りょうと咲子
「りょうちゃん大丈夫?」
「……うん。今日は大分調子いい。明日には学校に行けると思う」
可愛らしいイルカベースの青いパジャマを着て、ベッドに腰掛けていたりょうは笑ってみせる。
「良かった! あっ、はいっプリント!」
咲子は鞄から藁半紙に刷られた算数の計算プリントを取り出すと、りょうに手渡した。
「うげぇ~。宿題がたまっていく……また熱出そう……」
りょうは首を前に倒してうなだれる。そんないつものりょうを見て咲子は少し安心した。
「ねえ、サキ?」
「うん?」
「ふ、深水のバカは……」
下を向いたままのりょうの声は、不明瞭で聞き取りにくかった。
「え?」
「深水くんは、どうなったの?」
りょうはポツリと呟くように言った。
「うん……まだ入院中だって、ホームルームで先生が……だから今、みんなで千羽鶴折って、寄せ書き書いてるんだ」
「そう……」
「大丈夫だよ。深水くんいつも元気いっぱいじゃん! きっとすぐ良くなって学校に戻って来るよ!」
「うん。そうだね。深水のバカは、元気だけが取り柄だもんね」
そう言って無理に笑おうとしたりょうの瞳から、大粒の涙が零れ落ちた。そして、そのまま声を上げて泣き崩れてしまった。
「りょうちゃん……」
どう声をかけていいのか分からない咲子は、りょうの隣に座って、ただ背中を優しくさすってあげるだけだった。
「ごめんね……ひっく……ひっく……」
血だらけで倒れているあの姿を思い出すと、りょうには深水がすぐに良くなって学校へ来るとはとても思えなくて、溢れ出てくる涙を止めることが出来なかった。
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