第27話 プロローグⅡ 金眼の娘と長髪の青年
高いビルの屋上に、二つの影が並んでいた。その屋上は庭園で、一人は
そしてその
「先生、なぜこちらに?」
「知りたいかい?」
「……いいです。」
「なんでだよ~。聞いてくれてもいいじゃないか。」
「…言いたいなら単刀直入に言ってください。」
「んー?そんな深刻なことじゃないさ。固くならないでもいいよ。」
「私はいつも通りですよ。」
「そうかい?彼と居る時はもっと砕けた雰囲気だったように見えたけれど。」
「っ覗き見ですか、この変態。」
「大丈夫さ、弟子の色事に茶々を入れたりはしないよ。…いい男じゃないか。体力は少し心配だがな。」
「生々しい。やめてください。子供には夢を見させてください。」
「そう?私には時間の問題に見えるけれど。ただ、彼は君を選ぶかな?」
「私を茶化しに来たんですか。」
この人はいつも冗談ばかり言うから、何が本当かわからなくなる。
故に話していると落ち着かない。
「いや、本題はそうじゃないさ。…本部にはまだ言っていないが。魔族との接触があった。」
「本当ですか?どこで?」
「最初の反応は江戸川区だが、最終は世田谷区で終わってる。」
「世田谷区って、学校じゃないですか!」
「ああ、だから問題なのだよ。」
「困りますね。…でもそれを私に話して、何になるんですか?」
「相談だよ。世田谷区を警戒区域にして調べさせるだけじゃ、きっと見つからないと思ってね。」
「まあ、それはそうでしょうね。魔族は単独行動を好みますし、調査したところで見つかるより気づかれる方が早いでしょう。」
「でしょう?だからどうやってあぶり出そうかな、と。」
薄ら笑いしながら、美青年はこちらを見る。不気味な顔だ。寒気と同時に脳に電撃が走った。
「まさか、私にやらせる気ですか。」
「別に君だけじゃないさ、でも今は人が足りてなくてね。やってくれるかい?」
「…ちなみにそれは私がやらない場合、誰に回されるんですか?」
「さあ?他の1級を待つしかないんじゃない?確か来週末に
人選もひどいが、来週末なんて遅すぎる。すでにこっち側に来て痕跡も途切れている魔族を、さらに放置するなんてできるはずがない。
「でも私は隠密行動に向いていません。私の一族は本能的に魔族に気づかれやすいから、戦う時は近寄らず、遠隔攻撃を練習しろと言ったのはあなたではないですか。」
「あ、それならこれを持っていきなさい。」
青年――
「そもそも君の術が気づかれやすいのは魔術の浄化作用があるからだ。これは奇術を使えなくなる代りに、周りに干渉する系統の奇術を和らげることができる。」
「ああ、確か
「そうだね。もともと私の為に彼女が作ってくれたものだが、それの改良品だ。」
「ありがとうございます。」
「これでやってくれるかい?」
「…わかりました。やれるだけやってみます。」
「それでこそだよ。じゃあ頼んだ。私は用があるから―――あ、あと彼にも云っておいてくれ。」
それから数秒後、屋上から人影が一つ消えた。
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