小説版 パラレルスクールDAYS/三津留ゆう
プロローグ
誰もいない
そのせいで、放課後の校舎は
高校生になって一年と四か月、通い慣れたはずの学校なのに、なんだか別の世界に迷い込んでしまったみたい。
心臓が、口から飛び出そう。
声を出そうと開いたくちびるが
でもそれは、夜の学校にどきどきしているからじゃない。
わたしの前には、背の高い彼が立っていて──。
「あの……わたし……」
やっとの思いで、わたしは言った。
「……ずっと前から、好きでした。つき合ってください」
彼の
その反応を見ていられなくて、わたしは彼から視線をそらした。
一学期の終業式。
夏休みで会えなくなってしまう前に、彼に気持ちを伝えなきゃ──。
そんなふうに
彼が、小さく息を吸う。返事をしようとしているのだ。
ハッとして、わたしは意識を引き
そのときだ。
頭の上の
(えっ……なに?)
きょろきょろとあたりを見回すと、教室の中で、なにかがぼんやりと光っている。
(あれ……スマホのバックライト?)
もしかすると、生徒が残っていたのだろうか。
どきりとしてそちらを見た、その瞬間。
廊下の蛍光灯が消える。
教室の電気が消える。
街の明かりが消えていく。
停電だ。
暗くなった教室の窓は、きれいなグラデーションを
カーテンが、ふわりと夏の夜風をはらんだ。
静かに
わたしは、目の前にいる彼のほうへと向き直った。
いつのまにか、教室にいた誰かの気配は消えていた。
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