第20話 初めての依頼 in ロンドン⑤

『あ、』


シュヴァルツと契約できたのはいいが、ただでさえ満身創痍なのに奇能を使ったあとの反動で、体がもたない。



『よい、あんなことをした後だからな。メリーとやらには我から連絡をしておこう。』そこの木に倒れていろ、よくなるぞ。』


『はい、あとは、よろし…く。』


なんでメリーさんたちのことを知っているのかは謎だが、そんなことを考える気力もない。言われた通りにする。





メリー・スミスside


【おい、メリーとやら。キラをブルーベルの森に迎えに来い。彼は疲れている。】


『え?ブルーベル?まさか、あなたは?』


【ん?…そうだったな、名乗るのを忘れていた。我はキラと契約したシュヴァルツだ。君らの言うところでは、≪ラムトンのワーム≫というやつだ。】


『……え?まさかあの伝説の?…でもその精霊力であれば否定できないわね。

……キラは無事なんでしょうね?』


【ああ、だがお前、気をつけろよその言葉使い。我はキラ以外の人間と対等に話すつもりはないぞ。】


力のこめられたその言葉に、メリーは少し震える。

(あの子はなんて者と契約を……。)


『…わかりました。アリアとともに行きます。少し待っていてください。』


【アリア?ああ、あの娘か。そうかそうか、…いや、お前は来なくていい。その娘だけ来させろ。】


おもしろそうにシュヴァルツが言う。


『ですが…』


【おっと、口答えはするなよ。誰と話しているのかを考えて言葉を選べ。】


『く、…わかりました。』


【では頼んだぞ。】


そういって通信は途切れた。


さて、急がなくては。大丈夫だとは言っていたが、代理で今の精霊が連絡をとらなくてはならないというのは、何らかの傷を負っているに違いないわ。

…それに、本当にあの伝説のドラゴンと戦ったのだとしたら、絶対に無事ではない。




アリア・スミスside


『アリア、ブルーベルの森に彼を迎えに行きなさい。今すぐにね。』


『え?最速でも二日はかかるんじゃなかったの?』


『話が変わったわ。今さっき彼と契約をしたというドラゴンから連絡が来たの。

……それから、あなた。攻めるつもりはないけれど、今回の任務はQクラスじゃなく。特1級のしかも災厄級だわ。精霊の話が正しければ、≪ラムトンのワーム≫だそうなの。』


『まさか、本当に?もしそうなら援護部隊をすぐに呼ばないと!伝説級なら。』


『いえ、援護部隊はいらないわよ。とりあえず行けばわかるから、早くキラくんを迎えに行きなさい。』


『…色々と言いたいことはあるけど、わかったわ。いますぐいきます。おばあちゃん、[フライ]を使っていい?』


『あれはまだ練習中じゃない。……わかりました。聞かなさそうね。ただし、絶対に失敗してはだめよ。』


『うん。ありがとう。じゃあ、行ってきます!』


『いってらっしゃい。絶対に帰ってくるのよ!』


『はい!……じゃあ、[フライ]!!』


赤い髪の少女はその世界でも難しい部類に入る飛行術を使い、青い森へと消えていった。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る