第36話クラス対抗戦13




 「あぁ、もう早く始めてもいいですか?」


 「それなら、お手柔らかにしてくださいね。」


 「ちょっと、それは無理なお願いですね。」


 やっぱり、3年生の他のチームが、近ずいて来ているな。どうせ、大将を囮にして、俺の周囲を囲んで、全員でいっせいに、魔法を打つんだろうな。


 時間的には、7、8分くらいで囲まれるな。それまでに、終わらせないと、少しばかり面倒くさくなるな。


 「アイシャ先輩達って、囮役ですか?」


 「もう気づいてしまうんですね。囲まれるまでに、私を倒さないと、負けてしまいますね。」


 「俺がそんなことで、負けるとでも思うんですか? 試してみますか? 無駄ですけどね。」


 魔法障壁を、2重に張っておけば、3年生なら大丈夫だろうな。まぁ、けど、全方位に張らないといけないから、囲まれる前に終わらせたかったんだけどな。


 「えっ、待ってくれるんですか? 襲ってこないんですか? 囲まれますよ。」


 「襲うって、人聞き悪いこと言わないでくださいよ。それに、囲まれたとしても、負けない自信しかないですから。」


 「そうなんですか。後悔しても、知らないですからね。」


 まだ、あと6分ぐらいあるな。さっさと、囲んでくれないと、暇になるじゃないか。何を、話せばいいのか?


 「そういえば、さっきのお願いって、何をさせるんですか?」


 「あぁ、その事ですか。お願いって言うのはですね、学園対抗戦の代表の選手を、訓練してください、っていうお願いですね。」


 おいおい、またとてつもなく面倒くさいじゃないか。訓練なんて、してたら家にいる時間が減ってしまうじゃないか。


 「なんで、1年生の俺がそんなことするんですか? 生徒会の人達を、中心にやった方が、言う事を聞いてくれるし、そっちの方が、強くなるんじゃないですか?」


 「それなら、言っちゃいますよ。いいんですか?」


 なにか、言われたらいけないことでも、あったっけ? そんなこと、俺の正体以外、無かった気がするけどな。


 「なにか、秘密ってありましたっけ? 何もなかった気がするんですけど。」


 「なら、言っちゃいますね。まず、入試の時に、前代未聞の筆記試験と、実力試験を満点で首席になったり。」


 えっ。なんで、そんなことを知っているんだ? そんなの、知ってるのなんて、教師と他に学園長と国王陛下たちだけだぞ。って結構知ってる人多いな。


 「なんで、そんなことを知ってるんだ。って顔してますね。びっくりしましたか?」


 そんな顔してるか? 俺の顔なんて、変わんないだろ。………触ってみても、なんにも変わってないぞ。


 「ふふっ、顔なんて触っても、わかんないですよ。」


 「そんな顔の形なんて、してなかった気がするんでけど?」


 「形? 違いますよ。表情ですよ、表情。ね、ティナもそう思うよね。」


 「私ですか? そうですね、最初は無表情でしたけど、少し変わりましたよ。」


 表情か。俺の表情なんて、変わんないと思うんだけどな。


 「あっ、あと同じSクラスの子達を、全員を同時に相手にしたり、その後に生徒会の2人を相手にしても、無傷でたってたり、まだまだありますけど、聞きますか?」


 おいおい、周りの3年生達が、驚いて顎外しそうになってるぞ。


 「もうわかったから、言わなくていい。」


 「そう、わかってくれたのね。それなら、やってくれるよね。」


 「………暇な時なら、やります。」


 「うん、それでいいよ。ありがとうね。」


 「暇じゃなかったら、やりませんからね。」


 「やってくれるだけでも、いいんですよ。」


 「そうですか。」


 この人、どこまで俺の事知ってるんだ? 俺が強いからって、俺に代表選手の強化を任せるなんてこと、普通はするわけが無い。


 なんせ、平民ごときに、貴族が教えられるなんて、プライドが許さないだろうから、反発するだろうに。


 それこそ、訓練をボイコットされて終わりだろ。そんなこと、されるくらいなら、生徒会が中心になってやった方がいいだろうな。


 「1年生の平民に教えて貰って、貴族としてのプライドとかどうなんですか?」


 「そんなプライドで、学園対抗戦で勝てるなら、喜んでそんなもの捨てますよ。」


 「そうですか。そこまでして、勝つ必要なんて、ないんじゃないんですか? 何かを失うわけじゃないんだし。」


 「うちの学園は、ここ10何年優勝どころか、上位にも入っていません。それに………」


 「それに?」


 「いえ、それだけですよ。けど、プライドを捨てて、優勝できるなら安いじゃないですか。」


 何を言いかけたんだ? どうせ、そっちの方が、主な理由だろうな。まぁ、そんなことどうでもいいんだけどな。


 「そうですか。いいんじゃないですか。そんなことで、本当に優勝できるならね。」


 「そろそろ、包囲が出来そうですけど、いいんですか? 準備をしなくも。」


 「そんなこと、相手に教えてもいいんですか?」


 「どうせ、探知魔法か何かで、わかってるでしょうから、私が言っても同じことですよ。」


 「まぁ、準備なんて必要ないので、いつでもいいので、打ってきてくださいよ。」


 「防げるって、自信満々ですね。」


 「えぇ、実際に余裕ですから。」


 「なら、行きますよ。」


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