待ち合わせは理科室で/油木 栞
第1話「落書き」
桜
新たな高校生活の期待に満ちた一年生。キラキラとした顔で登校し、友達作りに
大学受験の年を
一方、二年に上がった私は理科室で授業を受けながら窓の外を
「あーあ、つまんない。だいたいさ、二年生って何すればいいわけ? だんだん慣れ親しんできたこの学校はクラス
「えー? って言うか、今彼氏作らないといけない? 理科の実験中に?」
由奈は私の話なんて右から左。
「もう、由奈はいい子ちゃんなんだから。もういいし」
私は机に
「あーあ……運命的な出会いとかないかな。……つまんないの」
そのまま顔を横へ向けると筆箱からシャーペンを取り出した。
「あ~つまんないの」
またそうつぶやくと、それをそのまま机に書く。
‘あ~つまんないの’
ノートに書くのと机に書くのとではシャーペンのなめらかさが
「こらっ」
「きゃっ!」
やわらかい何かで
「俺の授業中に
「
「
「はぁ~い」
少しシュンとした顔を見せると榎本先生は
「ほら見なさいよ~。イケメン榎本に
「もう! 由奈のいじわる!」
そう、理科
(ま、私は教師と生徒の禁断ラブなんて求めてないからいいんだけど)
「も~さ……合コンでもしよ!」
「あたしそういうのパス」
由奈は私の
「由奈ってば、つれない!」
仕方なく私は実験の手伝いを始めた。
「せっかくの高校生活、何もなく終わっちゃうよ~……。一年の時はスカート短くしたり、
ブーたれて
「ねぇ
「え~? だってさ~理科ってつまんなくない? そもそも化学で習った元素記号とか使う日なんて一生こないよ! すいへーりーべー……何だっけ?」
「‘ぼくのふね’だろう?」
榎本先生がまたやってきた。
「新学期というより新学年早々赤点はやめてくれよ? 俺の信用問題に
ため息を
「あー! 先生が自分の保身の
そう言って口から舌を半分出した。
「お前は子どもか。しっかり実験の結果メモっとけよ。もうすぐ授業終わるぞ」
まるで気にしていないかのようにサラッと流されムッとする。
「ねぇ! 聞いた!? 今の! 子ども
由奈に向き直り同意を求めたが希望とは違う答えが返ってきた。
「……理緒のそういうとこ、十分すぎるほど子どもだとあたしも思う」
「えー! 由奈のいじわる!」
直後にチャイムが終業を知らせた。
「はい! じゃあ各自
その問いにそれぞれの返事が聞こえる中、私はハッとする。
「由奈ちゅわ~ん!」
「やだ」
「まだ何も言ってないし!」
「言わなくても分かる。さ、教室
さっさと理科室から出ようとする由奈をあわてて追いかけた。
「由奈ってば! 待ってよ~!」
机に落書きしたことなんてすっかり忘れ、消す間もなく理科室を後にした。
そして、その落書きはつまらなかった私の高校生活を青春ライフのど真ん中に立たせてくれたのだった。
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