第一話 異世界召喚

目が覚めたら、そこは俺の知らない場所だった。周りはやたらと騒がしいし、いかにも豪族かなにかが住みそうなところでもある。ちなみに、俺は現在、その大広間の中央に立たされていた。


目の前にいる玉座に座る者が、俺――いや、俺たちに向かって説明をはじめる。


「良くぞ、我らがブリュンヒルデに来てくれた。ブリュンヒルデというのは、この世界の名であり、この王都のあるところはアルデン王国という。ちなみに、我はシュト・アルデンだ」


自分の苗字から国名を……。ほんとに中世だな。次に、国王は俺たちが勇者であり、この世界を救う存在であることを説明した。


「では、最後に。ステータス・プレートについて説明しようと思ったのだが……。貴様らの名前を聞いていなかったな。名を挙げよ」


世界を救う勇者に対して礼儀というのがないんじゃないか?と、少しばかり苛立ったが冷静になり、名前を挙げることにする。名前を言う順番は、なぜか適当だったため、俺からして右にいる勇者からだった。


「私の名前は、猪野陽炎いいのかげろうと申します。日本という、異国からやって参りました。どうぞ、よろしくお願いします」


冷静沈着。且つ、心境を見ることさえ拒むようななめらかで冷たい口調は、悪役感を抱いた。次に、真ん中の勇者。


「俺の名前は咲太陽さきたいよう!こういうのにすげぇ憧れてたんすよ!異世界召喚って盛り上がるよな!?」


……こいつ、初っ端で死ぬタイプだ。偏見だが、いかにもそんな感じだ。周りをキョロキョロと見渡して同意を求めるが、なにも返事が返ってこない。変わりに返って来たのは猪野による罵倒だった。


「いけませんよ、そんな態度をとっては。あの方はあくまでも国王なのです。ここは冷静に行きましょう」


「ちっ。つまんねーの」


そう言って咲は両手を頭の後ろに置いてダラダラとしている。


「ハッハッハッハ。それもそれで面白いではないか。許してやれ、猪野。次、お前の名前は?」


「俺の名前は、坂野守。同じく日本から来ました。お願いします」


「……ほう。全員日本ということは、成功したということでよろしいな?女共」


ハッと、一斉に返事をする。国王の態度にどうしてか、不安を持ってしまう。そして、国王は本題に入った。


「コホン。では、肝心のステータス・プレートを説明しよう――」


国王は手も使って説明した。ステータス・プレートと心の中で叫べば、目の前にボードが出現する。そこには、勇者の姿が描かれたところの部位ごとにどんな装備があるのかとか、一番上にはレベル表記と名前表記と、名前の下にHPとMPの数値がある。そして、メニューをスワイプしていくとスキル一覧や、所持スキル一覧……。アイテム一覧。


俺は構わず所持スキル一覧をタップ。あ、言い忘れていたが、もちろんステータス表記も存在する。所持スキル一覧のページにステータスも同じく表記されている。


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SAKANO MAMORU


HP180/180 MP32/32 攻撃力43

魔法攻撃力77 敏捷力100


隠蔽スキルLv1 聖剣スキルLv4

魔法スキルLv3 神聖魔法Lv5

勇者エキストラスキルLvMAX


所持スキル(技)

隠蔽(姿を晦まし、周りから見られないようになる)セイクリッドソード(眩い星々の光線が、剣の先より光り輝く)セイクリッドターンアンデッド(ゾンビなどのアンデッド系魔物を強制成仏)セイクリッドバーン(眩い星々の雷が、剣の先より出て敵を焼き尽くす)


所持スキル(魔法)


雷属性初級魔法ライデン 火属性初級魔法バーン 土属性初級魔法錬成


……。なんか、いっぱいあるけど、これっていいのか?と、俺が頭を傾げていると、真ん中の勇者である、咲が大声で叫ぶ。


「うおぉおおまじか!!俺の攻撃力見ろよ!初期値で2000もあるぞ!」


すると、対抗するかのように猪野が、


「ふふふ。私にはスキルとして、頭脳スキルというのがありまして。この世界の知識を覚えていくことによって、色んな力を発揮するそうですよ」


「なぁにぃ!?貴様、さては頭がよいな!?」


「ええ。数学検定第一級。漢字検定第一級。などなど、あらゆる検定を持っていますよ」


「ぐぬぬ。お前が俺の友達だったらなぁ!」


そういえば、勇者って四人いるんじゃないの?と、もう一人の姿がいないことに気づいた俺は、辺りを見回すが、その人は、見当たらなかった――。


━━━━━━━━━━━━━━━


「はぁはぁ……」


私は、なにからか自分ではわからないけど、逃げていた。あの国王の私を見る目が、とてもいやらしかった。絶対、なにかされる――。そう思って、王宮と思われるところから逃げ出した。


途中、警備の人達に見つかったけど、なんとか振り切ることができた。国王は、私をまじまじと見つめていたから、逃げたことに気づいただろう。いつ追いかけて来ても、おかしくは無い。


「早く……。早く、街を出たい!」


まるで、魔の手にも襲われるのではないかというぐらい、死にものぐるいで突っ走る。街の城門を捉えた私は、やっと、報われると思ったのだ。だが、報われることなんてなかった。


「おやおや。勇者様ともあろう者が、のこのこ、のこのこと、街中を走り回ってるんじゃないよ。これは、調教が必要かも、知れませんねぇ……」


「キャーーーーー!?」


目の前に突然、空から人が降り立ったことにビックリした私は、その場で気絶してしまった。

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