舌をだしててへぺろる友紀。
三依と違いあざとさがない分年上でも友紀の方が可愛いてへぺろだった。
女子の絆は怖い、いつどこで男子の機密事項が漏れるかわからない。
「それよりお腹すいたー」
という千奈の声で、真人も友紀も夕飯がまだだったことを思い出す。
友紀が温めたりしている間に真人が人数分の食器を取り出す。
よそいでは運ぶを真人が繰り返していると……
「しっかり夫婦してるじゃん。」
「ねー。お熱いことでー。」
真人と友紀には聞こえなかったが、三依と千奈は暖かな目で見守っていた。
急遽人数が増えた事もあってどうなる事かと思われたが、友紀の速攻メニューで通常の夕飯と遜色のないものとなった。
やっぱりもう主婦じゃんと言われても納得出来るレベルである。
「いただきます」×4
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ごちそうさまでした。」×4
友紀の満腹ご飯を御馳走になりお腹とお腹(別腹的な意味)が膨れた三依と千奈は、食器を台所に運ぶと帰ろうとする。
「あれ?そういえば今日は何しに?」
「何となく?あぁハロウィンだからお菓子を貰いに来たら、違うお菓子をご馳走に……げふんげふんっ、ごちそうさまでした。」
これはあのくんずっほぐれつな状態の事を言っているのであろう。
三依が涎を拭き取る仕草をしている。
「お兄ちゃんからお菓子をご馳走になろうかなと思ったら……あのシーンだったからね、ごちそうさまでした。両親には順調だと報告しておきます。」
それは二人の仲がという事だろうか。真人の両親も友紀が男性恐怖症を患っている事を聞いている。
無理せず二人のペースで前に進んでいるかどうか気になっているのは間違いない。
こうして千奈を送り込んでくるあたりは、たまには様子を知りたいのだろう。
「まぁ実際助かった。あのままだと包帯から脱出出来ずに何をしていたかわからなかった。」
チラっと横目に友紀を見ると顔を真っ赤にして照れていた。
「今、それを言うのは反則です。いちゃいちゃを見られます。」
「そういうのは私達が帰ってからにしてねー。お兄ちゃんのヘタレキング。」
そうは言うけれど、あのミイラコスは別にそういうのを誘ってる行為じゃないだろうと真人は思っている。
周囲の者が見れば、かなり大胆な恰好なのは千奈と三依の態度を見れば理解出来る。
真人は少しずつでも克服しようとしているんだろうなと思っていた。
「私は帰って旦那にいたずらしてくるよ。お菓子をくれてもいたずらしちゃうぞ~って。」
両手をわきわきさせている三依にツッコミを入れる。
「本当にブレないですね。」
「三依ちゃんらしいというか。」
「「お邪魔しましたー。」
中学生が遊びに来ていたような感覚に襲われていた。
「急に静かになっちゃいましたね。」
「それだけあの二人が遠慮なくこの空間に入ってこれるだけの存在になっていると言う事でだろうね。」
学生時代の三依を知ってる友紀と、真理恵として先陣を切っている姿を知ってる真人。
本人はヤンキーを否定しているけど、レディースにも恐れられている千奈。
かしましい女子二人が揃えばどんな空間でも騒がしいものになるのは必然だった。
真人と友紀という、ラッキースケベに恵まれているくせに一向に前に進まないじれじれカップルというネタを目の前にすれば猶更である。
二人が帰った後、そんな騒がしい二人にどこか羨ましい気持ちでも抱いていたのか、友紀がかつて言った言葉を思い出したかのように話し始めた。
「前に一度言ったかも知れませんが、同い年ですし私達も敬語なしでいきたいですね。育った環境はあるでしょうけど。」
「そういえば、俺は半々くらいだったかな。いつか【友紀】と呼べる日がくると良いな。」
前に言われて以来、少しは真人の敬語は減ってはいるものの、呼び方は未だにさん付けで会話の中にもまだまだ敬語は残る。
少し顔を赤らめた友紀が決意をしたのか唇にぐっと力を入れる。
「今からでも良いんですよ?」
一歩前に出てきた友紀にドキっとしてたじろぐ真人。
少しだけ主導権が友紀へと移りかけているそんな時……
上目遣いで見上げてくる表情が潤んでるのを理解して真人は自然と身体が前方へと傾いた。
「……ゆ、き……」
一瞬驚いた友紀だったが、瞬間的に自分の唇が塞がれ眼前に真人の顔がある事で自分も目を閉じてしまう。
「ぁ……ん。」
今日は聖夜だっただろうか。
いいえ、ケルト民族の収穫祭です。
魂を鎮めるためのものです。
この日鎮まったのは、真人の欲望でした。
二人には接吻以上はまだまだ早いようで、本当に思春期未満お断り……な関係はまだ続く。
最後に【友紀】と言ったかと思えば、その後に小さく【さん】と付けてしまうあたりはまだまだヘタレであった。
真人の欲望とは【友紀】と呼び捨てにする事。
これがまた小さな欲望であり大きな欲望である。
ケルト民族の英霊の方々はそんな欲望をちゃっかり沈めてくれていた。
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