第16話 先を見通す事、諸葛孔明の如し
――翌日。
俺と
史実と同じく『
結婚式はなかなか盛大であり、とにかく出席者が多かった。
父信虎の葬儀に来ていた人が、そのまま俺達の結婚式にシフトしたからだ。
板垣さんとしては、宣伝効果を狙ったらしい。
父信虎の死によって武田家の屋台骨が揺らいでしまった。
だが、京都の
武田家は何も問題ないぜ! ベイベー!
と内外にアピールするのが狙いらしい。
それと成り行きで、何もしていないとは言え、婚姻前に
早くちゃんとした形にしないと、世間体が悪いだとさ。
板垣さんに小言を言われたよ。
「これはしたり! まさか
「ほら、言うでしょう。『
「それは兵の運用について述べているのであって、女性との付き合いを述べているのではございません」
「ここ笑う所なんだけどなあ」
そんなやり取りがあったが、板垣さんとしては俺と
まあ、武田家ナンバー2としては、当主夫妻が不仲なのは困るよね。
――結婚翌日。
俺は幹部を招集して早速会議を開いた。
会議室は新しい俺の部屋で、十二畳位の部屋だ。
板張りで何もないけどね。
会議の出席者は以下の通り。
武田
名を
この時代、お坊さんも平気で戦に出たり、政治に関わったりするからね。
政教分離とか無いからな。
他にも優秀な人はいるけれど、俺が当主になる前から俺を支持していた連中で実力があるヤツを幹部とした。
みんなで
車座ってのは、円を描く様に座る事ね。
会議冒頭、俺が衝撃的な発言をする。
「来年、
「「「「「「「なっ!」」」」」」」
俺と香の結婚の後で
板垣さんは、目をひん剥いて俺を凝視し、
みんなの動揺が一段落するまで待ち、俺は言葉を続けた。
「これは俺の一芸で知り得た事だ。あくまで父信虎が生きていた場合だが、来年天文四年に武田家は
「ほう。御屋形様の一芸が出ましたか……して、今川家との戦の結果は?」
「負けだな。今川家と婚姻関係にある北条家が武田家に侵攻して来る」
「背後を突かれる訳ですか……」
「そうだな」
「ふむ……御屋形様……確認いたしますが、それは先代の信虎様が生きていた場合の天文四年の話ですな?」
「そうだ。あくまでも父信虎が生きていた場合の天文四年だ」
「ひゃひゃひゃ! ならば話は早い。今は武田家の当主は晴信様じゃ。違う天文四年にすれば良いのじゃ!」
「理解が早くて助かるよ」
俺はニヤリと笑い、
史実では、武田家にとって天文四年は苦難の年だが、今から対策すれば何とか乗り越えられると思う。
今は天文三年の晩秋。
まだ時間はある。
続いて板垣さんが顎に手を当てながら発言した。
「ならば……北条との和平ですな……。婚姻同盟は難しくとも、来年は不戦という事で交渉してみては?」
「そうだね。正直、北条家とはやり合いたくない。
「では、北条家へは私が使者として参りましょう」
板垣さんが行ってくれるか。
それなら安心だ。
「うん、板垣さんお願いします。北条家へのお
さて、これで北条家は大丈夫だろう。
「北条家との外交は板垣に任せれば問題なかろうが、念の為、城の手入れをしておきましょう」
「
「そうですな。ワシが見ておきましょうかの」
本栖城は、富士五湖の
富士山の北側になり、駿河つまり静岡側から攻めて来ても、相模つまり神奈川側から攻めて来ても、本栖城を抑えないと甲府に攻め込めない。
守りの要になる城だ。
「頼みます。基本的に今川家も北条家もこちらから手を出さなければ攻めて来る事はないと思うけど、準備だけはしておきましょう。さて、戦対策はそれで良いとして、問題は干ばつだね」
「「「「「「「……」」」」」」」
みんな黙り込んでしまった。
俺も知識としては干ばつが少雨水不足になる事をしっているけれど、この時代の干ばつがどれ程なのかわからない。
まずは幹部連中の意見を聞きたい。
しばらく待っていると
「御屋形様、よろしいでしょうか?」
「うん。良いよ。自由に発言して」
「はっ。それでは、申し上げます。来年は米の作付けを少なめにして、
おっ! 建設的な意見が出た!
雑穀は
「雑穀なら干ばつでも育ちますか?」
「はい。それに米の作付けを減らせば、水が少なくても米作りが可能かと」
なるほどね。水を入れる水田を絞り込む訳か。
少ない水を沢山の田んぼに流し込んで干上がらせるよりも、少しの田んぼに集中して流し込む方が、米が出来る可能性は高いな。
「それで行きましょう。どれ位を雑穀にするか計算出来る?」
「お任せを!」
それに俺にはネット通販『風林火山』がある。
「俺の方からはサツマイモという干ばつに強いイモを提供できる。それと雑穀ならソバの種も出せる」
「それは大変ありがたいです!」
農業関係の本を読んで知ったのだが、サツマイモとソバは干ばつに割と強いらしい。どれ位育つかは俺も経験がないからわからないが、とにかくやってみよう。
「御屋形様。冬の間に
彼は二十歳なんだが、ナイスミドルな雰囲気をムンムン
「溜池か、良いですね」
干ばつになるにしても、少しでも水を貯めておけば被害が軽減出来るかもしれない。
「冬の間でしたら
「お金の事は気にしないで下さい。何とかします。それと工具を貸し出しますから、人を集めてどんどん工事して下さい」
「承りました」
基本人力工事だけれど、現代の工具を貸し出せば効率化出来るだろう。
コンクリートも出すか。
昨日、香に言われたからな変に
「それから……
「……はっ!」
甘利家は名門家臣だから顔が広い。あちこち出向いて井戸を掘るなら、
井戸掘りの道具は手掘りの井戸掘り工具がネット通販『風林火山』で売っている。それに手動ポンプを組み合わせれば、住民が使う生活用水は確保出来る。
さて、最後は……。
「
「はっ!」
本当に
働いてもらうぞー!
「
「何なりとお申し付けください!」
「
「はあああああああああああ!」
「今まで聞いていただろう? 工事をやるには資金が必要なの。
「出来るかー!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます