第23話 長い眠りと覚醒と与太話と…

『ちょっと、あなた本当にキラくんの契約したの?…あとあなたが【知の魔竜】伝説級の≪ラムトンのワーム≫なの?』


『お!精霊術師見習いでもお前は知っているのか。うむ。その通り名は少し冗談が過ぎている気がすると聞くたび思うが、我はその認識であっている。それより、…お前は主にとてもなついているらしいな?』


ニヤニヤしながら、目の前の男は言う。

屈強ではあるが人間の姿をしており、とてももともと竜の型をしていたなど信じられない。


『な!?それをどこで?――あ!!』


言ってから赤面の少女は気づく。これでは自分から「はいそうです。」と告げているようなものだ。


『ぷっ、ハハハ!!お前の反応は面白いな!…当たり前だろう。我らは最上級の誓いを交わしたのだ。記憶の内側など覗き放題ニヤニヤし放題だ!』


『…自分で言いますか、ニヤニヤし放題って。

……でも見たい。うらやましい。めちゃくちゃうらやましいです!』


しかし、こんなことを言っている間も、彼の目は開かない。かれこれ二日寝たきりである。アリアは彼の顔を見ると、即座に暗くなる。


『…大丈夫だ。心配などせんでいい。主はこんなことで死んだりはしない。

契約相手の我が言うのだ。間違いないぞ。』


そうは言いつつシュヴァルツは内心焦っていた。

(傷も治っている。いくらなんでも2日は寝すぎではないか?

何かあるに違いない。)


『…そうですね。そういえば、今回の事件の黒幕いったいなんだったんでしょう?

まさか、ウッズさんがあちら側とは思いませんでした。』


『ああ、あやつらか。あれは魔人のなりそこないだ。少し人の真似ができるだけの、本質は魔物と大して変わらない。…まあ、魔物自体魔人のなりぞこないのようなものだがな。あの爺さんなら茂みの中に縛られて転がっていたぞ?』


『そうなんですか!やっぱりあれは』偽物だったんですね!…えっと、まだ私は魔物なんかについてよく知らないので、教えていただけませんか?』


『…正直、めんどくさいな。だが、代わりになるような人間もいないだろうし、

いいだろう。


まず、魔物についての認識だが、あれはさっき言った通り魔人のなりぞこないだ。

魔人は人の形をしているし、知能も高く、一人一人がこちら側でいう奇能をもっている。向こうでは奇術と言われているがな。

魔物は、その奇術を持っていなかったり、自分の奇術に飲み込まれて意識を持たなくなったものがあのように変化する。

ああなってしまっては魔人の誰もが見捨て、殺すか戦争でいいように使われるだけだ。

…………5年前の世界各地で起きた大規模魔物侵攻は、強い種が大量に生まれ、暴れまわる魔物を管理しきれずにこちら側に流れ込んだことが原因だ。

ここまでいいか?』


『はい。』


『じゃあ次は魔人についてだ。

これは協会の中でも知っている人は少ないだろう。

魔人が住んでいるのは向こう側、魔境だ。こちら側の世界とは次元が違う。

魔境にこちらから行くことはできない。魔境の魔人からこちらへの扉を作り出し、

一方通行でこちらに入ってくることができる。

そこでは魔人たちが町を作り、学校に通って生きている。


だが、魔境の国々は荒っぽくてな、すぐに戦争が起きる。

故に子供に施される教育は道徳ではなく戦い方だ。大きくなれば奇術の扱い方も教わる。

まあ、上流階級の子供には教養のあるのもいるが、な。


魔人は強い者が生き残るが故、人数がそんなに多くない。そしてこちら側に入ってきたら帰ることができない。…いや昔はできなかった。だからこちら側に来る魔人はほとんどいないのだ。お前も魔人なんて見たことないだろう?』


だまってアリアはうなずく。


『あとだな、「んん。花蓮さん!」…この話はまた今度だな。』


奇等がしゃべったのだ。


アリアは嬉しさと嫉妬で複雑な表情をしていた。


『カレンって誰なの?もしかして彼女?私に嘘ついていたの!?』


『おいおい、気を急ぐな。患者を揺さぶってやるな。…そうだなあ、このキラの感情は、恋人ではないぞ。凄いな、キラは。この年でまだ初恋すらしていないではないか!!』


『そ、そう。よかったわ。』

(でも、それってまだ私も恋愛対象ではないのよね。)


アリアはもっと複雑な気持ちになる、が、奇等はそんな気持ちはいざ知らず、


「ああ!先まで!」


『えっと、サキっていうのは?』


『うーんと、これは妹じゃな。もう亡くなっておる。』


『…そうなの。』


もういない人の名前と知ると、気まずい気持ちになる、


「え、ちょやめてよ!」


『もう我慢できない。』


またアリアはキラを首ふり人形のようにゆり動かす。


「ん。ああ、アリアさんか。なんか首がいたいなあ。

それにしても、やっぱり綺麗だなあ、アリアさんは。」


まだ半分夢の中なのか日本語のまま、寝ぼけた口調で目を開けた奇等は言う。


それを聞いて、首から真っ赤になるアリアと、ニヤけだすシュヴァルツ。


『ワッハッハ!あれだな。このままいけば我が主は何人も妻を娶ることになりそうだな。』


『わ!あ、僕起きたのか。って何言ってんのシュヴァルツ!!僕の付き合う人は一人だよ。……たぶん。』


『な!そこははっきりと言ってよ!私はほかに女がいるなんて嫌よ!!』


アリアは赤面をしながら必死に言う。


『おお!そこまで積極的になったか!!我は嬉しいぞ。』


シュヴァルツはかなり下手な泣く演技を見せる。


『な!?―――あああああああ!!』


自分の言った言葉を思い出したアリアは、これ以上ないほどの気恥ずかしさに襲われ、奇等の寝ているベッドに顔を伏せてしまう。


『ふぇ!?あの、アリアさん。僕のことを思って言ってくれたんだよね。

ありがとう。うん、決めたよ。お付き合いする人は一人にする。僕の命に誓ってね。』


『ほんと?ありがとう!』


アリアさんが涙ぐんだ目で、光を見るような目で見上げる。


(ものすごく可愛い!!)


いつのまにか僕は彼女の頭を撫でていた。

アリアさんも気持ちよさそうに撫でられていた。


〈パシャパシャ!〉


嫌な音が聞こえて、そちら側を見ると、シュヴァルツがスマホをこちらへかざしている。


『シュヴァルツ!それはスマホじゃないか!?僕だってもっていないのに…。

それに、今の写真は?』


『フ、スマホなんてイマドキ誰でも使っているぞ。この写真は我の新しい待ち受けとしよう。…それにこれを花蓮とやらに見せるのも楽しそうだ。』


『どっちもだめだよ。だから今すぐその写真を消して。ね!アリアさん?』


『…私もその写真ほしい。』『へ!?』


『おう、少し高くなるぞ?』


『うん。いいよ。だからください!!』


『ちょ、アリアさん!?』


『よーし、交渉成立だ!!』


『だからそれ消してって!!』


奇等の声は二人には全く届かなかったとさ。めでたし、めでたし。












――――――――――――――――――――――――――――――――――

大丈夫ですよ!ここで終わらせたりはしません。

あと書き忘れていましたが、『』が英語、「」が基本は日本語です。

知らないで今まで読んでくださっていたみなさん、ごめんなさい!!

by作者


















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