第4話 帰宅後


  「おう、奇等、今日のスピーチはめちゃくちゃダサかったのう。」


家に着くと、じいちゃんはいつものように茶化してきた。


「ダサいって、じいちゃんそれは無くない?命を捨てる覚悟でみんなを守ったんだよ?」

 心外だ。僕は抗議の声を上げる。


「それは分かっておる。しかしなあ、あれじゃと気が狂って飛び降りたようにしか見えんぞ。明日からが思いやられるなあ。」


ぐうの音も出ない。


「うっ。やっぱそうだよね。ホント明日からどうなるんだろ…僕。」


「時道家の男子があれぐらいのことで落ち込んでどうする!

明日からも今まで以上のペースで修業は続けるぞ。覚悟しておれ。」


「えー。……冗談はここまでにしてさ、じいちゃん。奇能ってなんなの。

もしかして母さん達や先と関係があるの?」


一番聞きたかったことを言う。


「……そうか、お前ももう十六か。もうそのことを話さなければならないのじゃな。

…まずは奇能について話そうか。奇能とはな、すなわち超能力のようなものじゃ。十で力の片鱗が現れ始め、十六で完全に操れるようになるというのが能力者の中では常識じゃ。

 およそ千年ほど前から、稀に人に身に着くようになったと言われておる。本当に稀におこるのじゃ。じゃがな、奇能が発現した者の子孫には、奇能も受け継がれる。

そのような超能力をもつ一族は、奇族と言われておる。

儂ら時道家も一応は奇族の一つじゃ。お主も体験したじゃろ?体が軽くなり、時が止まったようにも見えるあの感覚を。」


「うん。じゃあ、あの水が自由自在に操れるのはなんなの?」


「それはな、奇等。お前の母さんの一族の力じゃ。我が時道家の奇能は、自身の高速化と動体視力の劇的向上じゃ。お主は二つの一族の末裔にあたる。しかしこれは軽々しく言ってはならんぞ、まあそのうちバレルじゃろうけどな。」


「二つの奇族の子ってそんなにめずらしいの?それとも二つの奇能をもつ人間は早死にしたりするの?」


「そういうわけではないぞ。2つ奇能をもっていようと寿命は変わらん。じゃがな、二つの奇能を持つ者は性格に難がある者が多いんじゃ。恐ろしいほど強いんじゃがの。

しかし、お主はうちと清水家の子であるのだから、良い人格者でなければならぬ。

……話を戻すが、その2つの奇能を持つ者、ダブルアビリティ保持者は、恐ろしく強く、協会から許可をもらわなければその子を作ってはいかん。

…お主の父母は半ば押切に近かったがの。二つの奇能をもつ奇族は今確認されている中では、九つほどしかない、外国もふくめてな。」


「そんなに少ないの?だから重正さんもあんなに真剣な顔してたんだ。」


「お主、重正にあったのか?」


「そうだよ。『明日、此処にきて』と招待状もくれた。これだよ。」


そういって僕はじいちゃんに、重正さんからもらった封筒を渡した。


「ほう、あ奴もきずくのが速いのう。…わかった。明日行って来い。あそこでは零止も世話になったし大丈夫じゃろう。学校には明日連絡しておく。」


「え、学校にそんなこと言って大丈夫なの?」


「大丈夫じゃよ。理事長と校長はこのことを知っておるからな。」


「なんだ、じゃあ、また学校に通えるの?」


「………それはまた話す。じゃが、お前は転校することになるじゃろうよ。

奇族が集まるところヘな。いいから、もう今日は寝ろ。大分疲れたのじゃろ?

少し休め」


ゴクゴクとじいちゃんは日本酒を一気飲みする。


「え、ちょっ、それはどういう…。もういいや。」


 こうなったじちゃんはまともなことを言ったためしがない。諦めて言われたとうり、布団に入ると、少しも経たぬうちに待ってましたと言わんばかりに眠気が襲ってきて、僕は深い眠りについた。

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