第17話 初依頼 in ロンドン②
ロンドンに着いて、奇能を止めたときは一瞬死ぬかもしれないと思いました。
ええ、ちょっと無理したんですかね。それにしても、ロンドンってすごいなあ、
これが都会なのか。東京とは比べ物にならないな、オシャレだし。
でも、この依頼主が待っているのはここではなく、町外れだ。
ここからは何も書かれていないので、歩いて探さなければならない。
しかし、そこ近づいていくほど、周りの景色はもっとオシャレに、空気は甘く、感覚は冴えていく。いつのまにか、周りの湿度が上がっている気がする。
「やっぱり、普通の場所とは違うんだな。なんか、懐かしい。」
ここへは来たことがないはずなのに、既視感を覚える。
自然とフラットな気持ちになり、リラックスしてしまう。
歩き始めてから10分ほどたつと、「リンリン」と音がした。
呼ばれているような気分になり、その鈴の音がなった家の扉をたたいた。
「ガタガタ」と音がして、扉が開いた。
そこには童話に出てきそうな魔女の恰好をした、美人のおばあさんがいた。
「よく来たね、キラ。中にお入り。」
そういわれて呆気にとられ、部屋の中に招き入れられた。
なぜか流暢に日本語を話すおばあさんにもびっくりしたが、もっとすごかったのは内装である。
幻を見ている気分だった。埃一つかぶっていないのに、その建物はかなりの歴史が感じられ、さらに妖精のようなものまで飛んでいるのである。「美しい」では足りない鮮やかさに、僕は少しの間惚けてしまった。
「ほら、こっちだよ。奥で話そう。あの子も待っているからね。」
「はい。」
まだ少し意識が朦朧としている僕は、大した返事もできず、呼ばれたほうに歩いて行った。
「ここだよ。ほら、アリア、来て。」
「はーい、ってええー!?もう着いたの?」
赤毛の女の子が出てきた。目は透き通る黄緑色だ。
少し背が低い。年下なのだろうか。でもスタイルは…、いえ何でもありません。
ようやく現実に戻ってきた僕は慣れた英語で、挨拶をした。
5か国語ぐらいなら流暢に話すことができる。
『初めまして、時道 奇等と申します。
このたびは時道家に依頼をしていただき、ありがとうございます。
飛行機は、少し退屈だったので、奇能を使って飛んできました。』
『え、流暢なイギリス英語じゃない!!住んでたことあるの?』
『いえ、自力で頑張りました。覚えておいて損はないかと思いまして。』
『ほんと?すごいわね。これで支障なく依頼もこなせるわ!!』
嬉しそうにアリアさんが跳びはねる。
とてもかわいい。この子も妖精なんじゃないかと思えてきた。
「ありがとうね。私は日本にいたことがあるから話せるんだけど、
アリアはロンドン生まれロンドン育ちだから、ずっと不安だって泣いていたの。」
『ちょ、おばあちゃん言わないでよ、恥ずかしい』
「可愛いな」
あ、自然と感想が漏れてしまった。
すると途端にアリアさんの顔が真っ赤になり、
嬉しそうに抱き着いてくる。
とてもいい匂いだ。
『ありがとう。キラくんもカッコいいよ。』
そう耳元でささやかれて僕も顔が赤くなる。
『若いっていいわねえ、仲がいいのは良いことだわ。』
『もう、おばあちゃん。からかわないでよ。』
むー、とアリアさんが口を膨らませる。
まだ彼女は僕を離さない。
至近距離で見ると、髪がさらさらなことや、服がとても似合っていることもよくわかった。自分は何かに酔っているんだろうか。
彼女を抱きしめて耳元で『綺麗だ。』と言ってしまった。
『ふぇ、何言ってるの!?』
それはもう髪と肌の色が一緒に見えるくらい顔を赤くして、アリアさんは言った。
『もうそろそろ誘惑はやめたらどう?』
おばあさんが呆れたように言った。
『何言ってるの、そんなのとっくに切れてるわよ。…てことは、
何もなしに私を『綺麗だ。』って……。』
もうそれはとても嬉しそうにアリアさんは悶えだした。
ちなみにその間僕は彼女を離していません。
『もう今日はいいわ、あとは二人で楽しんで♡』
そういっておばあさんは出て行った。
その後僕らは今までのことなんかを語り合い、今回の依頼内容についても話し合った。絶対期待したでしょ。僕は自分の理性のコントロールは修業でしたことがあるんだよ!何もありませんでした。
……アリアさんがどうしてもと言ったので添い寝はしましたが。パジャマ姿もとてもかわいかったです。
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