周と京一
京一は駅前の大通りをひとりで歩いていた。
時計は持っていないので、正確な時間は分からないが、恐らく三時を過ぎたくらいだろうと予測を立てた。時間も金もまだまだあるし、映画でも見に行くかな、そんなことを考えていると、背後で自分の名前を呼ぶ声がした。
「きょういちー!」
振り向くと、数メートル先に周が息を切らせて立っていた。
「京一、オレ……」
「あ?」
「オレもう……」
周が何かを言いかけたその時、周の後ろ百メートル程向こうから、数人の高校生たちがこちらへ向かって歩いてくるのが、京一には見えた。
高校生グループのうちの一人は、センスの悪い迷彩柄のタンクトップを着ていた。
京一の表情が一瞬曇った。
「周、オレ急いでるからまた後でな」
そう言うと同時に、京一は即座に駆け出した。
「おいっ、京一!」
「おい待てぇ! こらぁぁぁあああーーー!!!!」
周の京一を呼ぶ声は、怒声にかき消された。五、六人の高校生たちが、疾風怒濤の如く周の横を走り過ぎると、京一の後を追いかけていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます