第2話 冒険の始まりと出会い 2


「おっと、そこの初心者さん? 大丈夫か?」

「俺、ですか?」

「あぁ。お前初心者だろ? 装備を見ればわかる。俺も冒険者だ」

「ありがとうございます。助かりました」


 俺は名も知らない優しい冒険者に肩を借り、ダンジョンの出口を目指す。


「ほら、そろそろ出口だ。もう、一人で帰れるな?」

「はい、ありがとうございました。この恩は忘れません。是非、お名前を……」

「なーに、名乗るほどのもんじゃない。明日も、頑張れよ」


 その冒険者は名を名乗らず、俺の前から消えていった。

優しい冒険者もいるんだな……。


 何とかギルドに戻ってきた俺は、クエストの受付票と魔石をバッグから出す。


「おめでとうございます、クリアですね。明日からはFランク冒険者として頑張ってください!」

「ありがとうございます!」

「それではカードを更新しますので、カードを」


 職員さんにカードを渡し、しばらく待つ。

もらったギルドカードから初心者の記号が消えた。

代わりに現れたのがFランク。これで俺も冒険者と名乗ることができるようになった。


「それでは魔石の換金は隣のカウンターでお願いしますね。あと、教会に行って冒険者の洗礼を受けてください」

「洗礼?」

「はい。冒険者は皆、必ず洗礼を受けます。無事に帰ってこれるように。あと、まれにですがスキルを授かる事がありますね。詳しくは教会で聞いてみてください」

「わかりました、ありがとうございます」


 隣のカウンターで魔石を換金する。

それなりの金額になった。これで数日は食べることはできるだろう。

だが、お金をしまおうとしたときに、気が付いた。


 ない。ナイフが無い。いくら探しても無い。

おかしい、さっきまで腰に差しておいたのに、鞘しかない。

まさか、どこかで落としたのか?


「えっと、ナイフ知りませんか?」

「ナイフですか?」


 カウンターにいた職員さんが俺をじろじろと見ている。


「装備しているようには見えませんし、ギルド内にも落ちていないようですね。もしかしてダンジョンで落とされました?」


 血の気が引く。もしかしてダンジョンに落としてしまったのだろうか……。

初日からいきなり武器無しになってしまうとは、まったくついていない。


「多分、ダンジョンに落としたのかもしれません」

「だとすると、もう手元には戻ってこないでしょうね。他の冒険者に拾われていると思いますよ」

「そう、ですか……」


 換金したお金をバッグに入れ今後の事を考える。

宿にはまだ数日いることができる。

明日からの探索を考えると、武器や回復薬が必要だ。


 ギルドのカウンター横で悩んでいると職員の方が声をかけてくれた。


「初日から武器をなくすなんて、運がなかったわね」


 初めて登録したときにお世話になった職員の方。


「ははっ、まぁ……」


 愛想笑いしかできない。


「ここ、結構安くていいもの売っているから行ってみて。私からの紹介っていえば、おまけしてくれるかも」

「いいんですか?」

「冒険者をサポートするのが、私の仕事。めげないで頑張ってね」

「ありがとうございます! 助かります! えっと……」

「私はフィーネ。頑張ってねアクトさん」


 笑顔で俺を応援してくれるフィーネさん。

美人だし、優しいし、いろいろと教えてくれるし。

ありがたいな、本当にありがたい。


 少し落ち込んでいたけど、前を向いていかないと!

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