お見舞い

 学校が終わると、咲子は直接りょうの家へと向かった。


 心は重く沈んでいた。同じクラスの仁栄のことももちろんあったが、遠足の次の日から、学校を休んでいるりょうのことが気になっていた。今日でもう三日目になる。


 一昨日と昨日は、りょうの熱が引かないらしく、会うことは出来なかった。


 あの日、頭から血を流して倒れている仁栄を最初に発見したのは、りょうだった。そのショックのせいで、体調を崩して寝込んでいるそうだ。


 無理もないだろう。もし発見したのが自分だったら、きっとりょうと同じように今も学校を休んでいるに違いないと、咲子は思った。


 緑色の屋根をした二階建てが見えてきた。りょうの家だった。楷書で書かれた木の表札の隣にあるインターホンを押すと、すぐに小さい男の子の声がスピーカーから聞こえてきた。りょうの二つ下の弟だった。


「どなたですか?」


「りょうさんと同じクラスの石川咲子です。プリントと手紙を持ってきました」


「おかーさーん! 石川さんがおねーちゃんにまたプリントもってきたよー!」


 元気のいい声がスピーカーから割れて聞こえてくる。しばらくガヤガヤと雑音が入った後、りょうの母親が出てきた。


「もしもし、咲子ちゃん? どうぞ入ってちょうだい」


「はい。お邪魔します」


 咲子は内側に手を入れて門の鍵を外して中へ入る。玄関まで来ると、ドアが開いてりょうの母親が迎えてくれた。


「いらっしゃい。いつもありがとうね」


「いいえ。りょうさんの具合はどうですか? これが今日の分の……」


 咲子が手提げの中からプリントを出そうとすると、りょうの母親が遮る。     


「今日は熱も下がって、大分調子がいいのよ。咲子ちゃん、直接会って渡してくれる?」


「本当ですか? よかったぁ。それじゃあ、お邪魔します」

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