Tips.漂着記録

 西暦2030年09月11日


 記録者“不明”


 本記録は外部から持ち込まれた資料であり、記載内容の真偽は不明。また、村長姉妹の許可なく閲覧する事を禁じます。






 個体名:Sophie Kirshbaum

 ※以降、ソフィアと記載

 享年:17歳前後と推定


 種族…人間⏩吸血鬼

 年齢…267歳

(※吸血鬼に変成してから経過した年月)

 生殖能力…有(多種族の出産経験多数)

 収容区画…第4区他

 危険性 …safety(安全及び友好的)


 特異性…

 ・吸血衝動

 ・身体強化

 ・不死性(仮)

 ・性別不問の魅了(加虐心及び性的興奮の誘発)



 個体名は城跡の記録帳簿にあったSophie、発見場所であるkirshbaum城を繋ぎあわせたものである。

 西暦1962年、ルーマニア領山岳部深層に残っていた半ば倒壊したKirshbaum城にて発見、同年当該施設への第7区画へ収監。

 人体実験により後天的に吸血鬼としての特性を一部発現させた一般人と断定。

 温厚な性格と環境適応能力の高さ、指示への従順な姿勢もあり、収監から半年後に第4区へと転区する事が決定。

 翌年、本人と複数の施設職員並び、テネリフェ博士の強い要望により収監対象兼施設職員という扱いに変更。


 他人とのコミュニケーションを楽しんでいる節が強く、第4区をはじめとした職員休憩所で職員と談笑している姿を度々見かける事ができる。

 また、夜間稀に異性職員と性行為にふける姿も確認されている。

 性別を問わず、彼女と性行為を行った職員は12時間以内に彼女と共に衛生管理区画にて精密検査を受ける事。


 彼女と接触、コミュニケーションを図る際には左目を注視しないこと。加えて、火傷痕への素手による接触を避けること。

 過去に変質したソフィアの左目に強い興味を示した職員が左目を注視し、彼女の同意を得た上で火傷痕へ接触。接触直後、職員は彼女をその場で押し倒し衣服を乱雑に引き裂くと、強引な性交渉へ移ろうとした。それを制止ししようとした周囲の職員をはね除け彼女への強引な性交渉を行った事例が存在する。

 本事件においてソフィアは自身を強姦した職員を咎める事もなく、その処罰も求めなかった。


 本事件の後、テネリフェ博士主導の下、男性職員5名女性職員5名で行われた実験記録がある。

 四方を特殊強化硝子で囲った密室にソフィアと職員を対面させる。先の職員同様に彼女の左目を一分間程注視させた。その時点での心理状況を報告、後に再度左目を一分間程注視させ火傷痕へ接触を促した。

 男女共に左目を注視しただけでは、彼女に強い劣情を抱くだけで収まったが、火傷痕に触れた途端に自制が全く効かない状態に陥ったとの証言を10名全員から受けている。

 男性職員は全員が対象への暴行を与えた上での強姦を行い、女性職員は濃密な愛撫をソフィアに対して行う結果となった。

 何れも彼女は抵抗すること無くなされるがままにしており、後日謝罪に向かった職員全員を許し、その日の昼食を共にしたという。

 余談ではあるが長年勃起機能不全を患っていた博士が彼女の左目を注視し、完全な勃起をしたと記録が残されている。

 後に博士は強引な性行為を6時間に渡り繰り広げた為、機関上層部より1ヶ月の彼女への接触禁止処分を受けている。

 本件も彼女は咎めはしなかったものの博士との子供を身籠り9ヵ月後に出産、産まれた子供は順調に成長し、18年経った今では現在は機関の亜人収容研究区画で従事している。



 他の収容物へ職員が接触する際の護衛を主な職務とする。

 過去、バベル博士によって彼女の同意無く、他の収容物相手の強制的な性交、妊娠と出産をさせられた結果も多数記録されている。変異し巨大化したジガバチ相手に托卵され、後日羽化した幼体に肉体や体液を貪られるなどの陰惨な記録が大半であるために興味本意での閲覧は非推奨とする。

 彼女に実験の詳細を訪ねると詳細を軽く話してくれるが、内容が内容なので微妙な雰囲気になりやすい。よってこちらも非推奨。

 妊娠から出産までの過程や産まれた個体については博士の個人サーバー(封鎖済み)に記録されている。当該記録を閲覧するには2名以上で必ず彼女の目の届かない所で行い、閲覧後3時間以内に精神鑑定を受けることが義務付けられています。


 顔面左側の大きな火傷痕と変質した左目を除けば一般的な10代後半の少女としての体を成している。

 正式に職員とする際に行った健康診断では各種臓器をレントゲンで確認することは出来ず、クロス医師主導で開腹手術(同意済み)が行われた。摘出された臓器は何れも質量0ngという奇妙な記録が残されている。摘出された臓器は拍動を続け、損傷を与えると灰となり消滅し、体内で元通りに復元されていたと記録されている。

 クロス医師は彼女の心臓を摘出し、人工心臓に置換した。

 術後一週間、特に変化は起きなかった。しかし後日、摘出した心臓への血液供給を停止し、詳細な解剖を行おうとした際に心臓は灰となり、それと同時に施設内で談笑していた彼女も灰となって霧散した。

 本現象が確認されてから1時間後、第4区画に保管されていたkirshbaum城跡より持ち出した鋸鉈の近くで昏睡状態の彼女が確認された。当時の記憶の有無を尋ねた所、心臓に鋭い痛みを感じた後、急速に意識が遠退き気が付くと第4区画に居たとの事である。


 10代後半の外観とは裏腹にその筋力は高い。職員と遊びの一貫で、車庫に停めていた機関所有の装甲車(60t相当)を片手で移動させて見せ、その際には「映像記録にあった民間旅客機?とか引っ張れそうだよ」と上機嫌に笑っていたとの証言がある。

 尚、彼女を含め、装甲車で遊んだ職員8名には装甲車3台の清掃作業という処罰が与えられた。

 本来睡眠や食事をとらなくとも大した問題はないが、人間らしさを無くしたくないとの理由で1日3~8時間の睡眠を取り三食必ず食べる様にしている。お気に入りの食事はケチャップライスとトマトジュース。

 肉体の耐久性は通常の人間よりは丈夫ではあるが、感覚器官は通常の人間と同じであるため本人が許容したとしても無謀な実験の要請は極力避けること。

 また、kirshbaum城跡より彼女が持ち込んだ鋸鉈(血液等で錆び付いているが刃溢れはない)は全長170cm重量が156kgにもなる大物であり、これを軽々と振り回し戦闘を行った記録も残されている。



 戦闘記録 film1


 当機関の調査団18名が彼女と接触し、城跡の裏手に存在した墓標群にて多数の吸血鬼に襲撃された際の記録映像。

 閲覧する際には心的外傷後ストレス障害を抱える危険性を留意した上で閲覧すること。


 上記記録はkirshbaum城跡裏手に存在した墓標群(城内の遺体を彼女が弔った跡。総数2,095)にて機関調査団18名の内、6名が彼女の承諾無く墓を暴き遺体の杭を抜いたことに端を発する事件である。

 彼女が調査団12名に城内を案内し、玄関口へ戻った際に場外より悲鳴と銃声を確認。現場へ急行すると腐乱した死体が職員へと襲いかかっていた為、やむを得ず応戦。

 腐乱した死体は全て吸血鬼であり、これらは彼女の姿を確認すると即座に殺到した。彼女はこれを迎撃するも吸血鬼の数が多く、下腹部や首筋、肩口や前腕部等を齧られ抉られながらも応戦を続けた。しかし20近い吸血鬼に殺到され一度、臓物を食散らかされ沈黙した後に霧散している。

 彼女の死亡後は調査団へ再度襲撃、一時間程経過した後に無傷の彼女が鋸鉈を手に戦線へ復帰し、吸血鬼群を一掃。手負いの調査団を心配したのか彼女はkirshbaum城跡からの脱出幇助を提案、調査団はそれを受け入れ駐屯地へ帰投。彼女に対し、駐屯地にて改めて調査団と本機関の説明を行い同行を嘆願。

 本人に承諾された後に機関本部へと帰投し、手続きの後正式に収監。

 死亡した調査団は六名。回収した吸血鬼の遺骸はどれも指先に噛みつかれた後が確認されており、ソフィアの歯形と一致している。本人に確認したところ、最後を看取った者がその遺体の指を噛み、

 その血を舐めさせるのがkirshbaum城の伝統だったのだという。彼女は城主が亡くなった後も城内で亡くなった者を埋葬する度、律儀にその伝統を守ったとの事。自らが弔った者達の名前は全て記憶しているらしく、回収された吸血鬼の遺体全ての火葬が終わるまで、彼女は一度たりとも火葬場を離れることはなかった。




 過去、絶食不眠実験を行った際には1ヶ月を越えた辺りで弱い吸血衝動を常に感じ、2ヶ月目に入ると強烈な吸血衝動を覚えたという。

 不眠1ヶ月目に感じた吸血衝動は、概ね4日に一度のペースで他の職員と意図的に左目を合わせることで自身を襲わせ性的快楽を貪ることで誤魔化していた。しかし2ヶ月目になると毎日性行為を行うようになり、衛生管理区画で1日を過ごすようになる。3ヶ月目になると所構わず職員と性行為にふけるようになり、多数の職員が業務を疎かにしてしまうなどの多大な影響が出始めた為実験を終了した。


 なぜ吸血行為を行わなかったのか彼女に質問したところ「人から血を吸ってしまえば楽になるのは本能的にわかっていた。けれど吸血行為をしてしまえば私の中にある人として大切なものを失うという確信があった。私はここが好きだし、皆が好きだから血を吸いたくなかった。本物の吸血鬼に成り果てるくらいなら色狂い扱いされた方がマシだと思った。その為に誘惑し、性行為に付き合わせたみんなには申し訳なく思っている」と涙ながらに答えた。何故、吸血行為の代替手段として性行為を取ったかについてだがこれについては不明。

 吸血鬼の近似種である婬魔サキュバス/インキュバスが性行為によって栄養を得ているという結果は存在している。しかし彼女は後天的吸血鬼であり婬魔の特徴は何一つとして持ち合わせていない。

 また、彼女は別に性行為が特別好きなわけではないらしい。




 以下本実験結果に対するテネリフェ博士の考察。


 血液を魂の成分として仮定した場合、吸血行為は他者の魂を取り込み自身の魂を永らえる為の手段ではないかと思われる。そこに吸血鬼の怪物性を感じる為に彼女は吸血行為を忌避していると考えられる。

 この仮定が正しければ婬魔は体液から精気を得る事で自身の精気を永らえさせているとも考えられる。

 血液と体液、本質的に得られるものが同じ或いは非常に近似している為、彼女は代替手段として性行為を選らんだのではないかというのが私の考察である。


 私自身も彼女と39回ほど性行為に及んだが、どれも非常に官能的な体験であった。長年患っていた勃起機能不全症も完治している、継続的に性行為を行う事で私の生殖能力も向上する可能性を強く感じた。その可能性を検証するためにも彼女との性行為の必要性を強く私は感じている。


「その様な下らない目的での性行為実験は認めない。彼女との性行為に傾倒する様であれば、彼女との接触を禁止する事も考慮しているので留意されたし。

 機関長代理」

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