第24話 恋と別れと決意


『やっぱり、もう帰るの?』


アリアさんが言いにくそうに聞いてくる。


『まあ、一応依頼は終わったし、明日から学校だしね。』


『そう。』


アリアさんの顔が目に見えて暗くなる。


『そんな顔しないでよ。こっちには来ようと思えば一時間と掛からずに来れるんだから。』


『でも、それじゃああなたがきたい時に来れても、私はいけないじゃない。

そうだ!電話で……、そういやキラくんって携帯持ってないんだった。』


『いや、携帯は今回の依頼報酬で買わせてもらうよ。ほかに買うものもないしね。

だから、メールアドレス教えてよ。君が呼んだら、絶対にすぐ行くから。

依頼があっても、約束があっても全部無視してここに来るから。』


『ふぇえ?いいの?』


『当たり前だよ。君の為なら、それぐらい大丈夫。』


『おうおう、見てると恥ずかしくなるな。…主は女誑かしのセンスがありそうだ。』


『なんてこと言うんだ。…そんなんじゃないからね。アリアさん?』


『女誑かし……』


『アリアさん?友人のために、自分の時間を割くのはそこまで可笑しなことではないよね?』


……』


『そう、だって僕は友達が少ないから。』


『本当に…?』


『そうだね。自分の命を懸けてでも守りたいって思える人は、本当に少ないから。』


『自分の命…?そんなもの、もっと親しい人に――――』


『何故?僕は君は親しい人だと思っているけど…?』


『いや、そういうのは恋人とか、家族とか……あっ―――』


『うん、僕今身内が一人もいないから。親戚なんか連絡も取れないし…』


『だから、私が、大切な人?』


『うん。君も…ね。ちなみに、あと二人は、僕の親友と――――』


『むー、もういいよ。さっさと帰ったら?その人たちも心配しているんじゃない?』


『え?いや…。いや、やっぱりいいや。…今回は本当にありがとう。この家にも、お世話になりました。』


『……………』


『ごめん。もっと居たい気持ちはあるんだけど、やることがあるから。』


そういって、窓から、青白く、肌を刺すような冷たい光が飛び出る。


『さて、儂もいくか。大丈夫じゃよ。あやつは、お前を置いて勝手に恋仲になるような人間ではないぞ?』


『ほんと?』


『ただし、別にお前と最終的に関係を持つとも決まっておらんぞ?あ奴は多分、もうそろそろ経験するだろう。』


『なによ。』


『ハハ、というやつじゃよ。』


『は、いや、え?!それは、なんの根拠があって!!』


『知らぬ。勘だ。竜のな。では、儂も失礼するぞ。』


その会話の直後、こちらはやや紫がかった。柔らかい花のような美しい光が、窓から解き放たれた。






それらの世にも珍しい出来事が起きた部屋には、赤毛の少女が一人、ポカンとしていた。



『は~!?!?!?もう、絶対負けないから!』


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