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第21話 どさくさ紛れを狙う事、火事場泥棒の如し
第21話 どさくさ紛れを狙う事、火事場泥棒の如し
「
板垣さんは『よりによってなぜ今川家』と言いたそうな顔をしている。
それはわかる。
今川家とは現在和睦中だし、今川家は強い。
今川家は駿河、現在の静岡県一帯を抑えている。
静岡県は耕作地が多い上、海に面しているので漁業や海運も盛んな豊かな土地だ。
動員できる兵力も多いだろう。
今川家は足利幕府と同じ足利系の名門武家だが、血筋だけでなく実力で駿河を統治している。
配下には優秀な武将が多い。
武田家が真正面から駿河に攻め込めば、負ける可能性が高い。
だが、俺には
俺は表情を引き締め、真面目な声で板垣さんに腹案を話し始めた。
「これから話す事は内密にお願いします。俺の一芸で知り得た事なので」
「かしこまりました」
板垣さんが表情を引きしめ、姿勢を正した。
そこへ俺が爆弾を放り込む。
「再来年の天文五年に今川家当主の今川
「なんですと!」
これは史実だ。
今川
死因については、はっきりとわかっていない。
「日付もわかっています。天文五年の三月十七日です」
「ううむ……今川氏輝殿は生来病弱であったと伝え聞いておりますが……二年後に亡くなるとは……。では、今川家の当主は弟の今川彦五郎殿に?」
「いえ、弟の今川彦五郎も同時に死亡するのです」
「そんなバカな!」
これも史実だ。
不審な事極まりないが、今川氏輝の後継者と目されていた弟の今川彦五郎も死亡するのだ。
「謀略の可能性もありますが……。それで、大事なのはここからです。今川氏輝の死後今川家では内乱が起こります」
「後継者争いですか……」
「はい。それが天文五年、再来年です」
その内乱は『
まず僧籍に入っていた
今川義元は死亡した今川氏輝の弟にあたる。
還俗というのはお坊さんになった人が、一般人に戻る事、仏の道から俗世界に戻る事だ。
これに反対した一部の今川家家臣が僧籍に入っていた今川
今川良真たち反対派は、静岡県の中部にある花倉城で挙兵し内乱となった。
最終的には今川義元が勝ち、反対派の今川良真は自害した。
「俺はこの内乱のどさくさに紛れて駿河の一部を奪いたいと思っている」
どさくさ紛れという俺の率直な言葉に板垣さんが苦笑する。
いや、良いんだよ! どさくさ紛れで!
今の武田家の実力じゃ東海の雄今川家を相手に正面から殴り合いは出来ないさ。
「わかりました。内乱に乗じるのであれば、勝算は高いでしょう。北条家との和睦を延長し、諏訪家との和睦を取りまとめれば外交は万全ですな。後は……」
「そうだな。後は武田家家中の今川派、今川家びいきの連中だな」
武田家と言っても必ずしも一枚岩ではない。
特に国境に近い国人衆は隣国からの調略の手が伸びるので、いつ武田家を裏切るかわかったものではない。
プラス材料として、武田家と今川家に婚姻関係はない。
婚姻関係にある家と戦をするのは、戦国時代とは言えあまり……ねえ……。
それが無いというのは、遠慮が無くて良い。
史実では、数年後父武田信虎が今川義元と和睦を結び、俺の姉が今川義元に嫁ぐ。
そして、歴史的な暗君と言われる今川
だが、この世界では父信虎は既になく、姉はここ
おそらく今川家に嫁ぐことは無い。
つまり今川氏真は誕生しない。
俺のせいで、『新たな歴史が、また一ページ』だな。
それよりもだ。
「一番心配なのは
「左様でございますな。あそこは
穴山氏は甲斐国の
一応武田ファミリーの一員で歴史的に婚姻関係を結んで来たけれど、半独立勢力と思って良い。
甲斐国の
現在の山梨県
地形がかなり険しいので交通の便が悪い。
俺たちが駿河の今川家に攻撃を仕掛けている時に、河内の穴山氏に裏切られ後背を突かれるとまずい。
穴山氏はしっかりと抑えておきたい氏族だ。
「今の当主はどうですか?」
「
穴山信友か!
戦国ゲームでは内政よりの優秀な武将だ。
武田四天王よりは落ちるが十分に優秀な人材。
これはしっかり取り込んでおきたい。
「穴山信友と会いたいですね」
「かしこまりました。それでは使者を穴山氏に使わします。あっ! それと御屋形様に面会希望者がおります。当家への仕官が希望です」
「何という人ですか?」
「
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