第13話 舞台に始まりの歓声が響く

 ボーグの港に一隻の船が入って行く。

 それは一か月前に多くの戦士達を乗せて、魔王軍との戦場へ旅立った船だった。


 甲板で戦士達が手を振っている。

 港は騒めきに包まれて、岸壁に多くの者達が集まって来た。


 船が着いた。


 船から降りて来た者達へ、駆け寄る者達があった。

 家族、友人、恋人など、親しい者達なのだろう。

 声を掛け、触れ合い、喜びの感情を交わし合っている。


「勇者達が返って来たぞ!」


 誰かの叫びに、ひしめく人々が歓喜の雄叫びを上げた。

 

 ……。


 ……。


 その遥か上空に刃輪の姿があった。

 右手には杖の姿をとったミストルティン・ドラゴンを握る。


「しっかりと幸福を噛み締めるがいい」


 黄土色の瞳に感情の色はない。

 

「それがお前らの」


 遮る物の無い天空の風は暴れるように流れ。

 刃輪の言葉の後ろは、冷たく激しい音色の中にさらわれてった。

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