第3話 俺達の世界

本当の幸せとは何だろうか。

俺、迫場龍はその意味を長く知らなかった。

だけどアイツ。

つまり山地春樹が俺に声を掛けてくれてから。

世界が変わり始めたのだ。


だから俺としては本当の幸せは大切な人を持つ事だと思う。

俺はその意味を.....仙波千穂に。

つまり.....俺の幼馴染に教えていきたいと思っている。

暫くコンビニで話していてそれから俺の部屋に千穂を招き入れた。


因みに母さんも父さんも.....妹もその千穂の姿に衝撃を受けていた。

心配げな感じを見せていたが、久しぶりだね、と。

優しく受け入れてくれた。

母さんが千穂の両親に連絡を入れてくれて。

その為も有り千穂はこの家に明日が土曜日なので泊まる事になった。


「.....懐かしいね。このお部屋。変わってるけど」


「そうだろ。.....まさか千穂がまた来るとは思って無かった」


千穂はか細くなった腕で部屋のあちこちの品物に触れる。

その手を見ながら.....俺は眉を顰める。

手の骨がよく.....見える。

痩せているにも程が有るな.....。

苦労してきたんだろう。


「.....あ」


「どうしたんだ?」


「この写真.....飾っているんだね」


「.....そうだな」


棚に飾っている写真立て。

それを見ながら千穂は笑みを浮かべる。

だが直ぐに複雑な顔をした。

そして.....涙を浮かべる。


「.....昔は良かった」


「そうだな」


「.....みんな無邪気だった。だけど今はもう地獄でしかないかな」


「.....」


その姿を見ながら.....俺は唇を噛む。

そして千穂は写真立てを置いて。

それからベッドに腰掛けた。

ちょっと疲れちゃった、と言葉を発する。


「.....そのまま寝るか?」


「そうだね。ちょっとだけ寝ようかな。良いかな?」


「全然迷惑じゃ無い。ただ俺は勉強すっから良いか」


「.....うん。真面目だね」


龍は昔から.....真面目だったからね、と俺に柔和になりながら。

そのままベッドで横になった。

そして枕に頭を押し付けて俺を見てくる。

龍の香りがする、と、だ。


「恥ずかしいから嗅ぐなよ」


「.....何で?昔は一緒に寝てた事もあったじゃん」


「今の俺としては.....お前が魅力的な女性にしか見えないから」


「.....ふえ?」


その様に目をパチクリしてボッと赤面する千穂。

俺はその姿を見ながら頬を掻く。

恥ずかしいけど.....事実だ。

思いながら.....俺は笑みを浮かべる。


「.....りゅ、龍。流石に恥ずかしいんだけど.....」


「俺はお前が好きだ」


「.....何でそんなに私の事が.....」


「さっきも話したろ。俺はお前が魅力的に感じている」


起き上がって困惑する千穂。

そして上目遣いで俺を見てくる。

そんなに好きなの?私の事、と俺に話した。

俺は頷く。


「お前はどうだ?」


「.....私?.....私が龍をどう思っているかって?」


「.....そうだね」


「その.....えっと、かなり恥ずかしい.....」


指を唇に添える千穂。

でもね.....私も龍の事は好きかな。

と言葉を発した。

そして可愛らしい笑みを浮かべる千穂。

その事につい、この様な事を言った。


「ごめん、キスして良いかな」


で、俺は口を抑えた。

だが手遅れ。

全て言葉を発していた。

千穂は赤面して目を丸くしながら.....俺を見てくる。


「.....!?!?!」


「い、いや。ごめん。お前が可愛かったから.....わ、忘れて」


だが次の瞬間。

俺の頬に手が添えられた。

そしてそのまま唇が唇で塞がれる。

そのまま.....キスをした。

俺は驚愕に、驚愕しながら.....千穂を見る。


「お礼。.....これね、ファーストキスだよ。龍にあげる」


「ちょ、ちょ、ちょ!!!!?お前!!!!?」


「私も好き。龍の事。だから.....何時迄も好きでいてね」


「.....」


で、その、もし良かったら。

とモジモジしながら千穂は上目遣いで見てくる。

俺は唇に手を添えながら?を浮かべる。

そして.....千穂は歯に噛んだ。


「.....付き合って下さい」


「.....!.....」


「.....だめ、かな?」


「.....分かった。付き合おうか」


千穂は涙目で喜んだ。

そしてその日。

色々有りながらも俺達は恋人になった。

それから.....笑みを浮かべていると。


ドアがゆっくりと開いた。

妹の.....迫場天体(さこばてんたい)だ。

中学生で顔立ちは俺以上に整っている可愛い女の子。


長い黒髪が特徴的だ。

俺に対して、にしし、と褐色の肌で微笑んだ。

?を浮かべる。

携帯を見せてきながら、だ。


「撮ったよ。お兄ちゃん」


「.....は?何を?」


「.....キスシーン」


「.....消して下さい」


イーヤ( ̄▽ ̄)

という感じで消そうとしない我が妹。

千穂が真っ赤に赤面しているからな!

勘弁してくれよ!


「.....でもお兄ちゃん良かったね。千穂さんと付き合えて」


「.....ああ」


「.....よし。この動画.....ネットに流そうかな」


「止めんかクソッタレ」


冗談だよ、あはは。

と笑顔を見せる天体。

俺は.....盛大に溜息を吐きながら。

千穂の手を握った。

握り返してくれる、千穂。


「.....愛してるよ。龍」


「.....有難う。千穂」


幸せの意味。

それを.....二つ目を理解した気がした。

俺は.....今が幸せだ。

思いながら.....俺は千穂に再び笑んだ。

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3月、桜の花弁、再会 アキノリ@pokkey11.1 @tanakasaburou

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