春日坂高校漫画研究部 第1号 弱小文化部に幸あれ!/あずまの章
第1話「ジョブ→オタク」
兄はヤンキー、妹はギャル。そして私は三つ編み眼鏡のオタク女子である。
「
「じゃあオタクやめたら」
「そんなのできないよ。私からオタクを取ったら眼鏡しか残らないじゃんか」
「それもそうね」
元は生物化学準備室であった部屋には、ホルマリン
良い点があるとすれば、ガス水道のついた小さな調理場の存在である。これだけはどこの部室にも負けていないだろう。
お
「吉村
「そうだよ、私以外は二人ともリア
話しかけてきたのは後輩の
大人しそうな外見に
「家でどんな会話してるんですか? うち、弟がいるんですけど、ほとんど話したりしないんですよね」
「うちもそんなもんだよ。むしろ
「妹、
「そうなんだよ! 私、弟が欲しかった!」
「弟も変わりませんよ」
「一人っ子の私、勝ち組ね」
勝ち
ゴージャスな名前に見合った堂々たる長身にきりりとした顔立ち。実家は
「兄弟の真ん中って一番ナメられるポジションだよね。上からも下からも
「それをいいことに部屋で漫画
「キタちゃんは私を悲劇のヒロインにはさせてくれないよね」
問題ばかり起こすヤンキーの兄に、ギャルで甘え上手な末っ子の妹。親はなんだかんだ言って手のかかる子供ほど可愛がるものだ。目立たず大人しかった私はあまり構われることがなく、
しかし中学一年生のとき、友達のお姉さんにイケない道へと
「あと兄弟いるとさ、その友達を家に連れてくるんだよね。兄弟以外のヤンキーとギャルが家にいる間は
「うちも弟が部活仲間を連れてくるんですけど、こないだ何て言ったと思います? ダサい姉ちゃん見られるの
「弟、悪魔ね」
「弟ヒドイ! 弟ってさ、帰り道に
「そんな天使いませんよ」
あっさり否定されてショック! 弟に夢見てただけに、ショーック!
兄弟話に
「しゃーっス!」
入ってきたのはひとりの男子生徒だった。大きなスポーツバッグを
「あ! なんかいい
「うるさいのが来たよ」
「イケメン帰れよ」
「
散々な言われようの男子生徒、その名を五味
漫研への入部は
「今日はミーティングだけだったんだ。ねえねえ先輩、これ飲んでいいっスか」
「いいよ」
「やったー! ……って
「すでに三人分出したからな」
「もっと早く来ればよかったぁ」
薄い茶色の飲み物を片手に、五味は女三人の輪の中に何のためらいもなく入ってきた。
「何の話してたんっスか」
「兄弟の話」
「妹と弟は悪魔だったよ」
「そーなんスか? うち、妹も弟もいるけど、俺に
相変わらず空気の読めないイケメンである。
どうせあれだろ、イケメンはたとえバリバリのオタクだろうと結局はイケメンであるから兄弟は嫌ったりしないのだ。人間見た目が九割強、これが悲しい現実なのだ。
「そうそうリホ先輩、借りてた漫画返します。続きはないんスか?」
「なんの漫画?」
表紙が見えないよう黒い
「五味君……」
「お前というやつは……」
キタちゃんとマリちゃんの
「そうだ、キタちゃん。
「再来週あたりならいいわよ」
「私も行きます。メグちゃんにも言っておきますね」
「俺も行きたいけど、テニス部あるし……」
四月に入院した部長に会ったことがないのは五味だけだった。ひどく残念そうにしているが、部長だって同じくらい残念に思っているんだぞ。なんせ五年ぶりに現れた漫研の男子部員だ、病室で知った部長の喜びようは
その幸子部長は三月はじめに不幸にも事故に
全員が顔を合わせられるのは、おそらく夏休みになるだろう。一学期の間は私たち一、二年生だけでの活動になる。顔合わせとなる漫研
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