第19話

 二階へ到着した。


 一階とは違い、殺風景ではなかった。


 部屋に石像が五体置かれていた。何をかたどった石像なのかは、分からない。角の生えた狼の石像だとか、鳥頭の人型の石像だとか、見たことのない生物の石像ばかりだ。

 たぶん、モンスターの石像だと思うんだが。


 どこに罠があるかはパッと見て分からなかった。


「ここの罠は見ての通りあの石像だ。あれに触ったら石像が動き出して、モンスターになる。俺たちは三回来てんだけど、最初は馬鹿があれに何の躊躇もせずに触りやがって、死にやがった」

「僕たちは何とか逃げたんだけどね。まあ、一回死んじゃって魂力を失っちゃったんだけど」


 あ、あの石像罠だったのか。

 これ下手したら、触ってたかもしれんな俺の場合。だって何か気になるし。


 冷静に考えて、罠があるという塔で不用意にあれに触るのは、確かに馬鹿なんだけどな……


「あ、あれ罠なんですか……わたし言われなかったら触るところでしたよ」

「そ、そうか……君はなるべく僕たちの話を聞いた後、行動してほしいな」


 ビッツがひきつった笑顔を浮かべてお願いした。


 俺も勝手に行動しない方がいいかもな。


 二階にあった石像は全てスルーして、三階へと向かう。

 石像は特に道を塞ぐように立っていたわけではなかったので、あっさり三階へ行くことが出来た。


「三階から少し難しくなるんだ。二階までは一個ずつしか罠がなかったけど、次からは複数罠がある。分かりやすい罠にはかからないと思うけど、気を付けてくれ」


 ガジットがそう警告した。


 一階、二階の感じがそのまま続くのなら楽勝だったが、次からは複雑になるか。気を引き締めて進む必要があるな。


 三階に入ると目の前に壁があった。

 天井まである壁だ。左方向にも同じく壁があり、右側に進むことが出来る。


「ここは迷路になっているんだ。俺たちも完全に順路を記憶しているわけではないから、間違っちまっても責めないでくれよ」


 迷路か。面倒そうだな。

 結構広いので、次の階まで行くのに時間がかかるかもしれない。


 迷路だと聞いてブロズが感想を言った。


「この迷路に罠が設置されているとなると、結構厄介だね」

「で、ですねー。その辺にある物を不用意に触らないようにしないといけません」


 セリアは自制を心掛けたようだ。俺も慎重に行動をしよう。興味があれば、考える前に行動する時があるからな。


 ガジットとビッツを先頭に、俺たちは迷路を進む。右側に進むと真っすぐ進む道と、左に進む分かれ道があった。二人は悩まず左側に進む。序盤なので覚えているのだろう。


 壁に何か魔法陣みたいなものが書かれおり、これは絶対に触るなと言った。なるほど、これは分かりやすい罠だな。


 歩いていると足元に気を付けるよう言われた。よく見ると、糸が張られているようだ。


 ただこれは引っかかっても、そこまで強い奴は出てこないらしい。ただ、一階のモンスターほど弱くはないので、現在メンバーで倒せるかどうかは、怪しいようだ。


 話し合った結果、最終的に倒してみることに決定し、糸を切って罠を作動させた。


 天井に穴が開いて、そこから銀で出来た謎の浮遊する奴が、五体出てきた。形は魚みたいで、宙を泳ぐ銀の魚と言ったところか。名前はシルバーフィッシュと言うらしい。


 話の通り厄介な敵だった。


 シルバーフィッシュは、黒い液体を吐いてきて、目つぶしをしてくるという特徴があった。俺の顔に放ってきたが、何とか回避した。ぷかぷか浮いてて、結構素早い上に、大きさも小さかったので、かなり攻撃を当てにくかった。


 ただ、俺は結構器用な面もあるので、動きが読めるようになったら、当てられるようになった。シラファも同じく当てられるようになり、倒した。セリアとブロズは攻撃を当てることが出来ず、ずっと回避されたため、シルバーフィッシュを倒すことが出来なかった。


 ビッツとガジットの二人は、堅実に一体づつ倒した。戦うところを初めて見たが、魂力が俺たちより多いのか、動きの速さは二人の方が上であった。


 結果、ビッツとガジットがそれぞれ一体ずつ、俺が一体、シラファが二体倒して、全部倒すことに成功した。


「あー、また倒せなかったですー。相性悪いのしか出てこないですね、この塔はー」


 シルバーフィッシュも倒せなかったセリアが、しかめっ面で嘆いた。


「お、こいつら魂石持ちじゃないか。三つ落ちてるぞ」


 とビッツがそう言った。床を見てみると、白い魂石が三つ地面に転がっていた。


「誰が倒したシルバーフィッシュから出たか分からないし、俺たちが一個貰って、シラファとスレイがそれぞれ一個って感じで分けよう」


 ガジットの提案に不満はなかった。俺は一個拾い、魂石を食べようとする。


「おっと、食べない方がいいかもしれないぞ。君たち来たばかりで、あんまりルバを持ってないだろ? 魂石はそれなりの値段で売れるし、ルバのないうちは売った方がいいと思うぞ」


 そう言われて、俺とシラファは食べるのをやめた。

 確かにこれからルバは稼いでおきたいので、食べるのはやめた方がいいかもしれない。


 俺は魂石を袋にしまった。シラファも同じ判断をしたようだ。

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失格王子の成り上がり冒険譚~出来損ないはいらないと王家を追い出された俺、規格外の『器』で世界最強の冒険者になる~ 未来人A @abcddi23

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