【第一部完結】武具に宿った魂を具現化したらいつの間にか最強パーティーに! ~具現化した武器っ娘とダンジョン攻略。武器にも乙女心があるんです~(仮)

紅狐(べにきつね)

第1話 冒険の始まりと出会い 1


 迷宮都市『エミール』。

多くの人が集まり、多くの冒険者が住む町。


 高くそびえ立つ外壁に囲われ、町の中心には地下迷宮のダンジョンがある。

ダンジョンは多くの冒険者を魅了し、そして多くの冒険者を亡き者にしてきた。

だが、それでも多くの冒険者を命を懸けてダンジョンに挑戦している……。


――


「よ、よろしこ願いします!」


 初めてギルドに登録にしに来たが、いきなり噛んでしまった。


「ふふっ、初めての方ですね。まずはこちらで登録しますね」


 受付をしてくれた女性の方は笑顔で俺を冒険者として登録してくれた。

緒注意と換金方法、それに冒険者としての心得。


「では最後にこちらへ血を一滴お願いします。ちょっとだけちくっとしますね」


 目の前にあるカードに血を一滴垂らす。

勝手に文字が浮かび上がってきて、何か色々と書かれているようだ。


「はい、これで登録は終わりですね。隣のカウンターから初心者クエストを受けてください。絶対に一階層よりも下に行ってはいけませんよ?」

「大丈夫です、クエストをしっかりと終わらせてきますよ」


 俺は、隣のカウンターからクエストを受け取り、ギルド内で中身を確認。

ラビットの魔石回収。そんなに難しくはないな。


 ギルドを出る前に装備の確認をする。

薄手のマントに回復薬、それにナイフが一本。

バッグには初心者クエストの受付票、大丈夫、忘れ物はない。


 俺の冒険が今日から始まる!

俺は意気揚々と街の中心にあるダンジョンへ足を向け、ギルドを後にする。


「では行ってきます!」

「頑張ってくださいね。くれぐれも無理はしないように」


 ギルドの扉を開け、冒険者としての一歩を歩き出した。


 アクトがいなくなったその直後。

ギルド内に併設している酒場で二人の男がアクトの背中を眺めていた。


「……初心者だな、どうする?」

「ま、洗礼は必要だよな? 俺達だって昔はよ」

「じゃ、ちょろっと行ってきますかね」

「監視員には気をつけろよ」

「わかってるって」


 男が二人、何やら怪しい話をしている。

酒場にいた男が一人、初心者と思われる少年の後を追う。

初心者キラー。どこの世界にもそんな奴らは存在するのだ。


――


 エミールから離れた山奥でじーさんと二人で暮らしていた。

そのじーさんに色々と教わって、何とか生きていく術を身に着けた。

だけど、そのじーさんも年には勝てない。

じーさんの遺言通り、山奥からこの都市で冒険者になった。


 格安の宿を借り、冒険者に無事登録も終わった。

そして、今日から俺は冒険者として生きていくことになる。


 ダンジョン一階層。

モンスターも強くなく、クエストもなんとかクリアできそう。

クエストはラビットの魔石十個を集めて持っていくだけ。


 山奥ではもっと大きな獲物を狩りしていたからウサギくらい簡単だ。

と、思っていたがなかなか難しい。

山にいたラビットとモンスターのラビットではここまで違うのか。


 年季の入っていたナイフを手に持ち、一人でラビットを狩る。

ふと気が付くと、ラビットの群れに囲まれてしまっていた。


「十匹以上……。まずい、俺にやれるかな?」


 肩で息をしながら、ラビットと距離を取り、後退しながらラビットの数を減らしていく。

しかし、後退する方向を間違った。

だんだんダンジョンの奥の方に移動してしまっていたのだ。


「まずいな、そろそろ戻らないと……」


 右手に握ったナイフがラビットの胸に突き刺さる。

一匹一匹はそんなに強くないが、数が多い。


「はぁはぁはぁ……。なんとか、なった……」


 魔石を回収し、フラフラしながら入り口を目指す。

足が重い。腕に力が、入らない……。


 初日で、しかもこんなところで倒れるのか?

次第に俺の視界はかすんでいった……。

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