第3話 2度ある事は15年越しで3度あった、しかし相手を認識するには時が経ち過ぎていた。

 「あ、どうも。」

 「こ、こんにちは。」

 挨拶を交わす二人の目線は互いのMAXコーヒー。


 気温は暑いが、友紀の心の中は既に滝汗が流れていた。



 「珍しいですね、今はマッ缶とかで呼ばれる事が多いのに、チバラギコーヒーで呼ぶなんて。」


 真人は残りのコーヒーを飲みほした。甘い香りが名残惜しい。


 「そ、そうですね。子供の頃は茨城だったので当たり前のようにありましたので馴染みもありますから。」


 懐かしくてついボタンを押していたというのが真実である。

 大人になると健康を気にして糖分等を控える事が多い。


 「そうだったんですね。普段ブラックなんですが、懐かしいものを見つけたので久しぶりに飲んでみようかと思って。」


 差し当たりのないやり取り、同じMAXコーヒーを飲んていただけのためそれ以上会話が続くはずもない。

 世の中、MAXコーヒーのように甘くない。

 30歳まで独身でいる二人に、見知らぬ異性との会話は結構ハードルが高かったようだ。


 友紀も残りのコーヒーを飲み終わっていた。真人動揺甘い香りが名残惜しいと感じる友紀。


 「あ、じゃぁ私失礼しますね。」

 販売機横のごみ箱へ歩いていく彼女の横と後ろ姿に何故か懐かしさを感じた真人。


 「あ、はい。それではまた……」

 また?またってなんだろう。

 再会の予感でもするというのか?

 それともまた会いたいと思ったのか?

 それ以上は考えず、友紀とは反対のゴミ箱へと歩き出す。


 (また?またって何?それになんというか、何かあの人懐かしい感じが……?)

 缶を捨てて振り返るとベンチに真人の姿はなく、反対側にあるごみ箱に空き缶を捨て去っていく姿が見えた。


 普段東京に行く事のない友紀にとって再会する機会は殆どないというのに、何か違和感を感じるがそれが何かわからないためそれ以上気にするのをやめた。

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