第17話
俺たちに声をかけてきたのは、二人組の男だった。
一人は長身で、ボサボサした特徴の男である。
もう一人は小柄の、目が大きい男だ。
動きやすい服装に、どちらも短めの剣を腰にかけていた。
同行してくれと言ったから、もしかして俺たちと一緒に、アウターに来た奴らかと思ったが、この二人は見覚えがない。
一応全員の顔は見ているから、覚えてはいるんだが。
ということは、俺たちより前にアウターに来ていた者たちということになる。
攻略した奴は入れないんなら、同行は無理なんじゃないか?
「からくりの塔は、攻略した奴は入れないって説明されたけど、入れるのか?」
俺の質問に、長身の男が答えた。
「俺たちは三か月前くらいにここに来たんだが、恥ずかしながら、まだからくりの塔をクリアできてなくてな。仲間がからくりの塔で死んじまって、二人だけになって、新しい仲間を探したんだけど、見つからないし、ルーキーの登場を待ってたんだよ」
クリアしていなかったのか。からくりの塔は簡単だと言っていたが、なめてかかっていい場所ではないかもしれないな。
「僕たちを入れてちょうど六人。人数も多い方がいいし、それに何度か行ってるから、からくりの塔については結構詳しい。連れていって損はしないと思う」
小柄な男が一緒に行くことのメリットをアピールした。
「私は良いと思いますけどー。人が増えることは悪くないことですしー」
「俺も、問題ないと思う」
セリアとブロズの二人は賛同した。
俺も特に異存はなかったため、賛同をする。
ただシラファは、
「人が増えていい事ばかりではない。そいつらが信用できる人間とも限らない。反対だ」
真っ向から反対した。
気持ちは分からないでもない。
この二人が信用に値するかという問題もある。
ただ、一度ダンジョンに行ったとは言え、俺たちも出会ってから期間は短い。まだまだ完全にお互いを信用できるほど、知っているわけではない。
個人的には序盤は、経験者と一緒に行けるというのは、ありがたいことだと思った。何も知らないまま行くと、死ぬ危険性が上がるからな。
「えー、人数多かったら良い事多いですよー。賑やかで楽しくなりますしねー」
「人が多くて楽しくなどあるものか」
「楽しいから仲間にするってのはおかしいけど、仲間は増やした方が俺も良いと思うぜ。俺たちだけだとまだ不安はある」
「人が増えても不安はなくならん」
何とも頑なな態度だ。何でこんなに人を嫌っているのだろうか。一人で冒険者をやるのは、どうやら難しそうだから、ある程度他人を信用していかないと駄目だと思うがな。
「い、一応言っておくけど、別に俺たちは、悪さする気はねーからな……口で言っても信用出来ないかもしれないけどさ」
長身の男が、シラファの様子に、少しビビりながらそう言った。
シラファはその後も反対をし続けたが、結局最後には「勝手にしろ」と言って折れた。
出来れば賛同して欲しかったが。
これから一緒に戦うのに、不満を持っていたら、連携が取れないかもしれない。
……まあ、元々連携とかとる気のなさそうな奴ではあるがな。
新しく仲間になった二人が、自己紹介をした。
最初に長身の男が名乗る。
「俺の名はガジット・ベスだ。ぶっちゃけ戦いはあんま得意じゃないけど、魂力は結構溜まってるから、からくりの塔のモンスターくらいなら、ちゃんと戦えるぜ」
次に小柄な男が名乗った。
「僕はビッツ・ランス。僕はガジットとは違って、戦いは得意なんだ。特にこの短剣の扱いは上手いと思ってるよ。器が少ないから、魂力は大してないんだけどね」
ガジットは魂力はあるが、戦闘技術はなく、ビッツは戦闘技術はあるが、魂力はない。
身長が正反対だが、戦闘スタイルも正反対のようだ。
俺たちも自己紹介をした。
シラファは黙ったままだったので、代わりにセリアが名前を言った。
ガジットとビッツを仲間に加え、早速からくりの塔へと向かった。
○
からくりの塔に向かう道中、俺たちはガジット、ビッツにからくりの塔がどんな場所か話を聞いていた。
「一言で言えば罠だらけの場所だな。罠に引っかかるとモンスターが出て来るって言う感じだ」
「どんな罠なんだ?」
「乗るとモンスターが上から降ってくる板とか。開けると周囲にモンスターが発生する、宝箱とか。足元に糸が張られてて、それに足を引っ掛けてちぎってしまうと、モンスターが出てくる罠とか色々だ」
ガジットが説明をした。
何か思ったより面倒そうな場所だな。
簡単なところじゃなかったのか?
それとも、出てくるモンスターが弱いのだろうか? 俺は二人に尋ねてみた。
「罠に引っかかたとき、出てくるモンスターは弱いのか?」
「簡単で誰でも回避できるような罠に引っ掛かったら、強いモンスターが出てくる。逆に回避しにくい分かりにくい罠にかかった場合は、弱いモンスターが出てくる」
「前僕達が行った時は、馬鹿な奴が、簡単な罠にかかっちまって。それでめっちゃ強いモンスターが出てきてやられちまったんだ。普通はかからないような罠だから、普通に行けばクリア自体は、そう難しくはないよ」
なるほど。
確かにそれなら、何とかなるかもしれないが……
俺はチラッとセリアを見た。
これは完全なイメージで、実際どうかは分からないが、何かセリアはこういう時、普通は引っ掛かからない罠に、引っ掛かりそうなタイプに見える。
俺の視線に気づいたセリアは、
「ちょ、ちょっとスレイさんー。失礼な事考えてませんかー? わたしは引っ掛かりませんよ罠になんか」
焦りながらセリアはそう言った。嘘はないならいいんだが。
そのあと、俺たちは歩き続け、無事からくりの塔に到着した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます