5分後に先輩にときめく恋/恋する実行委員会
さよなら、先輩 Lina
わたしはずっと結城先輩に
学食で友人とふざけ合っている時の
でも一言も話せないまま、わたしの存在すら気づかれないまま、先輩が卒業する日が来てしまった。
先輩に会えなくなってしまう。
このままわたしの
先輩、先輩、先輩。
わたしはなにを楽しみに学校に来ればいいの。
卒業式では、ずっと
ああ、もう先輩の姿を見ることはできない。これで最後になってしまう。
こんなにも先輩を
その幸せをくれたのは
気づけば、
「わり、先に行ってて」
友人たちにそう言って、先輩がこちらに向き直る。
きっと先輩は分かってる。
どうしてわたしの顔は真っ赤で、手と足がこんなに
いや、先輩だけじゃない。おそらく先輩の友人たちだって。
その
それとともに
「
先輩がそう言って歩き出す。もしかして、さりげなく場所を変えてくれたのかな。
初めて自分だけに向けられた先輩の
先輩はなにが好きなんだろう? もう最後だというのに好みが知りたくて、先輩の指先を注視してしまう。
ピッと押されたのはミルクティー。意外だなぁ……甘党なんだぁ……。そう思っていると、目の前にミルクティーが差し出された。
「えっ」
「やるよ。卒業式に参列して
「あ、ありがとうございます」
「なんの関係もないのに参列なんてだるいよな」
何気なく
関係なくない。関係なくなんかないよ。
だって、わたしは──
「先輩が好きです」
真っ赤な顔でそう告げた。
「ありがとな」
真剣な
「ずっと見てたんです……っ」
もうあふれ出る涙を止められなかった。
「友達とお
「そっか。気づいてやれなくてごめんな」
そっと頭に置かれた手はゴツゴツしてるのに優しくて、
「ありがとう」
ニコッと笑う先輩はやっぱりかっこいい。
わたしの恋は
「わたしこそ、たくさんの幸せをありがとうございました」
わたしはペコリと頭を下げると、そのまま
最初で最後の先輩との時間。
胸が締めつけられるほどの幸せと
さっきは笑顔になれたはずなのに、歩を進めるほどに
先輩、先輩、先輩。
やっぱり大好き。いつまでも先輩が好き。
「うっ、うぅ……っ」
歯を食いしばっても
もうわたしの恋は終わってしまった。
こんなに胸が苦しくなる恋なんて、きっともう二度とできないと思う。
先輩、ありがとう。
そして、さよなら。
さよなら、先輩。
■□■
あの時から数ヶ月たち、わたしは高校三年生になった。
入学以来ずっと続けていた部活も先週末に引退試合が終わって、そろそろ勉強に
志望校や判定という言葉をよく見聞きするようになってわたしも、いや家族全員が
そしてある日、お母さんから家庭教師が来ることを告げられた。
「お友達のお子さんがね、
「えぇ~! やだよ! 西海の人がこんなバカに付き合ってくれるわけないじゃん!」
「それがね、良いおこづかい
「えぇ!? そんなお金があるならわたしのおこづかい上げてよ!」
「なに言ってんのよ!
ぎゃあぎゃあと言い争っていると家のチャイムが鳴った。
「あら、来たみたいね! ほら、咲織も
「こんにちは、
なんで
「わざわざ来てもらって悪いわね~! ほら、咲織もご挨拶して!」
「か、
わたしの声は消え入りそうで、きっと目は点になっていたと思う。
でも先輩は何も気づいていないように、いや、むしろあの日のことなんてなにもなかったように
「じゃあ、うちの
「う、うん……」
いや、むしろ二回目があるなんて。
人生ってなにがあるか分からない。でも、もしかしてこれってチャンス?
これから大学が決まるまで定期的に先輩に会える? それも二人きりで?
「う、うそ……」
手を口に当て、目を見開く。
「
「えっ」
「おまえなぁ、勝手に告白して勝手に走り去って、なんなんだよ」
え? 告白のこと覚えてた?
しかもなんか、
「言い
はい? なにその言い方……。
「そ、そんな言い方って!」
「こっちが返事する前にいなくなりやがって。名前も
「えっ?」
「おまけに家庭教師やる羽目になるし」
「……え?」
「おまえ責任取れよ」
「え?」
「責任取って、志望校西海にしろ」
ニヤリと先輩が笑う。
それは今まで見たことのない表情で、忘れようとしていた気持ちがまたわたしの中で頭をもたげた。
「つーかさぁ、あんな
「なっ!」
一気に顔が熱くなる。もしかして、お母さんと言い争うの聞こえてた?
「こづかい少ないみたいだし、
「先輩って……」
「なんだよ」
「い、意外と性格悪いですね」
「うるせーよ」
先輩はそう言って笑って、わたしの
心臓がうるさい。
「こづかいが少ない不憫な女子高生のために、週に一回はカフェかどっかで勉強見てやるよ」
「そ、それって……」
「ん?」
「デ、デートですか」
「ばーか」
額にデコピンが飛んでくる。
「それはA判定取ったらな」
これ以上ないくらい心臓が高鳴った。
わたしの
「こういうの苦手だから一回しか言わねぇから」
「咲織、好きだよ。あの日から、ずっと」
言葉も
「おまえは?」
好き、好き、好き。
ずっと先輩が大好き。
必死に首を縦に
「泣き虫かよ」
ふわりと包み込まれ、初めて知った先輩の
そしてこれからきっと、たくさんの初めてが
■□■
「おまえバカじゃねぇの? 中学からやり直せ」
「なっ! ひっどーい! 彼女にそういうこと言う!?」
「なんでもかんでも彼女特権でカバーできると思ってんじゃねーよ」
「あっそ! もういい! 先輩の分まで食べちゃうから!」
「あっ! おい! それ俺のスコーン!」
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