その7

『なんで・・・・やらせなかった?』恨みがましい目で俺を睨みつけながら、金山勝は言った。


『それが俺の仕事だからだよ。お前さんが何でこんなマネをするのか、聞き出すため。それに銃を持ってる奴がいたら、何としてでも止めなきゃならん』


『俺は・・・・俺はみちるちゃんが好きだった・・・・でもこんな顔だからな。声だってかけることは出来ない。だから遠目に見ているだけ、それでよかったんだ。でもよ。こいつは、彼女の死を商売にしやがったんだ。それどころか、あんなに自分のことを好いてくれたのに、裏切って別の女と結婚したんだ!許せると思うかよ?』


『君の怒りはもっともだ。』


 次にそう言ったのは、中村氏だった。

『だが、私はみちるちゃんのことは、可愛い妹としか思ったことはない。これは昔も今も変わらない

『いうな!もう聞きたくない!』

 金山は目に怒りをたぎらせ、隠し持っていた刃物を抜こうとした。

 俺はもう1射、彼の腕に向けて撃った。


 弾丸は逸れることなく、刃物を弾き飛ばす。


 パトカーのサイレンと、警官おまわりの足音が、こちらに向けて響いてきた・・・・。


 あとは、もうお決まりの通りである。

 俺は駆け付けた所轄と機捜の連中からさんざん嫌味と罵倒を聞かされ、最後は

”公安委員会の査問委員会にはちゃんと出席しろ”

”今度こそお前の免許を取り消してやる”

 と、究極の殺し文句を浴びせられ、奴らは金山を引っ立てて去っていった。


『本当に、これで良かったんでしょうかね?』

 誰言うともなく、中村氏は言った。

 俺は何も答えなかった。

 拳銃を収め、シナモンスティックを口に咥えた。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

”本日休業”

 俺の事務所オフィスのドアに、翌日からお決まりの札が下がった。

 査問委員会の結果、今回向こうが拳銃を持っていたこともあって、すんでのところで、俺は業務停止処分は免れた。

 だが、自主的に10日間だけ自分で自分に封印をすることにした。

 大した意味なんかない。

 骨休めくらいしたところで、罰は当たらんだろう。


 おりしも新聞では、

『愛と死の記録』が再びリメイクされることが決定したと、大々的に書き立てていた。

 誰も悪くない。


 悪いとすれば、人の死を利用して金もうけをしようとする連中だけだ。


                              終わり


*)この物語はフィクションです。登場人物その他全ては作者の想像の産物であります。

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『愛と死の記録』の裏側 冷門 風之助  @yamato2673nippon

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