悲しい決意

「明ちゃん、もう食べないの?」


 明仁の母親は、読んでいた雑誌から目を離すと、たくさん梨が残っているお皿を見た。


「うん、もういいや。お腹一杯」


 明仁は無理に笑顔を作って答える。


「そう。それじゃお母さん、ちょっと洗濯物干してくるわね。何か欲しいものある?」


「ううん、大丈夫。ありがとう」


 母親の姿が見えなくなると、明仁の顔から笑顔がスッと消えた。


 彼は何気なく簡易テーブルの方へ目を向ける。


 籠に入った梨、読みかけの雑誌、プラスティックのお皿、フォーク、コーヒーカップ、そして果物ナイフ。


 明仁はその一点だけを暫くの間、見つめていた。 

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