周と京一

 京一は駅前の大通りをひとりで歩いていた。


 時計は持っていないので、正確な時間は分からないが、恐らく三時を過ぎたくらいだろうと予測を立てた。時間も金もまだまだあるし、映画でも見に行くかな、そんなことを考えていると、背後で自分の名前を呼ぶ声がした。


「きょういちー!」


 振り向くと、数メートル先に周が息を切らせて立っていた。


「京一、オレ……」


「あ?」


「オレもう……」


 周が何かを言いかけたその時、周の後ろ百メートル程向こうから、数人の高校生たちがこちらへ向かって歩いてくるのが、京一には見えた。


 高校生グループのうちの一人は、センスの悪い迷彩柄のタンクトップを着ていた。


 京一の表情が一瞬曇った。


「周、オレ急いでるからまた後でな」


 そう言うと同時に、京一は即座に駆け出した。


「おいっ、京一!」


「おい待てぇ! こらぁぁぁあああーーー!!!!」


 周の京一を呼ぶ声は、怒声にかき消された。五、六人の高校生たちが、疾風怒濤の如く周の横を走り過ぎると、京一の後を追いかけていった。

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