第2話「落書きの返事」②
■□■
それから数日後、また理科の授業が目前に
「ない……、ない!」
机の中にも
「理緒~? もう行くよ」
「あっ、待ってよ~!」
仕方なくノートと筆箱だけを持って理科室へ向かおうとすると、声をかけられる。
「教科書? 俺の使う?」
声のした方へ振り向くと
「えっ……」
「生物でしょ? 使う?」
「あっ! この前ぶつかった……」
かっこいい、私の探している彼だった。
「そっ。この前のお礼と言うかお
こんなチャンスは二度とないと思った私はすぐさまうなずき返事をする。
「あっ……はいっ! ぜひ!」
「ちょっと待ってね」
彼は教室の中へ
「あ、ありがとう……」
急に照れくさくなり、顔が赤くなっているのではないかと心配で下を向いた。
「終わったらそのまま待っててよ。俺次の授業で使うから」
「うん、ありがと……」
あまりの展開の速さについて行けず
「行かなくていいの? チャイムそろそろ鳴るんじゃ……」
「えっ……」
顔を上げた時だった。理科室へと
「あっ! い、いけない! ありがとう! 後で返すね!」
私はそう言い残して彼の返事を待たずに理科室へ走って向かった。
「起立、礼」
(やば、もう号令始まってる)
こっそり扉を開けて理科室に入るが時すでに
「おい、佐倉。
(バレてる……)
榎本先生から注意を受けてしまった。
「ご
ふと顔を上げると由奈が私の顔と手元を
「教科書あったの?」
と聞いてきた。その
「実はさ……」
先生の話の
「えー! ちょーラッキーじゃん! やったね! 理緒。で、何て?」
由奈の質問の意図が分からない。
「名前よ、名前」
(はっ!)
由奈に言われてようやく気づく。
「聞くの忘れた~!!」
(なんて事! 自分のバカさ加減にあきれちゃう。何で聞かなかったんだろう……。自分で自分が
心の中で自分に
「もーさ、理緒ってバカ?」
「わ、わかってるよ!」
「聞かなくたって見ればいいじゃん」
「? 何を……、あっ!」
そこでやっと気づく。私は教科書を借りたのだ。それなら──
ドキドキしながら教科書をひっくり返し、名前を
‘
(きりゅうけいた……。きりゅうけいた!? けっ……Kだ!!)
私の心臓は飛び出しそうなほどバクバクと鳴り出した。
これはもう授業どころではない。この名前の書体とKくんの書体を照合して……
(あぁ、もう! 同じ文字がないからわかんないよ! 何かヒントはないかな?)
教科書をパラパラめくっているとポカッと
「佐倉、お前いい加減にしろよ」
低い声が頭上から降り注ぎ、
「毎回毎回注意されて恥ずかしくないのか?」
(恥ずかしい。恥ずかしいに決まってるじゃないか!!)
「もうあたしのことは
先生は私の言葉を受け入れたのかどうかはわからないが、何も言わずに
‘そんなこと言わずに一度
↓
‘真面目に受けようとは思ってるのに榎本先生いつも
榎本先生の事を
授業の終わりが近づくと
「理緒、どうしたの?」
「授業終わったら桐生君に教科書返す約束してるの」
私の言葉に由奈は
(もう、なおさらドキドキしちゃうじゃない……)
その瞬間天の
「終わったぁー……」
扉の方を見ると理科室から出て行く生徒と入れ
「理緒、どうする? あたし先に教室帰ってようか?」
「えー! 由奈お願い! 一人じゃ心細い……」
理科室から出て行こうとする由奈を追いかけていくと扉の外に見つけた姿にドキッとした。
「あ……」
声をかけられない私に気づいた桐生君はこっちへやってくる。
「授業間に合った?」
「えっと……見事、遅刻だった」
「ははは、そっか」
「あの、これありがとう」
恥ずかしくてうつむきながら持っていた教科書を差し出すと手元が軽くなる。
「佐倉、理緒ちゃん?」
急に名前を呼ばれドキッとする。
(なんで私の名前知ってるの……? これはもしや
「あっ! ごめん! まちがえた!」
恥ずかしさのあまり
「ありがと、理緒ちゃん」
桐生君はそのまま理科室の中へと入っていった。
「理緒ちゃん……理緒ちゃんって呼ばれたよ! 由奈!」
「もう! 由奈~!!」
うれしさと恥ずかしさを
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