第51話 紅の剣と呪いの魔剣 4

 

 軽く夕飯を取り、翌日以降の打合せをする。

なんだかんだ言ってみんな傷があり、体力も完全に回復したわけではない。

明日は一日休みにして、引越しは明後日にしようかと思っている。


「明日は一日みんなで休みにして、明後日引っ越そうと思うんだけど、どう思う?」

「お休みですね! だったら街に遊びに行ってもいいですか!」


 リリアは大きな目を見開き、その瞳から輝きを放っている。


「いいよ。お小遣いもあげるから一日遊んでくるといいよ」

「いやったぁぁぁ!」


 まるで子供の用にはしゃいでいる。


「では、私は引越しの準備でもしていますね」


 セーラもたまには休めばいいのに。

ここ連日家の事ばっかりで大変なんじゃ?


「それじゃぁ休みにならないだろ? 一日くらい休んでもいいんだぞ?」

「……主様、この家を預かる者として、手を抜くことはできないのです」

「そ、そうなんだ……。だったら何か買ってこようか?」

「でしたら、新しいカトラリーセットをお願いします」

「良しきた。明日街に行って探してみるよ」


 明日は一日休み。

なんとなく俺の予定も決まりそうだ。


「……あの。アクトさんにお願いが」


 ニコアが申し訳なさそうに話しかけてきた。


「どうした?」

「この後、私は孤児院に帰りますが、エレインさんをここに泊めてはいただけないでしょうか?」


 よくよく考える。

いきなりニコアのお母さんに似た人が孤児院に行ったら大騒ぎになってしまうかもしれない。

今日はいろいろとあったし、その方がいいのかもな。


「いいよ。明日は休みだし、明日になったらエレインと一緒に孤児院に行ってみるよ」

「ありがとうございます」


 ニコアはボロボロだった服から、家にあったほかの服に着替え孤児院に帰っていく。

俺とリリアも一度宿に戻り、明日の為に早めに休むことにした。


 ベッドで転がる俺の隣でリリアはすでに爆睡している。

リリアの頬にはまだうっすらと傷が残っている。

ダンジョンでついてしまった傷。

何とかこの傷を治せないのだろうか……。


 リリアの頬に手を乗せ、魔力を流してみる。

ダンジョンでも家でも魔力を吸われた。

俺の中にある魔力ってどれくらい残っているのだろうか?


 ぼんやりと手のひらに温かさを感じ、リリアの事を考える。

俺達を守ってくれたリリア。

きっと、リリアがいなければ俺たちは……。


 ありがとう、リリアのおかげで俺たちは生き残ることができた。

今度は俺がみんなを守れるように、もっと強くならないと。


 だんだん目の前が暗くなってくる。

そろそろ限界だ、俺もリリアの隣で夢の世界に旅立っていく。


―― 


「アクト様! 起きてください! 朝です、朝ですよ!」


 リリアの大声でたたき起こされる。

まだ眠い、昼間で寝かせてくれ。

せめて、エレインさんが来るまでは布団の中に……。


 気が付くと布団が宙に舞っており、おまけにリリアも宙に舞っている。

そして、リリアは俺に向かってジャンピングダイブ。


「ぐほぉぉ」

「いい天気です! さぁ、朝ごはんをしっかりと食べて、行きましょう!」


 眠い目をこすりながら顔を洗いに一階に降りる。


「おはようございます。昨夜は遅かったですね、朝ごはん食べるでしょ?」


 シャーリが声をかけてきた。

シャーリにも大分世話になっていたな。

引越しの事を早めに話した方がいいかもしれない。


「あぁ、今日からしばらく休みなんだ。朝ごはんもらえるかな?」

「じゃ、準備しておくわね。ほかの冒険者の皆さんはとっくに出ていったわよ? お寝坊さんね」


 疲れているんです。

魔力も残っていなかったし、結構大変だったんですよ?


 リリアと朝食をとり、一足先に街に出てみる。

街の市場はにぎわっており、いろいろな屋台が出ている。


「アクト様、あれなんでしょうか!」


 走っていくリリア。

そういえばこうしてゆっくりすることはあまりなかったな。


「あー、あれは雑貨屋だな。ダンジョンからの発掘品とか誰かの使ったアイテムの中品とかいろいろあるぞ。覗いて見るか?」

「はいっ!」


 露店を見てみると、なんだかよくわからないものが所狭しと並んでいる。


「こ、これは!」


 リリアが何かを見つけたようだ。


「なんだそれ?」

「アクト様、これはかなりのレア品ですよ。ここを押すと、ほら! 音が鳴ります!」


『ぐぇぇぇぇぇ』


 ……。

いや、ただのおもちゃだろ? しかも、何そのデザイン。

人なの? モンスターなの? 植物なの?

その鳴き声も可愛くないし……。


「買ってもいいですか?」

「……ほしいのか?」


 きらきらした目で俺を見てくる。

何の役に立つのだろうか?


「はぁ……。おじさん、これいくら?」

「百」


 高い! なんだその金額は。

このガラクタに、その金額はちょっと――。


 リリアの瞳からキラキラ光線が放たれる。

俺はその光線に負けてしまった。


「ありがとうございます!」

『ぐえぇぇぇぇぇぇ』

「あまり無駄使いするなよ?」

「わかっています! でも、これは絶対にレア品ですよ!」


 レア品の定義がわからない。

串焼きを食べ、他にも屋台でいろいろと飲んでは食べる。


「俺はそろそろエレインさんと孤児院に行ってくるよ。夕方には宿に帰るんだぞ」

「わっかりましたー! あー、あれは――」


 リリアは何かを見つけたようで、人ごみの中に消えていった。

結構はしゃいでいたけど、大丈夫だろうか……。


 エレインを合流するため、一度宿に戻る。

帰る途中、アクセサリーを売るお店で何点か購入。

みんなにプレゼントを買ってみる。


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