【優秀賞】武田信玄Reローデッド~転生したら戦国武将武田信玄でした。チートスキル『ネット通販風林火山』で、現代の物をお取り寄せ無双して、滅亡する武田家の運命をチェンジ!
第55話 鉄砲三段撃ちする事、長篠の如し
第55話 鉄砲三段撃ちする事、長篠の如し
足場城壁の鉄階段を駆け下りる。
そこへ、搦め手から板垣さんが戻って来た。
「御屋形様! ご出陣にございますな?」
「はい。板垣さん打って出ます。俺は支度をします。爆発の衝撃で守備兵が呆然としてしまっているので――」
「お任せください! 兵のとりまとめは私が行います!」
「頼みます!」
守備兵の統率は板垣さんに任せる事にしよう。
俺は大手門へ走った。
重たい鎧兜を装備しているが、興奮しているせいか重さを感じない。
足取りは軽い。
大手門の前には、続々と兵が集まっている。
既に飯富虎昌の部隊も集合していた。
飯富虎昌は恭しく俺に兜を差し出した。
「御屋形様! 御下知を頂いた小山田信有の兜にございます。お改めください」
小山田信有の兜は、左上がベコリと変形していた。
どれだけ強く叩かれたのだろうか。
俺は小山田信有の兜を【上大蔵】に仕舞い、碁石金を一つかみ取り出した。
「ご苦労であった。褒美を与える。手を出せ」
「はっ! ありがたき幸せ!」
飯富虎昌が差し出した手に、碁石金をザラザラと載せる。
飯富虎昌の両手にコンモリと金の小山が出来た。
周りで見ている守備兵たちから、ざわめきが起こる。
「あれは金か!?」
「あれ全部!?」
「すげえ! 俺、金なんて初めて見たよ!」
「あれだけあれば……」
「ああ、一生楽が出来る……」
周りの守備兵が、飯富虎昌が受け取った碁石金の小山を見て騒ぎ立てる中、幹部たちも集まって来た。
板垣さん、小山田虎満、香、恵姉上、妹の南、見張り台にいた馬場信春も兵を引き連れやって来た。
俺は全員を見回しながら、檄を飛ばす!
「見ての通りだ! 敵将を討てば、碁石金を両手一杯にくれてやろう! 大将を討てば、大盃に山盛りの碁石金だ!」
守備兵たちの目の色が変わり、あちこちで唸り声が上がる。
やる気が出て来たな。
「開門せよ! 今川軍を蹴散らすぞ!」
俺の檄に守備兵たちが答える。
剣や槍を空に突き上げ、雄叫びを上げる。
馬場信春が大手門前の重機を動かし、大手門がゆっくりと開かれた。
「
「うおおおおお!」
まず、小山田虎満率いる城壁中央の守備兵たちが飛び出した。
大手門前の今川兵は爆発のショックで混乱し、右往左往している。
そこへ――。
「小山田虎満鉄砲隊! 前へ!」
小山田虎満は容赦なく、鉄砲隊を投入した。
鉄砲隊が持つのは、俺がネット通販『風林火山』で買った、火縄銃のレプリカだ。
香たちが改造をして、一応発射出来るようになっている。
ただ、レプリカの改造品だけに欠陥がある。
一発撃ったら熱を持ってしまい、冷めるのに十分かかる。
つまり、一発撃ったら次を撃つまで十分待たなくてはならないのだ。
さらに射程は25メートル程しかなく、命中率も極めて悪い。
香と小山田虎満は、ひどく独創的な方法でこの欠点をカバーした。
弾丸を散弾にして、一人の鉄砲足軽が複数のレプリカ火縄銃を持つのだ。
鉄砲足軽は背中にカゴを担いで、そこに十丁の散弾のレプリカ火縄銃を突っ込む。
こうして小山田虎満は、十人の鉄砲隊に百丁の散弾のレプリカ火縄銃を装備させた。
「構え~! 放て~!」
ダダン!
小山田虎満の掛け声で、十丁の鉄砲が一斉に放たれた。
バタバタと今川軍の兵士が倒れる。
散弾だから、大雑把に狙いを定めれば、弾は敵に当たる。
「次弾用意」
鉄砲足軽が手にしていたレプリカ火縄銃を地面に置き、背中のカゴから次の銃を手に取る。
地面に置いた火縄銃は、回収役の兵がすぐに回収した。
「構え~! 放て~!」
ダダン!
二連射目が放たれ、今川軍は抵抗する術もなく倒される。
小山田虎満は、三段目を放った。
「構え~! 放て~!」
ダダン!
三段目が撃ち終わった時には、大手門前の今川軍は恐慌に陥っていた。
「逃げろ!」
「雷だ!」
「ひいい!」
「助けてくれ!」
大手門前の今川軍は、地雷の爆発で半数以上の兵を失っていた。
この戦国時代に地雷や火薬は存在しない。
指揮官も兵士も何が起こったのかわからない。
その呆然としている所へ、鉄砲の三段撃ちを食らったのだ。
意識を取り戻した今川軍は、恐怖に捕らわれ我先にと逃げ出した。
「ひゃひゃひゃ! 見たか! 小山田流鉄砲三段撃ち!」
鉄砲隊の指揮をする小山田虎満は得意絶頂だ。
その様子を眺めながら俺はボヤく。
「小山田虎満も、目茶苦茶だよな……。火縄銃のレプリカ百丁とか……。金がかかってしょうがない……」
「あら! ハル君! でも、効果はあったでしょ? 今川軍は大混乱だよ!」
俺の横に香たち千鶴隊が来ていた。
全員袴姿で馬に跨り、ボウガンや薙刀を手にしている。
まさか……。
「あの……香たちも出て戦うの?」
「当然でしょ!」
「いや、あのですね……。あまり危ない事は――」
俺が止めようとしたが、香たちは耳を貸さなかった。
恵姉上の号令一下、戦場へ向け駆け出して行った。
「香様に続け!」
香たちが出撃すると、飯富虎昌隊も香の後を追って出撃した。
飯富虎昌ぁ!
御屋形様の俺に続くんじゃないのか!
俺が軽く落ち込んでいると、板垣さんがそっと声を掛けて来た。
「御屋形様。参りましょう」
「よ、よし!」
俺と板垣さんは馬に跨り、残りの守備兵を連れて香たちの後を追った。
狙うは、今川義元だ!
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