片恋アイロニー 隣の君とアオいハル/くらゆいあゆ
プロローグ
なんてつやっつやピカピカの美しいオレンジ色なんだろう。こっちの黄色の発色も目に痛いほどまばゆくて、
右手にオレンジのパプリカ、左手に黄色のパプリカを持ち、わたしは
ここはお
イチの家のキッチンに
そのテーブルの上には、ふだんわたしが家で
でもここでわたしがあえて語っておきたいのは、色こそ地味だけど
ああ、こんなに
うちの家庭菜園で採れる野菜が世界一だと心得ていても、これだけの
「
野菜の山をかき分けるように、わたしよりちょっと太い半そでTシャツの
「イチ……」
両手にパプリカ! のままわたしは
テーブルの前に座るわたしを見下ろすくりっとした
十六歳男子にしては幼いくらいで、まだわたしと
「俺も一緒に作るぞ。蒼に任しといたんじゃ野菜野菜野菜のオンパレードだ。こちとら高校二年の食い盛りだっての」
「はぁ」
「蒼の野菜
わたしからオレンジのパプリカを乱暴にとりあげると、代わりに銀色のトレイに
「えっ! なにこれ、めちゃくちゃすごくない? これも〝
「そう。あっちに
視線だけで冷蔵庫を示す。
「すごいね。
〝宵月〟というのは、産地にこだわった高級創作和食の
「フォネツに大和がいたのはラッキーだったな」
そこでイチは
わたしと
それなのに。
「おらおらおら蒼っ! とっとと用意にとりかかりやがれ。あいつらすぐなだれ込んでくるぞ」
座っている
「わかったよ、もおおおー」
わたしは仕方なく立ちあがった。
それが人にモノを
フォネツのメンバー女子はこんなイチの一面を知っているのかな。
昔はこんなじゃなかったのに、いつからこうなったのか。どこでどうすり
「肉だ肉! まず肉だ! これをサイコロステーキにして、ソースはそうだな。今からだと二種類イケるか?」
「甘くみないでよ、三種類はイケます」
一緒に作る、だなんてまったくの方便で、フォネツの仲間がくるのに自分好みの料理をわたしに作らせたいだけなんだ。
それならそれで別にいい。料理(特に野菜)は大好きだ。
「じゃあまずメニューね。野菜と魚介がいっぱい
「おう、パエリアか。蒼のパエリアめっちゃ好物だわ」
知ってるからパエリアにしたんだよ。
「それから野菜を使った前菜
「また野菜? 肉は? ステーキは?」
「肉は最後だよ。あったかいうちにお肉、食べたいでしょ?」
「そうか、なるほどな」
「はい。イチも手伝って!」
イチの腕の中に持ちきれないほどのパプリカやじゃがいも、トマト、アスパラ、ブロッコリー、玉ねぎを押し込む。
「お、おう」
……料理ができあがり、イチの仲間、フォネツのメンバーが庭に面したリビングに集まる頃には、わたしはこんな表情はできないんだろうな。
わたしとイチの通う
入学式からこっち、九クラスある中で目立つやつらは
男子は女子に慣れていて、女子は男子に慣れている。まさしく美男美女の集まりで、
成績は決して悪くないけれど、生徒にも先生にも一目置かれている。それを逆手にとって楽しむような……アウトローとの境界をわざわざ
物心ついた時には
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