第10話 二人の生活と特訓 2


 ダンジョンから脱出し、何とかギルドに戻ってきた。

リリアも一緒に受付に行くが、フィーネさんの目が怖い。


「……なんですか、その怪我は。それに、こちらの方は?」


 どう説明したらいいのか? 何から説明したらいいのか?


「えっと、ダンジョンでウルフに……」


――バターン!


「なんで一階層よりも下に行くんですか! あれほど無茶はしないように、お話ししましたよね!」


 すごい剣幕で怒られている。

いえ、一階層にしか行っていませんよ?


「フィーネさん、まぁまぁ落ち着いて」


 後ろから声をかけられた。

はて、こちらの方って……。


「良かったな、何とか生き残って。ウルフから無事に逃げることができたんだな」


 俺に話しかけてきたのは見覚えのある冒険者。

さっきダンジョンで走っていった人たちだ。


「あ、さっきの……」

「悪かったな、見捨てるような真似して。でも、みんな助かってよかった」

「いえ、実はあの後ウルフと戦闘になりまして……」


 一瞬カウンターが静かになる。


「倒したのか?」

「何とか。リリアに助けてもらって」


 みんなの視線がリリアに移る。

リリアは口を開かず、愛想笑い中。


「この子が? ところでこの子って?」

「えっと、パーティーメンバーです。ダンジョンで一緒になって……」


 フィーネさんはまじまじとリリアを見ている。


「リリアさん? ギルドに登録している?」


 首を横に振るリリア。

なぜか、口を開かないようだ。


「あー、リリアは登録していない。しないとダメですか?」

「うーん、しなくてもいいけど、ランク設定とか、クエストの受注とかできないわよ?」

「だったら多分大丈夫です。クエストの受注とかは俺がやるので」

「そうですか、もめたりしないようにしてくださいね。登録はいつでもできますから」

「わかりました」


 ウルフの事を話し、走っていった冒険者の人はすぐに仲間の元に行ってしまった。

あの人たちも初心者らしく、冒険者に登録して日が浅いらしい。

換金も無事に終わり、少しだけ懐が潤った。


 帰ろうとしたとき、フィーネさんに声をかけられる。


「アクトさん。その子、リリアさんでしたっけ」

「はい、リリアが何か?」

「その、少し言いにくいんだけど、着替えとかないのかしら?」


 リリアへ視線を移す。


 太ももが見えるくらいに切れてしまったワンピースっぽい服はボロボロ。

片足は足の付け根くらいまで見えそうになっている。

それに肩の部分も大きく裂けており、肩が丸見え。


 おまけに髪もボサボサ、汚れ切っている顔。

手にはボロボロの鞘に入ったナイフのみ持っている。


「……着替え、ですか」

「大きなお世話かもしれないのですが、一緒にダンジョンへ行ったのですよね?」

「はい、まぁそうです」

「アクトさんもリリアさんも少し装備を見直しては?」


 リリアの服も俺の武器も何とかしたほうがよさそうだ。


「わかりました。さっき換金して少しお金があるので、今から行ってきます!」


 俺はリリアの手を取り、ギルドを後にする。


「アクトさん! 明日も待ってますよ!」

「わかりました! ありがとうございます!」


 こうして俺のダンジョン攻略二日目は無事に終わりを告げた。


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