絶滅種の食卓

布団カバー

絶滅種の食卓

「きょうは土用の丑の日ということでウナギ定食です」

食堂のおばちゃんロボから聞いてそういえばと思い出す。

カウンターからトレーを受け取りヘッドマウントディスプレイを装着する。

すると目の前にはとても美味しそうなウナギ定食が見える。

口に運ぶとウナギのたれのいい匂いが嗅覚を刺激する。

もちろん味もしっかりとウナギの味がしている。

食事中に広告が流れてくるので、いつもなら無視をしているがきょうは目に止まった。

広告はA社発の天然ものの食事を賭けたバトルロワイアルに関するものだった。

ド素人の老人のグダグダとした殺し合いなんて一部の加虐嗜好者しか見れたもんではない。

しかし、ディスプレイを外すと見えてくる味気のない食事を見て応募を少し考えてします自分がいる。

環境汚染、人口問題、天変地異などの影響ですっかり天然ものは超高級品になってしまっった。

若年層は生まれついたときから食べている合成食品に慣れてしまっているが、ギリギリ私の年代は昔の味を知っているので、どうしても現状を受け入れないでいた。

食べ終わった私は自室に帰ってついバトルロワイアルについて調べてしまった。

民間企業主催のバトルロワイアルは珍しいことではないが、A社のは悪趣味に振り切っている。

わざわざ鉄パイプや包丁などの現実で身近な道具を使わせ、戦闘経験なしの素人を登用する。

命乞い、躊躇、リタイアなどをしようとするものは体に付けられた装置から激痛が流れる。

そして、嫌々ながら殺し合いする老人たちという地獄絵図だ。

試しに見た中継映像を見てウナギ定食に見えたものを吐いてしまった。

私は参加は諦めてA社の広告をブロックした。

次の日、B社の広告流れながらナッツ入りのショートケーキらしきものを食べた。

終わり

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

絶滅種の食卓 布団カバー @hutonover

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ