君と僕の解ける世界
まー
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前略 変態の話をしようと思う。
なんて書き出してしまうとまるで僕までもが変態だと錯覚を起こしてしまう方がいるかもしれないがそれあくまでも錯覚である。僕が好意を抱く対象は、貧乳だけど筋肉がそこそこあって途轍もなく美脚で踏まれ心地のよさそうな足裏を持っている見た目年齢十二歳以下の少女だ。ほら、大衆的な性癖だろう?少なくとも彼女やあの少年の好みより大衆的なはずだ。そうでないと私が精神異常者であることが明るみに出てしまうではないか。だから頼む。僕の性癖を大衆的だと言ってくれ。そう願ったところで真実は変わらないが。
それはそうと、彼女についてだ。
彼女。
そう呼称するしかあるまい。私は彼女の名前を知らないし、これからも知ることがないのだから。いや、正確には名前を聞く機会自体は何度もあった。ただ、その度に彼女は呼び名が変わるのだ。しかも鈴木や佐藤、高橋などといったよくある名前を使うならば未だしも喪策鈹などというどう聞いても偽名だと分かるようなふざけた名前を使っている時もあった。
彼女を初めて見かけた時、僕は初めて一目惚れという今まで非現実的なものだと決めつけていた感情を経験することが出来た。彼女のことを意識するだけで、これまで作り上げてきた僕の作品たちが全てどうでも良くなるような感覚を覚え、僕という存在そのものが、彼女に作り変えられるような素晴らしい思いを味わうことが出来た。そして僕は決心した。絶対に彼女を僕の最高傑作に加えてみせる、と。残念ながらその野望はとある少年によって修復不可能になるまであっさりと砕かれてしまったがね。だから今の僕にはその少年に対する憎悪と嫉妬と興味と感謝の気持ちと多額のはした金以外何も残っていないのさ。当時所持していたであろう趣味や他の欲求も今はもう僕の中には存在していない。
ほら、よく飲み屋とかに行くとおっさんが愚痴ってるだろ?「俺は空っぽになっちまったよ」って。あんな感じだ。もっとも、彼の空っぽさは僕の空っぽさに到底及ばないがね。……空っぽさを比較するのは本来僕の美学に反するのだが、もう僕はそんなことを気にするほど面白い人間でもなくなってしまった。君たちが彼女と関わりを持つようなことがあったら僕の二の舞を踏まないようせいぜい気を付けることだ。ましてや彼女の隣にいつもいる少年のようになってしまったらもう人間として終わりだ。死んだ方がましだろう。まあ、こうして僕の手紙を読んでしまっている時点で君たちも相当だと思うがね。
まあいいや。もし君に会うようなことがあれば、僕の作品にしてあげなくもないよ。それじゃ、ばいばい。
草々
旅の案内人A:
追伸 そうそうあの少年の名前を思い出したよ。今度教えるね。
君と僕の解ける世界 まー @ma-syousetukamodoki
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