告白予行練習/HoneyWorks・藤谷燈子

introduction~イントロ~



「あれから、もう七年もつんだ……」



 クローゼットの奥から顔をだした卒業アルバムを前にして、ぽつりと独り言がこぼれた。

 表紙には、母校であり、いまは勤務先でもある「さくらがおか高校」の文字がつづられている。

「なつかしいなあ。デザイン、変わってなかったんだ」

 先日、職員室で配られたばかりのアルバムと並べると、どちらが自分のものかわからなくなりそうだ。違いと言えば、少し日に焼けているくらいだろうか。



「卒業してから、なかなか開く機会もなかったなぁ」

 ひさしぶりに中を開こうとするけれど、小さく震える指先が表紙をかするだけだった。

「……やだな、緊張しすぎじゃない?」

 苦笑して、ふっと目を伏せる。

 深呼吸したあと、ゆっくりとページをめくった。



「わっ、みんな若い!」

 さすがに幼稚園や小学校時代のアルバムとは違い、「これは誰だろう?」と首を傾げることもない。それでも写真の中で笑う友人たちの表情は、どことなくあどけなかった。

 自分も短い前髪に猫っ毛は変わらないが、いまよりずっとおとなしそうな表情をしている。



 高校時代は女子三人、男子三人の六人グループでいることが多かった。

 いまでも何かと顔を合わせ、思い出話に花を咲かせたり、近況を報告しあっている。

 ただ一人を除いては。



「元気にしてるのかな……」

 卒業以来会っていないけれど、思い出すのはいつだって太陽のように笑う姿だ。



 目を閉じると、あざやかに高校時代がよみがえってくる。

 まぶしくて、切なくて、いつだって全力だった日々が。




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