第69話 誕生日ケーキはKissの味?
「ハッピーバースデー」
友紀さんが誕生日ケーキに31本の蝋燭を立てて点火し、それを写真に納めるとお祝いの言葉をいただいた。
満面の笑みで一回で火を消す姿を期待しているのか、友紀さんの表情がワクテカになっている。
思い切り息を吸い込みオランダのガンダムファイターよろしく台風のように息を吹きかけると……
見事31本の蝋燭の炎は見事全て消え去り細い黒い柱が立ち込めては消えていった。
これが寿命の蝋燭だったら31人
「いやまさか全部消えるだなんて偶然にしては出来過ぎかな。」
ぱちぱちぱちと友紀さんは拍手で讃えてくれる。
せっかく挿した蝋燭は全て取り除かれ、友紀さんによって6等分される。
なぜ6等分か尋ねたら何か召喚できそうなんでと言っていた。
ケーキを6分割しても六芒星にはなりませんからね。
「あらためまして、誕生日おめでとうございます。」
頭を下げてお祝いの言葉を友紀さんからもう一度された。
「ありがとうございます。今年はこうして大事な人にお祝いされて明日死んじゃうのかなってくらい倖せだ。」
「メッです。冗談でも死んじゃうとか言っちゃメッです。」
いやそのちょっとぷく~っとして微おこな表情が物凄く可愛いのですが……と真人は思う。
蝋燭は下げたはずなのに、ケーキの生クリームが溶けてきたような気がしくる。
ちなみにチョコレートケーキが好きだと伝えてあったので友紀さんはチョコレートケーキを作ってくれていた。
不〇家でよく見かける木の葉みたいなちょこが塗してあるやつである。
スポンジの中にはチョコクリームと苺と桃とキウイが入っており、酸味甘味酸味と全体が甘めなので調和が取れている。
そしてスポンジの上にはチョコクリームと木の葉チョコチップと苺とメロンが交互に鎮座している。
真ん中には二段で
【まことくん 31さい】
【おたんじょうびおめでとう】
というプレートが立っていた。
立っていたのだが、既にカットされて上に乗っているものはそれぞれの皿に分配されてる。
「そういえば私達らしくと思って、スポンジ生地にMAXコーヒーが隠し味として使われてます。」
真人は苺とキウイだけでは甘さは中和出来ないなと思った。
それよりも甘い二人が何を言っているんだと、この場に第三者がいたら言っている事は間違いない。
ケーキの全体写真、ケーキをカットしている友紀さん、指に付いたチョコクリームを舐めてる友紀さん(微エロ)、蝋燭の炎を消そうと息を吹いてる真人の写真が撮影済である。
これは多分あとで互いの家族や真理恵さんの所に流れるんだろうなぁと思いながら。
ケーキの甘さは二人の関係の甘さに比例するとは誰の言葉だったか。
プレートは真人が、お菓子の家は友紀がそれぞれ貰い、6等分のケーキのひとカケラずつ取り分けられる。
残りは冷蔵庫に入れて明日の朝食べる算段。
つまり今日はこのあとお泊りである。
「美味しい。」
一口目を食べた感想である。
甘味と酸味のバランスが~と言いたいところだけど、テレビの食レポしている人のような気の利いた言葉は出てこない。
本当に美味い時は美味いとしか言えないはずである。
「ありがとうございましゅ。」
あ、噛んだ。
フォークを口に含んで恥ずかしがる友紀の姿は、真人にとってはピンポイントで萌えポイントである。
真人にとってのMPとは萌えポイントの事である。他のゲーマーの方もよく覚えておいた方が良い、テストに出るそうだ。
あっという間に切り分けたひと切れを食べ終わる。
あの31歳おめでとうプレートは既に真人のお腹の中。
お菓子の家は友紀のお腹の中。
甘々で糖分たっぷり、明日からのカロリー消費が大変な二人である。
でも今日だけは別腹。だからこれから起こる事も別腹。
友紀の唇の端にケーキのクリームが付いているのを発見した真人。
思わず行動に出る。
「あ、友紀さんクリーム付いてる。」
そう言って身を乗り出し右手の人差し指でそれを掬いとる。
そしてそのまま自分の口に入れて舌に乗せた。
友紀が何かを言う間もなくそれは真人の喉奥に消え、やがて胃の中へ。
「あ、あ、あ、あーーーもー。なな、な、なんしよっとねー。」
友紀の家系に九州の血は入っていないはずであるが、テンパると地方の言葉だったりオンドゥル語だったりが出てくる。
真人はテンパった友紀の姿を見て自分の行動の浅はかさに気付いた。
「もーもー、かっか、かんせちゅきしゅじゃないですかーもー。」
怒ってるのか喜んでるのかわからないけどカミカミである。
真っ赤になって反論してはいるものの、不意打ちではあったものの、照れてる友紀は倖せそうだった。
唇を尖らせて抗議している姿は子リスを見ているみたいでとても微笑ましくほっこりとしてしまう真人だった。
すると友紀がふっとテーブルに肘から乗り出し前に身体を寄せて手を出してくる。
先程真人が友紀にやったように、友紀も右手の人差し指を差し出してくる。
まさか指を舐めて……なんてことではないのだが。
真人の唇の端に指を当てると……
「えいっ。」
自分の席に態勢を戻すと、友紀の右手人差し指にはケーキのクリームが付いていた。
「あ……」
真人が反論する間もなく友紀の指は自らの口の中へと消えていく。
「はむっ。」
そして舌にクリームは移動し、2~3度舐められそのまま喉の奥へと消えていく。
そしてやがて胃の中へと導かれ先程までに食べられたケーキ群に合流する。
「ああーーーもー友紀さん、それもかんせちゅきっしゅー。」
真人もカミカミだった。
「てへっ。」
てへっじゃないよもーと真人は思ったが笑顔で照れている友紀を見ていると怒る気なんか湧いてこない。
むしろ微笑ましくて、何やってんだよこのバカップルとしか思えなかった。
「まだ……くりーむついてるよ?」
真人がそう切り出した。
「え?どこですか?」
きょとんとして身を乗り出してくる友紀。
それにつられて同じく身を乗り出す真人。
二人の距離は縮まり……
唇と唇がもう少しで触れ……
がちゃっ
「おにーちゃん誕生日おめでとー。」
何かを片手に掲げた妹、千奈が突然来襲してきたのだった。
―――――――――――――――――――――――
後書きです。
甘い、甘いよ。
ナイス千奈なのか余計な事しやがって千奈なのか。
クリームの舐めあい関節キスはよくネタにされますよね。
この二人も王道いきました。
そしてまだクリーム付いてるよ?えどこ?
そして縮まる二人の距離……
って何してるんでしょうね。
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