第1章 川鵜中隊
「シムナやい」
集会所の外からドワーフが声をかけた。
「おめぇ、まぁた射撃か?」
「ちょすんでねえ」
それだけ返すと、2階の窓際に立つハーフリングの手の中から轟音が響く。
ドワーフが振り返ると、まさに飛び立とうとする鴨が哀れ墜落していくところであった。
「よぐやるなおめぇも」
やれやれとため息をついてドワーフは枕がわりの丸太をゴロゴロと転がす。
「銃ばりやって何になんだが」
そう言ってドワーフはシムナの持つ魔導小銃を見た。この村では猟師たち生業のためには欠かせない小銃であったが、それを朝から晩まで触り続けているのはこの村ではシムナくらいだった。
そもそもドワーフの多いこの村ではシムナのようなハーフリングは稀な存在だ。
その特性を生かし、シムナの家では代々鳥撃ちの猟師を生業としていた。
「ダジル、あとでこれ直してぐれ」
シムナがそう言うと、ダジルと呼ばれたドワーフは身を起こす。
「まぁたやってが」
そうぼやきながらもダジルは少し嬉しげだった。
ドワーフにとって金属道具を触るのは至上の喜びなのだ。
ダジルがウキウキと集会所に入るのを眺めながら、シムナは小さく笑った。
シムナ───のちの英雄、シモ・ヘイへ29歳の秋の初めの日だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます