第9話 裏山の怪その2
「…………………………………っっ!!
ううっっ!!いててて………。」
……一瞬自分のいる場所がわからなくなる。
…ああ、そうか…。
何か様子がおかしい細田の後を追っかけている途中で足を滑らせて………。
俺は山の斜面の途中で木に引っ掛かっていて、下を流れる沢までは落っこちずに済んだようだ。
……上を見上げると、数十m程上に元いた道があるみたいだ。
辺りはすっかり暗くなっており、少しの間気を失っていたらしい。
……あちこち打ってはいるけど、折れている箇所はないみたいだな。
痛みに顔をしかめながら、ゆっくりと立ち上がった。
……とにかく、上の道まで戻らないと。
そう思って斜面をゆっくりと登っていたその時、
………ん??何だ?
今何か小さな影が木々の間を横切っていったような。
「……フフフフフ……。」
どこからともなく女性の笑い声がする。
「だ、誰かいるのか?」
動揺して声を震わせながら、尋ねる。
「…あなたも私の子供におなりなさいな……。」
ふと、気配を感じて足元に目をやると、おかっぱの薄汚れた日本人形がニタァッとこちらに笑いかけている。
「……ひぃっっっ!!」
俺は思わず変な声を漏らし、尻餅をついて後ずさる。
「ね~んね~んこ~ろりや~、おこおろ~り~や~…。」
先程の女の声が唄ったか、と思った次の瞬間、俺は突然眠気を催してその場に崩れ落ちた。
◆ ◆ ◆ ◆
……ホウーーッ!ホウーーッ!ホウーーッ!
……ホウーーッ!ホウーーッ!ホウーーッ!
……………。
……何処かでフクロウのような鳴き声が聞こえる。
………んんんっっ。
目を
「と~おりゃんせ~、とおりゃんせ~…。」
と、子供達の遊ぶ声が聞こえてきた。
声のする方へと歩いていくと、薄い月明かりの下、薄汚れた不気味な複数の日本人形達とどこか焦点のあっていない細田のような顔をした人形とが、手を
……人形が動いて歌っているだって!?
心霊現象を余り信じていない俺でも、さすがに驚きと恐怖とでその場に硬直してしまう。
……そんな俺の肩に何者かが背後から両手を乗せて、
「……これであなた達も私の子供になるのね……。」
と、俺の耳元で嬉しそうに呟いた……。
◆ ◆ ◆ ◆
後日の事。
「ねえねえ聞いたーー?何かB組の神谷君と細田君、揃って一週間前から行方不明なんだって~!」
茶髪を肩まで伸ばしたギャル系の女生徒が、金髪にゆるふわカールの女生徒に語りかける。
「ああ~~。何かそんなんあったねぇ~~。でぇ、それがどした~~?」
「ほらほら、こないだ用務員のおいちゃんがゆってたっしょー。何かー、100年とか200年とか前にー、子供流産しちゃった女の人がー、
ぜつぼーしちゃってー、裏山でー首吊りーー?みたいなー?」
「ああ~~、何かゆってたねぇ~。でぇ~?」
「だっからーー!神谷君と細田君、ひょっとしてー、その女の人の幽霊にー、神隠しされちゃったーとかー??」
「ええ~!?あり得なくね~~??マジ受ける~~!!」
女生徒二人はげらげらと笑い転げた。
………それが真実だとも知らずに……。
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