第68話 越谷真人レベル31にUP

 朝起きると友紀さんに抱き着かれて眠っていた。

 越谷真人、只今下半身がまずい事になっております。

 男子故、朝反応している事が多いのです。


 男子の諸君はわかるかな、想像してみてください。

 まず、友紀さんが右側から抱き着いて寝ております。

 右胸の上辺りに顔があります。


 右足の膝裏と太腿と脹脛でその……

 反応したあれが挟まれてます。

 以上です、説明終わります。



 詳しくは説明出来ないけれど、目覚めた友紀さんが驚愕のあまり吃驚して赤面していた事だけは伝えよう。


 しかし生理現象なので勘弁していただきました。

 気になるのは友紀さんの視線がそこに釘付けだった事です。


 あれから一晩しか経っていないのに何か覚醒でもされたのでしょうかね。



 夏コミの片付けがあるという事で、朝食を食べた後は荷物を積んで友紀さんを家まで送った。


 片付けは自分でするからという事なので真人は自宅へ戻る。

 いくら付き合っていても四六時中一緒にいるわけではない。


 さて、少し筋トレでも始めますかね。

 とある軍隊式トレーニングのDVDを取り出し再生。


 フローリングが汗でまずいことになったので清掃する。

 その頃には昼になったので軽く昼食を取った。


 先程汗をかいた事もありシャワーを浴びる。

 昨晩ここで……


 あったことを思い出してむくむくと反応してくる。

 「くっ、鎮まれ俺のリビドー!」

 

 結果妄想に負けたとだけ言っておこう。


 

 午後はジョギングをしてみた。

 腕時計を見ると5kmは走った事がわかる。


 「これ、明日筋肉痛なやつだ。」


 

 土日は軍隊式トレーニングとジョギング、平日はウォーキングかジョギングと部屋で出来る筋トレを……


 続けてきたけれど思う程のマッチョ化はしない。

 

 家が近いからといっても毎週会っているわけではない。

 連日会う時もあれば2週間間が空く事もある。

 9月に入ると上半期分の決済だなんだと仕事が忙しくなるため余計に会えなくなる。


 噂に聞く警察官の交通違反取締強化もその一環ではないだろうか。

 期末年度末はよく見かけるはずだ。


 「先輩、最近少し筋肉つきました?」

 後輩が気付くくらいには成果が出ているようだ。

 

 「夏コミであんな事があったからなー、友紀さん守るためにも鍛えようと思って。」


 「そういや何があったんすか?」


 どこからどこまで話して良いかわからなかったので掻い摘んで山梨に説明する。

 「妹が友紀さんのサークルの売り子している時に、友紀さんの男性恐怖症となる原因を作った奴がスペースに現れた。」

 「その話を戻ってきた時に話したら取り乱して放心状態になってしまって。あの日は正気に戻ったけど大変だったよ。」


 風呂場でのこととかは流石に言えなかったけど。

 「こういう世界はたまに変なのいるから馬鹿にされたりするんですよね。ネトゲとかでも直結厨とかいるし。」


 「確かになー。」

 山梨と奥さんはネトゲもする。

 結婚前にプレイしていたゲームのオフ会に二人で参加した事があり、その時にしつこい男がいたそうだ。


 付き合ってる事は隠して参加していたために、変な虫が寄ってきたというのもあるけど。

 やたら隣に来るわ、身体を寄せてくるわ、事故を装って手に触れたり肩に触れたりしていたらしい。

 オフ会の時期が夏という事もあり薄着だったのも相手に拍車をかけた。


 狙ってはなくても目が際どい所にいってしまいがちになる。

 多少は仕方ないにしても、酷いのは執拗に見てくる。

 タチが悪いのは、そういった事をしてくる人物に限って見た目が悪くない。

 

 もしかするとそうやって何人か毒牙にかけているのかもしれない。


 「そういや、そいつ誰かが下ネタを振ったあたりから露骨にそっちの話ばかりしてましたね。俺も華子も現在までお互いしか知らないピュアな関係なのに。」


 「お前は二次元に嫁たくさんいるだろ。」


 「それはソレ、これはコレですよ。」


 「男同士の会話でも引きますよ、自分のモノ自慢とか。経験自慢とか。そいつは途中から相手にされなくなってましたけどね。」


 結局、そいつとはそれっきりで連絡先も交換していないし、他のゲームにメインを移してからは絡む事がなくなった。


 「またそいつが目の前に現れたら……俺なら殴っちゃいそうですね。」


 「やめておけ、奥さんと娘さんが悲しむぞ。」


 確かに、そりゃそうですねと言って仕事に戻った。



 9月一杯まで仕事が忙しいのは一般企業であれば宿命である。

 10月に入れば人事異動もあって新しい体制の事務所や部署も出てくる。

 

 「10月と言えば……誕生日だよな俺。」

 そして大人になってから初めて友紀さんと会った月でもある。



 そして恒例の……


 「どうしてこうなった!」


 10月3日、越谷真人31歳の誕生日。

 友紀さんが手料理と手作りケーキを用意してくれているのはわかる。

 合鍵、友紀さん持ってるしね。抑々今日は準備して待ってると言われてたので当然である。

  

 だが……友紀さんの恰好がおかしい。

 前方は可愛いエプロン……普通だ。普通に可愛い。

 そこで後ろを見てみよう。

 落ちぶれても元上流階級なお方……のようなわけはないのだが。


 「なぜ体操服にブルマーなのでしょう?」


 それは現在越谷家の洗濯機が回っている事から想像して欲しい。


 「怒らないで聞いてください。」

 申し訳なさそうに友紀さんが下を向きながら弁明してくるのを黙って聞く事にした。


 「転倒して材料を派手に零してしまって……」

 とてもお茶の間に放送出来ない絵面になってしまったので、全て洗濯機に入れて回したまでは良かったけど、下着以外の着替えが他になかったために箪笥にあった体操服とブルマー姿になったと。

 

 「流石に下着にエプロンだけだと恥ずかしかったので……」

 両手の人差し指の先をツンと併せて照れる姿がとても可愛い、思わず見惚れてしまう。


 「それはそれで残念だけど、今の姿も可愛いのでOKです!」

 親指を立てて続けて出る言葉は、流石安定の越谷真人31歳独身童貞だった。


 「え?残念て何がですか?」


 「な、なんでもないです。」


 「もー、もー、えっちなのはいけないと思います。」

 ぽかぽかと両の拳で胸を叩く友紀さんの姿は、女子中学生みたいでとても微笑ましいと思えた。

 31歳の誕生日は笑顔で過ごせそうだ、友紀さんと出会えて良かった、この笑顔は守らないといけないなと心の底から思った。


 

―――――――――――――――――――――――


 後書きです。


 真人さん、31歳になりました。

 友紀さん、着替えがないので体操服ブルマーエプロンです。

 裸エプロンよりそそられるのは作者だけでしょうか?


 誕生日プレゼントは「た・わ・し」は出来ませんでした。 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る