第18話 初めての依頼 in ロンドン③
「うーん。」
もう朝だ。僕は目を閉じたまま起き上がろうとするが、できない。
なんか重い。
「おはよう。」
アリアさんが満面の笑みで上に乗っかっている。
その笑顔に少し見とれて、それでも10秒後には僕も挨拶をした。
『おはよう。アリアさん。』
『もう、遅いよ。どうしたの?』
『いや、君に見とれてしまってね。』
そういうと、アリアさんは下を向いてしまった。
やっぱりちょっとクサかったかな。気持ち悪いと思ったかな。
しょんぼりしていると。不意にアリアさんがこちらを向いた。
『もう、なんでそんなこと言えるのよ。』
胸のあたりをポカポカ叩いてくる。痛くないのは優しくしてくれているのだろうか。
『いや、本当のことだから。アリアさん言われたことないの?』
『うん。』
ふむ、今時の男子は事実すら言ってあげないのか。可哀そうに。
『何をしてるんだろうね。君の知り合いの男子たち。こんな美人をほうっておくなんてもったいない。』
小声でつぶやいたつもりだったのだが、アリアさんにも聞こえてしまったみたいだ。
顔を赤くして、
『うれしい。』といった。
それから、着替えたり朝ごはんを食べたりして(朝ごはんはアリアさんが作ってくれた)用意をし、目的の場所へ移動を始めた。
『そういやさ、キラくんって何歳だったっけ。』
『ん?僕は16だけど、アリアさんは?』
『私は15だよ。じゃあ、学年は一つ違うんだね。私早生まれだから。』
『そうなんだ。だからかあ。』
『何が?』
『僕は年下の女性には緊張せずに話せるんだよね。』
『ん~?それって私のこと意識してくれてないってこと~?』
『え、いやそんなことないよ。意識してなかったら。あんなこと言わないよ。てかここ街中だよ、なに言ってんの!?』
『あんなことってー?あ、あああ~~!!』
思い当たることがあったようだ。顔を真っ赤にするアリアさんもかわいい。
『そういやさ~、キラくんって彼女いるの?』
無理やり話のお題を変えるとしても、それはちょっと厳しいんじゃないかな?お姉さんや?
まあ答えるんだけどね!
『いや、お恥ずかしいことにいません。いや、いたこともありません。』
『へっへーー!?』
ボソ『それなら私が狙っちゃおうかな。』
『ん~~?なんか言ったー?』
『いやー、なにもないよ。それじゃ、今回の依頼の内容を復習しよう!』
『おっけーい。』
そういって僕らは作戦会議をした。
一気に二人とも真剣な顔になる。
『えーと、今回戦う魔物がこのドラゴン。イギリスにはドラゴンの魔物がよく出てね。だからそういう伝説もたくさんあるわ。』
『なるほど、で、このドラゴンってのはだいぶ強いんだろ。』
『うん。あなたには申し訳ないけど、依頼を受けてくれる人がいなかったの。今は1級は忙しいらしいね。』
『ううん、大丈夫だよ、実戦経験もいくらかあるし、じいちゃんにいろいろ教えてもらったからね。』
少し彼女の顔が暗くなるが、それは気にせず、『次は特徴』と言って話を進める。
『場所は、今から行くブルーベルの森の奥、だったよね。』
『ええ、そうよ。あそこは観光名所にもなっているから、早くことを終わらせないと大騒ぎになるけど……。』
『けど?』
『ドラゴンはここ最近出ていなかった。100年以上はね。
あの生き物は賢いから、もし100年以上隠れていたとしたら…。
かなり強くなっているかも。それにドラゴンの息の有毒性は時がたつほど高くなるから。本当に気を付けてね。』
『うん。くれぐれも注意するよ。でも初期ランクで最高Qクラスをもらえたんだ。
そんな簡単に負けるつもりもないよ。』
『ふふ、そうこなくっちゃ。』
『弱点だけど、資料には目と書かれていたけど、正直わからない。
ドラゴンの魔物はただでさえ個体が少ないし、弱点が変わっていることもあるからね。できれば、戦っていく中で見つけてほしい。ごめんね、これくらいしか私は手伝ってあげられない。私はまだ奇能が目覚めていないし、精霊術も修業中だから。』
『いや、今回は僕に依頼してくれたんだからね。もっと僕を信じて、ね?』
そいって僕は彼女を抱きしめる。
『ありがとう。ブルーベルを守ってください!』
『はい!わかりました。』
そんなことを言っていると、もう目的地に着いた。
『じゃあ、行ってきます。』
『いってらっしゃい!』
そういって僕は青いカーペットのように花が咲く森へ、一歩を踏み出した。
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