第7話 こすぷれいやーは見た!(友紀視点)

 撮影して名刺渡してなかった?

 今思い出したけれど……


 コスプレ名刺は撮影するたびに種類が増えるので、結果的に同じ人に何種類も渡す事はよくある。

 もしかしたらその名刺でHP見て今日の参加知ってって事は……ないよね、あるのかな。

 何意識しちゃってるんだか。そもそもそういう人いっぱいいるよこの業界。

 去年一昨年も撮影したとか、今日は○○のコスなんですねとか、、何度かリピーターになってくれているレイヤーさんやカメコさんもいるし。


 確か去年は、マ○チコスの名刺を渡してたっけ。

 あの時は他になかったんだけど。

 って何意識してるのぉーもー

 同一人物かの確証もないし妙に自意識過剰になっちゃってるし。


 そもそも都合よく同じ人だというのは意識しても覚えてられないって。

 余程のイベントでも起きない限りは……


 あ、今日選んだ名刺はWhite An○elのカ○ンだ。ねこみみメイド好きなのかな。

 そういやマル○も耳はあれだ……


 10代女子じゃあるまいし何を変に意識してるんだか。

 (注:10代女子はえろゲーなんてしません、できません。男子でもダメです。)


 また(イベントで)会う機会があれば相互撮影の口約束をして別れた。

 時間も時間だしそろそろ自分のスペースに戻ろう。



 スペースに戻ってからも落ち着かなかった。

 今まで誰に撮影されても特に意識もしていなかったのに、なぜか今日は撮られた事が恥ずかしい。

 声が同じと思っただけで、そもそもこないだのMAXコーヒーの人と決まったわけじゃないし。

 同じなら同じで、違うなら違うでどうすればいいのーもー



 戻ってから悶々としている間に更衣室の締切30分となったので慌てて着替えた。

 独身とはいえそこは女性、メイク落としからの通常メイクはお手の物で、着替えも然程時間もかからずに済んだ。


 自分のスペースに戻り、どうにか持参した分は1枚を残し売れた。

 1枚はどうしても売りたくなかった、手元に残しておきたかった。

 自分の予備としてではなく……


 ぴんぽんぱんぽーん

 ただいまの時刻を持ちまして、第○○回、コミッ○マーケットを閉会します。

 ぱちぱちぱちぱち…

 会場に残った人達で終了のお疲れ様拍手が響いた。


 「さて、帰りますか。誰も待ってない我が家に。」

 はぁ、言ってて空しい。

 世間は大晦日、年越しカウントダウンとかカウントダウンライブとかあるのに。

 鷲○神社とかまだ人凄いんだろうか。

 商工会の人もちょっと間違ったのか、瞑想してるよなーと思う。

 人は多少呼べてるとは思うけど、東京に比べたら不便な場所だしね。


 旅行鞄に全ての荷物を詰め込み、ガラガラと引いて駅へと向かう。

 りんかい線から新木場で日比谷線に乗り換え、北千住から東武線へと乗り換える。

 しかしここで思わぬ不運に出くわしちゃって。


 りんかい線と東武線が人身事故で止まり、駅は外まで人で溢れ、タクシー乗り場も相当の列となっているのを目にした。

 近隣のホテルからタクシーを呼ぶなんて邪道を使うわけにもいかず。

 そもそもこういう時近隣のホテルは埋まってるだろうし、ホテルの利用者に迷惑かけるし。


 どうやって帰ろう、そもそも島(有明地域)から脱出しよう。

 駅と会場とをきょろきょろ見ていたら突然声をかけられた。


 「あれ?貴女は…」


 あ、違います、いえ人違いです。とは言えず。

 声をかけてきた人を見ると……


 少し直しているのだろうが、恐らくはウィッグネットで髪がべたついた跡が残っている……先日のMAXコーヒーの人だった。

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