第15話 武に勝る事、巴御前の如し
俺の四つの一芸、つまりスキルを香子さんに紹介する。
女神様にお願いして一芸をつけてもらった事を説明すると香子さんは驚いた。
【武田晴信 一芸:鑑定
情報を知る『鑑定』。
大量の荷物を収納できる『
言語を解す『
そして現代日本の物を購入できる『ネット通販』。
俺は女神様と直接話して一芸を決めたが、どうやら彼女は女神様にはあっていないようだ。
それでも彼女は三つ一芸を持っていると言う。
彼女の許可を得て鑑定をしてみる。
「鑑定!」
【
【真実の目 全てを見通し、真実とウソを見分ける】
【
【あげまん 家族や仲間の運気が非常に上がる。特に交際した相手は運気天を突く】
これ凄いな。
幸運女武者タイプかな?
一芸『真実の目』の使い所がイマイチわからないけれど、『
単騎で敵陣に突っ込んで大将首をとって来そうな勢いだ。
「香子さんの一芸もなかなか強力だね。一芸って自分でわかるモノなの?」
「わかるわよ。ハル君の『鑑定』みたいにはわからないけれど、一芸が大体どんな能力なのかは、感覚的にわかるの」
なるほど。そういう物か。俺は『鑑定』があったからか、そういう感覚は無かったな。
しかし、最後の『あげまん』は名前がなあ。そうか、俺は天を突くのか。良かった。
「結婚相手が頼もしくて良かったよ」
「でしょ? ハル君に協力するからさ」
「よろしくお願いします」
「ねえ、ちょっとさあ。いい加減に他人行儀は止めようよ」
いや、さっき会ったばかりなのだが。
「香子さんじゃなくて、香でいいわよ」
いきなり呼び捨てかよ。
ハードル高いな!
「わかった……。か……かおる……」
「よろしい! あのさ、ハル君のネット通販『風林火山』で銃や爆弾を買ったら、すぐに天下統一じゃない?」
それね。
俺もちょっと考えたよ。
でもね、売って無いんだ。
モデルガンは売っているけど、本物の銃は売ってない。
打ち上げ花火はあるけど、火薬は売ってない。
「いや、そうは上手く行かないよ。ネット通販『風林火山』には、銃や爆弾は売ってないんだ。日本のネット通販だからね」
「ふーん、そうなんだ。私が作ろっか?」
「作るってなにを?」
「爆弾」
なんか……過激というかトンデモナイ事をサラっと言ったな。
俺は驚いて思い切り素で返事をした。
「は?」
「私、理系だったから化学の本と爆弾の材料をネット通販で買ってくれたら火薬を作れると思う」
「火薬か……」
火薬の製造は俺も考えた。
今は
史実では天文十二年、1543年、
鉄砲と一緒に火薬も一気に広まる。
香子さんこと香は話を続ける。
どうやら彼女は火薬を作る気満々らしい。
さっきと打って変わって淡々とした口調だが、ジワリと熱を感じる話しぶりだ。
「火薬が出来れば簡単な爆弾は作れると思うの。壺とかに火薬を詰めて火をつければドーンみたいな」
確かに出来るな。
現代兵器のような爆弾は無理でも待ち伏せとか、城攻めなんかでは使えそうだ。
しかし……。
「あのさ。
「香! 旦那さんになるんだから、呼び捨てに慣れてよ」
「じゃ、じゃあ、香!」
「なーに? ハル君」
「火薬に限らないんだけど、現代の物をこの戦国時代に持ち込んで良いのかな?」
「良いに決まってるじゃない! 便利でしょ!」
「まあ、それはそうなんだけとさ」
俺は自分が迷っている事を香に話した。
歴史を変えてしまうかもしれない事、それどころか今俺たちがいる世界は、異世界である可能性がある事。
「戦国時代みたいな異世界にオーバースペックの物を持ち込んで、世界のバランスが崩れやしないかと……。どう思う?」
「あんたバッカじゃないの!」
一刀両断されてしまった。容赦ない。
香の顔には『心底呆れた』と書いてある。
「あのねえ。ハル君の『ネット通販』は女神様に貰った一芸、力なわけでしょう?」
「うん」
「この世界に悪影響が出て不味いなら、女神様がストップかけるわよ!」
ああ、まあそれはそうか。
あれ? 俺考えすぎていた?
香は物凄い剣幕で話を続ける。
「それに歴史が変わるとか言っているけど、そもそもここは異世界っぽいのよね? 私達がいた未来の日本には繋がっていないのでしょう?」
「その確率は高いと思う」
「だったら何も気にすることはないわよ。歴史が変わってある日突然私やハル君が消える訳じゃないし」
「まあ、それは……突然消える事は、なさそうだけど……」
「それにね。私とハル君が転生したら時点で、歴史は変わっているのよ! だったら遠慮しないでバンバン行けばいいのよ!」
「思い切りが良いな……」
流石は一芸:
単騎突撃上等スキル持ちだな。
「だいたいそんな事考えたら頭がおかしくなるわよ。ハル君が考えるべきなのは、この甲斐国が平和で、皆が幸せに暮らせるようにすることでしょう?」
「それは……確かにそうだね!」
ああ、今の香の言葉は俺の心に響いた。
皆が幸せに暮らせる……か。
そうだな。『武田家の歴史を変える事』と『皆が幸せに暮らせる事』この二つを目標にしよう。
「でしょ? だから歴史がどうとか難しく考えなくて良いのよ。」
「そうだな。そうかも、しれないな」
「そうそう。じゃあまずは近くにいる人を幸せにしてみようか? ベッドとあったかくなるお布団買って!」
「あー、はーい」
どうも俺はこれから先、香の尻に敷かれそうな気がしてならない。
おかしいなあ。
俺は泣く子も黙る甲斐の虎武田信玄のはずなんだが。
織田信長でさえビビって貢ぎ物を贈り続けたんだぞ。
香はネット通販の画面を見てベッドを、物色している。
どうやら画面を表示すれば俺以外でも操作出来るんだな。気をつけよう。
「じゃあハル君、これでお会計済ませて」
ダブルベッド 25万円
あったか発熱ベッドパット 1万円
タオルケット 1万円
あったか掛け布団 2万円
らくらく枕 2万円
合計31万円
「ベッド高くない? もうちょい安いのでも良くない?」
「マットレス付きだから、妥当よ。ベッドはあまり安いのだと腰を悪くするわよ。ベッドはこれ! その分お布団は、お手頃価格にしたから」
ダメだ。口じゃ敵わない。
まあ、俺も寝るベッドだし、新婚だし、ここでケチって一生グジグジ言われるのも嫌だし。
「うん……わかった!」
ベッド一式を購入。
和室にダブルベッドがドーンと現れた。
「キャー! やった! ハル君ありがとう! これで寝る時寒くないよ!」
「大事に使おうね。高かったから」
「そう言えばお金ってどうしているの? カードはダメだよね?」
「
「
結局、香と一緒のベッドで寝た。
暖かい布団にくるまりながら、二人て沢山話をした。
色々と迷ったり考え込んでいた俺だったが、香と話して物凄く気持ちが楽になった。
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