Loneliness
餅川 そら
第1話Loneliness
I am loneliness.
私は孤独だ。
では、あなたはどうだ?
「人間はポリス的動物である。」
そう、アリストテレスは言った。
確かに人間は社会を作り、文明を築いてきた。
しかし、もう文明はある程度の所まで到達してしまった。
ここ長い間、人類が次の次元に行くような発明はされていない。
では、あなた方は集団でいる必要があるのだろうか。
さあ、ここであなたに問う。
「孤独の何が悪い。」
俺の名前は
この名前で、さらにいつも一人でいたため、
あだ名はlonely《ロンリー》だった。
「ぼっちのロンリー」
「論理ーロンリー」
だの言われて小学校の時からからかわれていた。
こんな話をしているが、別に”いじめで本気で自殺を考えた”などという話ではない。
小学生の頃から孤独を優先してきた訳で、今では立派な自宅警備員をしている。
自宅警備員と言ってもずっとネトゲをしているような廃人ではない。
日々小説を書き、プロのライトノベル作家を目指している。
本題に戻ろう。
俺は、人間は孤独な生き物だと考えている。
考えて見てほしい。
生まれてくる時はほとんどの場合が独りだ。
死ぬ時も独りだ。
人間は独りで始まり独りで終わる。
要するに、人間に集団は不要なのだ。
家族、友人、など様々な集団は必要ないものであると考える。
「親がいないと成長できないだろ。」
という人がいる。
確かに親がいなければ成長できない。
しかし、中学生、高校生にでもなれば自然と不要になっていくことも知っているだろう。
結論を言うと、人生の大半において集団は不要な存在になったと言える。
ある日、ライトノベルの最新刊を買いに書店へ足を運んだ。
書店へ向かっている途中、自転車と自動車の接触事故を目撃した。
自転車は高校生と思われる5人組の集団で、並走運転をしていた。
事故の原因は集団であった。
人間は集団になると、ろくな事をしないらしい。
つくづく孤独が1番だと思う。
ライトノベルを書店で買い、さっそく帰って読み終わってしまった。
もう夜の10時を回っていた。
いつもなら9時頃に夕飯が届けられるはずである。
あまりに遅いと思い、多少キレながら部屋を出た。
リビングには電気がついておらず、まだ母は帰ってきていないみたいだった。
俺の親は俺が3歳の時に離婚し、それ以来母親ひとりに育てられてきた。
なんで帰ってきてねぇんだよ、と思い部屋に戻ろうとした。
その瞬間、家の固定電話が音を鳴らした。
「工藤さんのお宅で間違えないですか?」
聞き覚えのない声が機械の向こうからした。
「はい。」
とりあえず返事をした。
「工藤恵子さんが事故にあって意識不明の重体です。早く○○市立病院に来てください。」
突然のことすぎて全く頭で理解できなかった。
深呼吸をして、ようやく状況が読み取れた。
急いでジャージのまま家を飛び出した。
タクシーを呼ぶ金もない。
自転車を出して漕ぎ出そうとした瞬間、タイヤがパンクしていることに気がついた。
走るしかないと悟り、無我夢中で走った。
ただひたすらに走った。
人生でこんなにダッシュしたことはおそらく無いだろう。
息のできないことなど関係なかった。
大きな市立病院に着いた。
急いで夜間診療のドアを開け、受付に突撃した。
「はぁ、はぁ、、。工藤恵子の家族のものです。」
「緊急手術中です。ついてきてください。」
そう言って急いでオペ中の手術室まで連れていってくれた。
1時間ほど待った後、手術中のランプが消え、メガネをかけた男が出てきた。
「工藤さんですね。」
そう言って近づいてきた。
「すみません。間に合いませんでした。」
そう言って深く頭を下げた。
呆然と立ちすくんでいたところ、魂の抜けた母の元へ案内された。
頭部の出血が酷く、顔は見ない方が良いと言われた。
しかし、俺は顔に被せられた布を取った。
そこには変わり果てた姿をした母の姿があった。
あまりに突然のことすぎて、泣くことすら出来なかった。
とりあえず家に帰った。
薄暗い中、母の遺品を整理するために片付けをした。
いつも一人でいたはずなのに、何故かそこには寂しさがあった。
母の化粧台の収納を開けた。
そこには大切そうに置いてある冊子が1冊あった。
”母子健康手帳”だった。
その瞬間、今までの涙が溢れてきた。
「あれ、どうして泣いてるんだろう。」
なぜ泣いているのか理解できないまま、いつの間にかしゃくりあげながら泣いていた。
幼稚園の運動会、一緒に見に行ったヒーローショー、なんで覚えているのか分からないほど古い母との思い出が込み上げてきた。
化粧台の中に一通の手紙を見つけた。
りんちゃんへ
18歳の誕生日おめでとう。
もう結婚できちゃう年齢だね!
選挙にも行けるね!
小説家になりたいんだっけ?
夢を諦めないで最後までやりきるんだぞ!
それと、大好きだよ。
お母さんより
一瞬にして目にハイライトがかかった。
カレンダーを見ると今日は10月21日、そう俺の誕生日だった。
やっと気がついた。
俺は孤独なんかじゃなかった。
ずっと家族に支えられていたのだ。
「お母さん、今まで気づけなくてごめん。それから、ありがとう。これからも天国で応援していて。」
母の死から10年がたった。
このノンフィクションの人生を小説にし、たくさんの人に発信した。
すると、爆発的にヒットしミリオンセラーとなった。
そして、今では小説家として生きている。
3年ほど前に結婚をし、子どもも出来た。
母に貰った愛情に負けじと、日々子どもに愛情を注いでいる。
「お母さん。ありがとう。」
~完~
Loneliness 餅川 そら @mochikawasora
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます