第18話
からくりの塔は、そんなに高い塔ではなかった。
決して低いというわけではないが。俺がちょっと前まで暮らしていた、王城にはもっと高い塔があったので、そう思うのかもしれない。高さはないが、広さは結構あるようだ。
外見は普通の石造りの塔に見える。特に壁に模様がはいったりもしておらず、シンプルな塔だ。
「この塔には六人しか入れねーから、先に誰かが挑戦していたら、中に入れなくなっちまうんだ」
「そうなると、出てくるのを待つしかないのか?」
「ああ。まあ、ファースト・シティは小さい町だから、誰かが挑戦しに行ったら、噂くらいは出るが、聞いていないし。仮に挑戦者がいたとしても、そんなに時間はかかる場所じゃないから、長時間待たされることにはならないと思うけどな」
時間がかからない場所でも、中でグダグダやる可能性もあるし、長時間待たされることになったら面倒だ。
食料もあんまりないし。
「とにかく中に入ってみよう」
ガジットとビッツが中に入って行き、俺たちはそのあとに続いた。
全員入る事が出来たので、先にレッドエリアに入っていた冒険者は、誰もいなかったようだ。
中には何もなかった。殺風景な場所で、上階に続く階段があるだけである。
ここだけ見ると、俺なら油断して何の気なしに先に進もうとすると思う。
「えーと一階の罠は……中央少し右の床を踏んでしまうと、モンスターが出てくるんだったな」
中央少し右の床を確認してみる。何の変哲のない床だ。色が変わっているわけではなく、そこだけちょっと出ていたりもしていない。
こんなの初見で罠だと見破るのは、難しいだろう。
「これ初めて入った人は気付かないですよー」
「そうだ。こういう、分かりづらい罠にかかった場合、出てくるのはそんなに強くないモンスターなんだ。だからわざと踏む場合もあるぜ。モンスターを倒せば、魂力になるからな」
ガジットが説明し、そのあとビッツが「どうする?」と尋ねてきた。
あえて踏んでみるかどうかを尋ねているのだろう。
「魂力は集めたいし、ここは踏んだ方がいいと思う」
「えー、なるべく戦いは避けたいですよー」
「俺も戦いたくはないけど、魂力は集めたいし、踏んでみるのもいいと思う」
「その二人の言葉が信用できるという根拠はない。ただ別に強いモンスターが来ようと倒せるから、私はどっちでもいい」
それぞれ意見を言った。
シラファは相変わらず二人を信用していないようだ。そして、相変わらず自信家である。
「うーん、わたし以外賛成ですかー。確かに強くなった方がこの先やりやすいのは、間違いないですしー。踏んだ方がいいんですかねー」
セリアも渋々と言った感じだが、踏むのに賛成した。
踏む役目はビッツがやる。真ん中少し右の床を踏むと「カチ」と音が鳴り、その直後、「ブ――――!!」という轟音が部屋に鳴り響いた。
『侵入者! 侵入者! 撃退せよ!』
人間の声なのかどうなのか疑問に思う、不思議な声が部屋に鳴り響き、黒い靄が発生。
その直後、モンスターが出現した。
全身が銀色の金属で出来ている大型の犬だった。それが五体同時に沸いた。
「シルバードッグだ。あんまり強くはないが油断はするなよ」
見た目的にはそんなに弱そうには見えないけど、結構弱いのだろか。硬そうだし正直剣で攻撃したくないけど、ここはするしかないだろう。俺だけ戦いに参加しないというわけにもいかない。
俺は剣を構え、先制攻撃をした。
シルバードッグの首を斬りつける。
あっさりと首が斬れて、頭が地面に落ちた。
シルバードッグは死亡して、魂力となり俺に吸収される。
あれ? こいつこの見た目で意外と柔らかいのか?
というより、俺の剣速が上がったおかげで、金属でもあっさりと切れるようになったのだろうか?
ブロズとシラファも、あっさりとシルバードックを倒して行く。セリアの矢は流石に突き刺さらず、倒すことは出来なかった。
五体のシルバードックはあっさりと倒しきった。ガジットとビッツの言葉は正しかったようだな。
「ちょっとー、わたしだけ倒せてないじゃないですかー。損しちゃいましたよー」
「まあ、お前巨大蜘蛛の魂力貰ったんだしいいだろ」
「あれは魂石をスレイさんにあげたからトントンですよ!」
セリアは不満げな表情だ。シルバードックと弓矢では相性が悪いので、今回は運が悪かっただろう。ただ、もう少し魂力を貯めて、力を付ければ金属でも貫けるようになるかもしれない。
「君たち戦い慣れしてるね……」
「魂力がたまったら、全然俺たちより強くなると思うよ」
ガジットとビッツが俺たちを見て驚いていた。
俺は別に戦い慣れてはいないんだけどな。実戦経験少ないし。
でも、思ったより自然と訓練の時と同じ気持ちで、戦えているので、それで慣れていると思われたのだろう。
「一階にはほかに罠はないし、二階に行こう。最上階までたどり着けば、試験を受けられるらしいよ」
俺たちは階段を上り二階へと向かった。
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